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あぶれもの  作者: 咲紋 朱巳
幼少期
7/12

1章 6話 一人ぼっち

目が覚めた。


「おはようございます」・・・


あれ?返事がない。いつも側にいた母鬼がいない。辺りを見回すも、やはりいない。

やったぁ、今日は木登り出来る。

意気揚々と木を登りてっぺんまで登りきった。

身体の成長のおかげだろう。以前のように苦しむ事なく登れた。

あたりまえではあるが、アテナを見つけることは無かった。

でも、見渡すかぎり樹木ばかりの森の絨毯は壮大で綺麗だった。


いつまでも眺めて惚けているのもよかったが、木登りで暖まった身体を冷やした風は、

ジッとしている分には少し寒かった。

そういえば食べてもいないので、降りてあの果実でも食べようかと思った。


木を降りてみたが、やはり母鬼が見あたらない。

たまたま居なかっただけだ。そう思い、じっと待ってみた。


途中で眠ってしまったようで、再度の目覚めで意識が戻った。

しかしながら、やはり母鬼はいない。

とりあえずすることも無かったので、まずは、アテナに会えないかと木に登ってみた。

やっぱり見つけることは出来なかった。

さすがに空腹だからだろう。腹の虫が泣き出した。

食料を探すのは、そんなに大変な事なのだろうか。

ここは森の中、木の実がすぐに見つかるものではないのだろうか?

あたりを見回すが、そんなものは見つからなかった。これは、探すしかない。

でも、母鬼が来るかもしれない、動くことも不安でできなかったので、

とりあえずは下に降りて我慢することにした。


3度目の目覚めがきた。これまでずっと我慢していたが、やはり、母鬼は来ない。

木に登ってみようとしたが、うまく力が入らず、枝まで登りきれずにずり落ちる。

さすがに空腹に耐えかね、困ったので、僕は森の中を食べ物を探してみることにした。

軽くあたりを回ってみたが、草木はあるものの、実はなっていない。

虫もいなければ、動物も見当たらない。

これはどういう事なのだろうか。

安易にすぐに見つかるものと考えていただけに、いきなりの挫折でくじけそうになる。

でも、おなかの虫はおさまらない。

空腹からのおなかの音をBGMに食料を探すしかなかった。


空腹に耐えかねて、どうしようもなくなり、そこらへんに生えている草をそしゃくする。

苦味しかないが、味がある分まだマシな気持ちになった。

草をはみ、苦味で空腹をまぎらわせながら、食料を探し、ひたすら歩いた。

途中で眠気が来たので止まって身体を休めた。

空腹は睡魔には関係なかったようで、妨げることなく眠りに落ちた。


眠ってしまったせいで、歩いてきた方角はわからなくなってしまった。

けれども歩いて、動いてみたかいはあった。

ようやく実のなっている樹を見つけた。

毒だ害だという意識は無く、ただただ、空腹を満たすためだけに、

生っているものをひたすら食べた。

味なんてわからない。食べることによって空腹感は無くなり満足はした。

満足はしたのだが、今度は身体がおかしい、力が抜ける。

僕は木から落ちてしまうが、落下による衝撃、痛みを感じなかった。

起き上がろうとしたものの、力が入らず、起き上がれない。


いつもの睡魔とは違う、脱力感、疲労感はあるようで意識はある程度残っていて、

眠りにつくというのとは違うことがはっきりしている。

すると突然おなかが痛くなってきた、いや、痛いというよりも、灼け爛れているような、

熱を持ち、痛みを伴い、痒みを感じながら、寒さに震える、

何とも言えない、表現しがたい悶絶感にさいなまれる。

口に手を突っ込み、吐き出そうと思うにも、体が言うことを聞かず、

地面をのた打ち回ることすらできず、ただひたすらに苦しみに耐える。

耐える気は別になく、泣き叫び、わめき散らしたかったが、それすらも動けず、できない。

死人と変わらないような、地面に大の字で転がっているしかなかった。



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