従魔がしゃべった
短いです。いや、ほんとに。
魔王城から伸びた一本の長い道を抜け、湖を渡ったずっと先に小さな村がある。
と、聞いたことがあった魔王パピオンはその村に向かっていた。
ただ、実際その村がどのくらい離れているのか全く分からず、実はパピオンが産まれた後、魔王城からの覇気を恐れ、以前あった町から更に遠くに移転し、現在魔王城から100㎞以上離れていることを知らないパピオンは何処までも続く長い道のりに疲れ果てていた。
「一番近い村だって聞いてたのに!というか、執事はそこから来たって言ってなかったっけ?執事にとってはそんなに遠く無い距離だったのかな・・・すぐに着たって言ってたし・・・。あーーー!もう疲れた!!こんな全身に鎧をまとって重いのに、城から全く出た事のない俺には荷が重いって!!」
魔王城からまだ出て10㎞しか出てないのにパピオンはすぐに根を上げていた。というよりも、それは必然だった。
魔王城から出た事のないどころか、王室から出た事の無かったパピオンにとってそれは本当に苦難ともいえるものであり、産まれてから今までやってきたのは日常生活動作の洗濯とお風呂にはいること、。また趣味で始めた料理程度だった。そんなパピオンにとって魔王城から出るだけでも本当に辛いものであり、実は魔王城でも迷ってしまい、魔王城から出るだけでも3時間ほどかかってしまっていた。そんなパピオンは本当に生物が存在しない一本道をひたすら歩いていた。
「あぁ・・・マジでしんどい。この鎧脱ぎたいけど執事から貰ったこの従魔って俺の覇気に耐えられんのかな?結構強いって言ってたし、耐えられそうじゃね?でも、執事も耐えられないくらい強い覇気ってことは、執事が近くにいるときに使ったら執事が倒れて従魔も消えちゃうかも・・・やべ、俺を守ってくれるの誰もいなくなっちゃうじゃん!」
今まで一人でいたことで、独り言がすごく活発になってしまった魔王パピオンは、全ての感情を独り言でしゃべりながら時間をかけてゆっくり歩いていた。
が、突如、従魔から話しかけられた。
「主様・・・近くに人間がいます!」
すると、魔王は驚愕の表情を浮かべながら叫ぶ。
「しゃ・・・しゃべったぁあっぁああああああぁあああ!!!!」
まさか従魔がしゃべれるとは思っていなかったパピオンは、近くに人間がいる事よりも、従魔がしゃべったことに対して驚愕していた。確かに、小さめのドラゴンの容姿で今まで一言も発さなかった従魔がいきなり普通に話しかけてきたら、普通は驚くだろう。しかし、その驚かれたことに動じない従魔は更に言葉を続ける。
「主様!私がしゃべったことに驚くのはいいですから、人間がこの辺りにいることに驚いていただけませんか?」
その言葉を発した従魔は落ち着き払っていた。また従魔は言葉を続ける。
「今は、私は小さなドラゴンの状態ですが、主様がお望みであれば、人間に姿を変えることも出来ますがいかがいたしましょうか?」
「・・・え?」
従魔の小さなドラゴンがしゃべったことに本気で驚いていたパピオンは全く従魔の話を聴いていなかった。
「え?じゃないですよ主様!近くに人間が・・・いや、もうすぐ見えるところまできます!!申し訳ありません主様。私の判断で人間の姿に変化させていただきます!」
そう言うと従魔は小さなドラゴンの姿から小さな少女に姿を変化させた。
小さな少女は何も身にまとっておらず、なぜかわからないが、従魔は人間に変化したことを誇らしげにしていた。
また、それとほぼ同時に遠くに人間の姿がパピオンに映った。
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(とある少女視点)
遠くの方に全身に鎧を身にまとっている者と小さな全裸少女が隣に並んで歩いているという、シュールというかなんというか、なんだかわからない光景を見た少女は全力でその地点へ目指していた。
「やばい!なんだか分からないけどやばい!なんとかしなきゃ!!!!」
そんなことを言いながら全力でその異様な光景を作り出している2人に近づいていき、鎧を身にまとっているものを全力で切り付けた。
すると、鎧をまとっている者は反応すらできず、切り付けられたところから血を吹き出しながら無言でその場に倒れた。
弱いとは思ったがそんなことは気にせずに、少女は小さな全裸少女に話しかけた。
「あなた大丈夫!?なにもされなかった?」
両肩をつかみ、心配そうな表情で話しかける少女を振り払い、小さな全裸少女はその肩をつかまれた両手を振り払い、倒れた者に駆け寄る!
「大丈夫ですか!?主様!今手当しますからね!」
そう言うと、鎧を纏っている者に小さな全裸少女は回復魔法をかけていた。
また、回復魔法をかけながら、少女をにらみつけていた。
「貴様!よくも私の主を斬ってくれたな!殺してやるぞ!」
小さな全裸少女からは似つかわしく無い言葉を言われ、少女はたじろいだ。また、鎧を纏っている者にかけている回復魔法が、人間社会ではほとんど使えるものがいないと言われている最上級の回復魔法であることが分かり、その少女は驚愕していた。さらに、小さな全裸少女が鎧を纏っている者に接する態度や「主」と言っている態度から、実は私は間違った事をしたのではないかと、実際に全身に鎧を纏っている者と小さな全裸少女が横に並んであるいているという、その光景を見たら100人中100人がするであろう行動をした少女は困惑していた。
「え!?その鎧を着ている人ってあなたの大切な人なの!?私にはあなたに何か不純な事をしようとしている人にしか見えなかったからつい本能で切っちゃったの!ごめんなさい!!私も何かするわ!」
そう言うと、少女は鎧を纏っている者の近くに行こうとするも、全力で小さな全裸少女に「来ないで!!」と言われ、近づかせて貰えなかった。
そのやり場のない気持ちを何とかしようと、遠くから回復魔法の「ヒール」を鎧を纏っている者に向けて唱えてみたり、「本当にごめんなさい」と謝ってみたり、もう何をしていいかわからなくなっている少女はかなり狼狽えていた。
「う・・・うぅ・・・」
そんな声が鎧を纏っている者から聞こえる。
「主様!!大丈夫ですか!?」
小さな全裸少女が涙を流しながらその鎧を纏っている者に呼びかけている。
その姿をみた少女は本当に間違ったことをしてしまったという気持ちで一杯になり、今までに培ってきたものだけで善悪を判断することは本当に良くない事だという事を思い、今後は状況だけで判断しない事を誓った。