プロローグ
はじめまして。
真宵の『Iris』と申します。
魔術師と呼ばれる人種がいる。
神代に存在していた『魔法』とは違い、『魔』によって『法』則を歪めるのではない。
魔術師の操る『魔術』は『魔』を一時的に統べる為の『術』に過ぎない。
----------しかし、その力は神秘を統べることが出来る。
「……とは言っても、見ての通り魔術師が全員、ローブを羽織ってはいないように共通の意識がある訳でもないし、誰にでも扱える共通式の魔術なんてものも無いんだ。故に、模範的な魔術師なんて居ない。個人によって魔術は簡単に歪む」
「そ、そうなんですね……、ところで蓮さん」
「ん? なんだ。質問があるというのなら受け付けるが」
「それでは一つ。……この話、何回目ですか? もう3度目ってこともあって聞き飽きましたよ……」
蓮と呼ばれた少年はフン、と鼻息を強めについた。
「では緋那、お前は一言一句覚えたのか? 覚えるというのと飽きるというのは意味が違うぞ」
蓮と対面に座っている少女、緋那は的をつかれたようにウグッと呻く。
傍からはカフェで同年代の2人がワイワイ話しているように見えるが、実際のところは違う。
そもそもカフェではなく、魔術学院で話しているのであって、2人の関係性は友人や恋人という訳では無い。
蓮と緋那、この二人に最も近い関係は-----------教師と生徒の関係だろう。
------さらに具体的に言うのなら〈生成り〉と〈『第零階梯』指定魔術師〉である。