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プロローグ
とある日。
エルフたちが隠れ住む森では、ざんざかぶりの大雨が降っていました。
そんな中、森で暮らす一人のヴァンパイアが道を駆けていきます。
ヴァージルさんです。
特別流水が苦手な訳でもないこのヴァンパイアは、雨宿りの場所を探していました。
「さ、寒い……」
濡れたまま雨の中をさ迷えば、風邪をひくことは必須です。
森の開けた場所までやって来ました。
ここまで来れば、彼の家まであと少し。
歩みを速めようとしたヴァンパイアが何気なく横を見て、呆気にとられました。
「こんなとこに家なんかあったっけ……」
都合よく現れた建物に、ヴァージルさんの心は揺れます。
散々悩んだ末、ヴァンパイアは謎の住宅で雨宿りをすることに決めました。
ほんの少し、借りるだけだから……、と言い訳のように呟いて。