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高人

「そういや高人。二年生にもなって今年も帰宅部のままでいるつもりか?部活…やんねぇの?」


 部活という言葉が出た途端、高人の眉がピクリと動いた。


「なんだよ急に。だったら悪ぃかよ」


 高人は中学では野球部に所属しており、運動神経も悪く無い。大体どのスポーツをやってもそれなりにはできる。

 だが、将太にいくら誘われても高校では、どの部活にも入ろうとはしなかった。


「いや、そういうわけじゃ無いんだけどさ、このまま高校生活が終わっていくのも寂しいもんじゃ無いか?部活はいいぞ!」


 将太は現在バスケ部に所属しており、レギュラーでバリバリ活躍している。

 身長はバスケット選手にしてはそこまで大きくはない方だが、俊敏さと周りを見る視野はチーム一と言えるほどだ。


「もう興味ねぇんだよ部活なんて。あんなの意味も無いただの暇つぶしだろ」


 高人の表情がだんだんと曇っていき、声音が強くなる。


「ふーんそっか。まだ…忘れられねぇんだな」

「っ!……あぁ」


 簡単に言えば…そう。高人は中学野球最後の夏にひどくやらかしてしまったのだ。そのことが未だ頭から離れず、スポーツをやるたびに鮮明に頭に描かれる。

 あの時のチームメイトの顔と、声と、そして恐怖が。


 それから二人の間にしばしの沈黙が流れる。

 高人もあんな態度をとってしまったことに少し申し訳なさがあり、この沈黙が居心地のいいものでは決してなかった。


「あ、この前貸した漫画まだ返してもらってなかったよな?」

「そうだったっけ?てか、まだ読めてねぇんだわ。高人と違っておれあんま暇な時間無いんだ」

「おいおい、早く読めって。マジで面白いから」

「今度部活休みの時にでもゆっくり読むよ」

「読んだら教えてくれよな!感想聞かせてくれ…って今日休みじゃねぇか」

「いやぁ〜…今日はちょっと…」

「しょうがねぇな。じゃ、俺本屋寄ってくから」

「おー、また明日なー」


 将太と別れた後、高人は部活のことを考え始めた。あの頃は、また迷惑をかけるのが怖くて、あの雰囲気が恐くて自ら部活から遠のいた。


 だが、決してスポーツや野球が嫌いになったわけではない。今も大切に中学で使っていたグローブにワックスを塗り、型を崩さぬように保管していたり、バッティングセンターに行ってバットを振ったりしている。


「部活かぁ…やっぱやった方がいいのかぁ…?」


 でも、やはり野球だけはどうしても部活でやろうとは思えなかった。


「う〜ん。他の運動部もなんか気がひけるし」


 同じ失敗は野球ではなくとも起こりうる。そう考えるとどうも手を出しづらい。


「ま、今悩んでいても仕方がないか。早く本を買いに行こうか」


高人は一度あの記憶を胸の奥にしまい、帰り道の途中にある本屋へと足を運んだ。


 店内に入ると目当ての漫画の置いてあるコーナーへ行き、探し始めた。

 だが、なかなか見つからない。出版社は合っている。決してこのお店が広いとは言えないにしても、この本だけがない。


 たまたま今日品薄になってしまったのだろう。

 高人は残念に感じながらも、店を出ようと顔を上げると、目の前に見たことのない女の子がこちらをじっと見ながら立っていた。

 その華奢な身体から伸びる白く細い腕に一冊の本を持ちながら。


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