1章 5話 成長期?
言葉を発するようになって、いや、母鬼が言葉を教えてくれるようになって
いつも何かと見守ってくれていたグリンを見かけなくなった。
かわりと言っては何だが母鬼がいつもいるようになったが。
そういえば父鬼もここの所見かけていなかったので、
「|とぉうは~(父さんは)」
僕はようやく扱えるようになったつたない言葉で
母鬼に聞いてみた。
「どうしたんだろうね」
はぐらかされたかな?よくわからない答えが返ってきた。
ここはどこなのかと聞いても森という答えしか返ってこない
そして、びっくりしたことに、僕には名前が無かった。
もしかしたら、鬼には名前の概念がないのかもしれない。
名前の件でいろいろ質問してしまったことで、母鬼は困惑顔になり、
ここで他の人にあったかどうか、誰からそのことを聞いたか、
何人でやった来たか、その時何もされなかったかと、根掘り葉掘り聞かれ、
僕は、その都度、誰にも会っていないこと、唯一は木の上で翼人に会ったこと、
名前については生まれた時から知っていたと。
を正直に話したが、理解してもらえなかったのか、疑いが晴れることは無く、
数日のうちに再度確認されることが起こるようになった。
ようやく会話に不自由しない程度になった頃、
ここに生まれてから2か月くらい経過しただろうか。
身体はすくすくと大きくなり150㎝位になっただろうか。
視点の高さが前世の頃と同じくらいになり、多少気分的に安心感が出てきた。
歯も生えそろい髪も伸びてきた。体毛は人間の頃より少し濃い程度。
言語の習得ばかりを行っていたせいか、頭が重いと感じる。
実際、頭部が不恰好に大きくなってもいた。
ハンマーシャークよろしく、ハンマーヘッドと言われんばかりに
頭部が大きくなっていることが唯一異なる点にはなるが、
両親鬼のような角が生えてくるような兆候が一向に見られない。
それが、今はとても気になっていた。
そんなある日のこと、母鬼からの果実を渡され、それを食すように言われた。
見た目、アケビのような、キュウイフルーツのような、
皮には細毛が生えている果実だった。
「いただきます。」
昔の人間だった頃の癖で、つい口から出てしまう。
そして、皮を剥いて食べようとした。
そこでちらっと母鬼の表情を見てしまった。
母鬼は呆然とした表情をしていたのだ。
何をそんなに気になることがあるのかと思いながら、果肉を食べた。
少し酸味があるが、甘味もあり美味しかった。
2・3個食べていつものように睡魔が襲ってきたので眠りについた。
次の目覚めから僕の生活は激変してしまった。