1章 2話 ここはどこ?私はナニ?
この世界に来て、鬼の子どもとなって、何日か過ぎた。
言語の存在しない世界。
僕の名前も無さそうで、人だった頃のくだらない、いじめの心配はなくなったが、
人だったせいか言葉が交わせないのは少し寂しい。
まあ、まずは言葉を発することが出来ないので、もし、言語が存在していても話せるわけがないのだが。
人との違いはそんなことは些細なものと言えるくらいに異なる。
初日はほとんど動けなかったが、次の日には手足が自由に動かせるようになり、
立ち上がることはできないまでも、転がる程度なら自分の意志でできるようになり、
3日目には、はいはいで動けるようになった。
住まいになっている場所は木のうろのようなところ。
家というほどのものではなく、野宿のようなものだ。
ベットというものも無く、枯葉の上に寝かされていたこともわかった。
目に見えるものも全く異なり、陽の当たる時は特別変わりないように見えるのだが、
暗くなると生物は青黒く発光して見えるのだ。
しかし、すべてが同じなのではなく、両鬼については黄緑色に見える。
近しい人は異なる色になるのか、わからないけれどもそのように見えるので、
それ以上はわからないままだ。
しかし、そう見えるのは生物のみで、地面の枯葉や土などは全く光らない。
周りの微発光の明かりや月明かりからそこにあるのは何とかわかるけれどもそれだけだ。
最初に目にした緑色のゴブリンのような者は、両鬼の使用人か家来のようだ。
自分の様子をうかがい、見守りもしてくれている。
害虫の排除もしてくれているのか、たまには剣に赤黒い液体を滴らせて戻ってきた事もある。
言葉は無いけれども表情やしぐさからなんとなくだが意思がわかるのだ。
これは、ちょっと面白い。
たまに発声するのだけど、それがあるとよりはっきりと意思がわかり、会話しているような気にさえなる。
ただ、僕の声は伝わらないのか、いろいろと声をかけてみるものの、
望むべき答えが返ってこなかった。
発声が悪いのか、質問内容が悪いのか、どちらかすらわからなかった。
僕の身体も訳の分からない早さで成長しているようだ。
4日目になると木を支えにしながらだが立ち上がれるようになり、
口の中に違和感があるかと思ったら、歯が生えてきたようだ。
今まで、母鬼の母乳を違和感なく吸引していたが、母鬼もいつもそばにいるわけでは無く、
数時間おきに来るといった形で、おなかがすいたから欲しいというわけでは無く、
どちらかというと、無理やり押しつけられているような気さえする。
それで文句が言いたいわけでは無い。
僕もほとんど寝ているようで、母鬼に起こされては授乳してもらい、お腹がいっぱいになるとまた眠くなって、微睡んでいる。
時間的なものはさっぱりわからないけれども、朝・昼・夕方・夜、1日4回食事?授乳してもらっている。
10日もたっただろうか
寝てばかりいるのに?いるから?か成長が早い。
もう立ち上がることは出来るし、歩くどころか走る事もできる。
しかし、眠気が凄くほとんど起きていられない。
一度、授乳後にどれくらい行けるか外へ歩いて、走ってみようとしたが、
数秒経たないうちにあの緑色に阻まれ、捕まり、抱えられて、
直ぐに木のうろへ連れ戻されてしまった。
いく週間かの間色々と思考策後し周囲を探検しようとするものの、
50メートルも進まないうちに緑色もしくは親鬼に捕まり、
全くというほど周りのことがわからず、何も出来ない。
緑色とは身体はほとんど変わらない、
むしろこちらの方が大きくなっているくらいなのに敵わない。
まずは身体の使い方?と、この眠気をなんとかしないとならないな。
ここがどこか、捜索することは諦め、自身の成長を、
身体だけでなく感覚も確かめ、育てることをするほかなかった。