1章 1話 終わったつもりが終わって無かった
首を吊って自殺を図ったはずなのに
息が出来なくて苦しくて、視界も真っ暗になって、
生きていくことをあきらめたはずなのに・・・
それでは終わらなかったようだ・・・。
不思議と呼吸できなかったせいでの苦しさが無くなり泣くのをやめた。
涙で歪んだ景色がゆっくりと輪郭をはっきりさせていく。
ここはどこだ?
首を吊った自室では無い。
ある意味唯一の友達であった勉強机が見えない。どころか、
青空?夕方のようなオレンジ色の空?が見える。
首を動かそうにもうまく動かない。感覚的にはあおむけに倒れているようなので、
立ち上がろうとしたが、どうしたことか四肢に力が入らず起き上がることもできない。
しゃべりたくとも声も出ない。
どうなってしまったのだろうか。
でも、よくよく考えてみれば、僕は首を吊ったんだから、
四肢が動かないとか視界がおかしいとか声が出せないとか、
今はまだできないだけで少し休めば治るかもしれないと思った。
そう考えることができれば、少し落ち着いてきた。
まずは休むべきだ。自分自身を納得させて現状把握を放棄して眠りにつくことにした。
かなりの時間寝ていたような気がする。
目を開ける・・・・・・が何も見えない、
いや、先ほどの眠りにつく前の天井?がうっすらとわかる。
これは真っ暗なだけだな。
「ウァ~~イァ」
!!耳がおかしいのか?声がちゃんと出ていないのか?やっぱりおかしい。
手は・・・・・・動く、顔もさわれる?髪がない、いや届かない?
足は・・・・・・大丈夫、動く。でも歩いてはいない。
相変わらずあおむけに寝ているようなので、
起き上がろうとしたところ、青黒い光が視界に入ってきた。
何だろう、青黒い丸い形の中に赤く光る2つの光点が見える。
「オァ~ゥ」
怖い怖い怖い、あの赤いものが目で、どう見てもお化けにしか見えない。
僕は喰われると思ったが、動けず逃げられないので、
目をつぶるしかない。だが、なんといっても怖い。
心の底から怖くて恐怖から思いっきり泣き喚いた。
そのせいだろうか、違うとは思うのだが、いつまで経っても痛みが来ない。
そのうち瞼が明かりに照らされているような眩しさを感じる。
恐る恐る目を開けると緑色の巨人が僕を覗き込んでいた。
なんとなくわかるのだが、僕を食べようとしているのではなく、心配しているようだった。
また、緑色の奥にも2人の巨人がこちらの様子を窺うように松明をかざして覗き込んでいるのに気付いた。
こちらに害意を持ってはいないようなので、とりあえずは泣き止むことができたが、
巨人に囲まれ逃げられず、絶体絶命な危機的状況に驚きすくみいあがっていた。
この巨人は人間ではない。だって、頭に角が生えているんだもの。
カブトムシのように額の中央から1本の立派な角が。
これは鬼というものだろうか。
ここはやっぱり地獄で、これから閻魔様に裁かれるのかな?
そんな中で僕は後から来た女性の巨人に抱き上げられた。
怖かったはずなのになぜだろう。心が落ち着いてきた。
安心できる。だんだん気持ちよくなってきた気がする。
また、視点が上がったせいか上から自分の全身を視ることが出来て、
これによって状況把握がなんとなくだができた気がする。
巨人がどうこうというわけでは無く、僕が小さいだけで、赤ん坊そのものになっていると。
これはどういうことだろう。
巨人達が親だということは直感でわかった。
でも、抱き抱えられはしたものの、移動することはなく、
あやされているのか、揺り動かされている。
向こうも僕が落ち着いたのがわかったようで、またあおむけに寝かされて、
2人は遠のいていく。
さっきの緑色がこちらを覗き込んできた。
なんとなくだが微笑んでいるように見える。
様子見されているだけのようで、何かにおびえなければいけない危険が去ったことはわかる。
こうなると現状が気になる。
思い返してみると・・・・・・これって転生したってことなのかな。
以前の記憶があるっていうのはおかしな感じだけれども、
昆虫とか微生物とかに転生しなかっただけよかったと思うべきなのかな?
いろいろと読み漁った本の中にはライトノベルのファンタジー物もあったので、
そこから考察するにさっきの緑色はゴブリンと言うモンスターだと思うし、
自分の両親は鬼ということで間違いなさそうだ。
こういうところだと剣と魔法の世界というのが一般的で中世あたりの文明レベルだったはず。
召喚だったりすれば特別な力とかあったりするのだろうけど、
転生だし・・・人間ですらなさそうだからなぁ。
さっきは特に言葉とかは無かった。
むしろ以前の記憶のせいで混乱している気さえする。
でも、鬼の子ということはそれなりに特別な力がありそうだな。
こうなってしまってはなるようにしかならないだろうし、鬼の力ってものにちょっと期待しながら、
第2の人生?を始めることを無理やり納得することにした