某有名RPGのシナリオライターの採用試験に落ちたSS
このお話は、作者が某有名RPGシナリオライターの採用試験に落ちたショートストーリーです。
問題点などを聞きたいので、よければ感想、評価などをお願いいたします。
課題内容は、決められたワードを入れた脱出をテーマにしたショートストーリを、A4サイズの紙一枚にまとめるという物です。
登場人物 ドラゴン(♀)1000年間、洞窟の奥で、今までコレクションして来たお宝を守り続けている。
女性冒険者 子供が病気になり、その病気を治すために、ドラゴンの洞窟のお宝を盗み、ドラゴンに追われる。
森の奥の、山奥の。
奥底にある洞窟の奥に。
一匹のドラゴンがいた。
彼女は、1000年間。
洞窟の奥で、美しく輝く黄金や宝石。
世にも珍しい、武器や薬。
そのような宝を守り続けてきた。
彼女にとって、それはとても大切なモノで、そして、欲深い人間にとっても、それはとても大切なモノのようで、彼女のお宝を狙って人間が次々にやって来ては、彼女の栄養となり、人間が持っていた装備は、彼女の新しいコレクションになった。
欲に溺れたモノは、ドラゴンが裁きを下す。
脱出出来ない『竜の裁きの迷宮』。
この洞窟は、そう呼ばれていた。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
そしてまた今日も、欲深き人間がドラゴンの裁きを待つ。
「……諦めろ、娘。もう逃げられん」
ドラゴンに追われていた人間の女性の周りには、壁しかない。
袋小路に、彼女は追い込まれていた。逃げ場は無い。
「幸い、今、腹は減っておらん。その持っている私の宝と、お前の装備を渡すなら、見逃してやってもいい」
ドラゴンの言葉に、
「いやよ!」と女性は拒否の返事をする。
「そうか……ならば死ね!」
ドラゴンは、口を大きく開けて、しゃくねつのほのおを吐きだす。
洞窟は真っ赤に燃え、岩が溶けていく。
その炎の中心には空間が空いていた。
女性が作った淡い光の膜が、炎の侵入を防いでいるのだ。
「……ほう。フバー○か。しかし、いつまで保つかな?」
ドラゴンは、さらに強く炎を吐きだす。
「きゃぁあああああ!」
フバー○では抑えきれない熱が、女性を襲う。
「さぁ、宝を置いていけ」
「絶対いやぁああああ!」
ドラゴンの炎は、どんどん。どんどん強くなっていく。
女性の肌が、じりじりと焼けていく。
それでも、女性はドラゴンから盗んだ宝を大事そうに、抱えている。
「……なぜ、諦めない。それは、そんなに価値のある物なのか?」
女性がドラゴンの巣から盗んだのは、古ぼけた小ビンだ。美しい金銀財宝の中にある、汚いソレ。
ドラゴンにとって、女性がなぜそこまでして小ビンを欲しているのか分からなかった。
「……コレには価値は無いわよ」
「なら、なぜ?」
「コレが無いと、私の一番大切なモノが無くなるの!」
女性を覆う、光の膜が強くなっていく。
「……お前の大切なモノとは、なんだ?」
「……子供よ。病気なの。この、小ビンに入っている薬じゃないと、治らない」
「子供……」
いつの間にか、ドラゴンの炎は、女性のフバー○に、完全に遮られていた。
「ソレは…子供は、どんな財宝よりも、自分の命よりも、大切なモノなのか?」
「当然でしょう?」
「……そうか」
ドラゴンは、炎を吐くのを止めた。
「え?」
「……もう行け。炎を吐くのは、案外疲れるモノなのだ。私にとって、ソレはそこまでして守るモノではない」
人間の女性は、ドラゴンに頭を下げて、洞窟から出て行った。
ドラゴンの目の前を、ネズミの群れが通り過ぎていく。
「……子供か」
ドラゴンは、今までコレクションしてきた金銀財宝を見てつぶやいた。
「1000年間。欲に溺れ抜け出せなかったのは、私なのかもな」
その後、この山の空で、ドラゴン達が群れるようになった。
そのドラゴン達の美しい旋回は、『ドラゴンの舞踏会』と呼ばれ、ドラゴン達の生殖活動とも言われているが、真偽のほどは、定かではない。