別れ
どれくらいそうしていたのだろうか。気がついたら彼は消えていた。
そして彼らは私を祭壇に運ぶ。
私を殺すのはどちらの種族だろうか。
龍たちに生贄という私を捧げる人間か。
同報たちの怨みと息巻く龍たちか。
私からしたらどちらも同じだけれど。
約束した。生きると。
生きている意味を感じなくても、同じ日々だと感じていても。
約束して?私と。
約束したわ。あなたと。
森を抜け滝が見える。
澄んだ水に木々が煌めく。
だけどここに生き物は感じない。
あるのは美しい景色と滝の流れ落ちる先にある祭壇だ。水の上に浮かぶその白い石畳。
その上に輝く何かが置いてある。
私はそれをとりたくはない。
綺麗なものを赤く染め上げたくない。
だから私は走るわ。真っ直ぐ。
それをみて1人は驚き、1人は顔が赤くなったわ。少し笑えたわよ?
真っ直ぐ走って降り返る。
そしてそこで儀式を始める。横で勢い良く流れ落ちる水をみて舞を踊る。
踊るのは好きだった。
歌うのも好きだった。
だから最後まで好きなことをするの。
あと少しだけ私に自由を。
ユーコミス。
私の大切な幼なじみ。
君はきっと私を逃がしてくれる。
でも君は、君がその立場でいることで救われる人がたくさんでるはずだから。
苦しみをとることはできないけれど、生きて自由な私も覚えていて。
そして最後に振り返る。
さようなら。
私を殺すのは誰でもないの。
私を殺すのは私。
そうして滝から彼女は墜ちていった。