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空き教室の声の正体


誰もいないはずの教室。

その前で、ノンが恐怖に立ち尽くしていた、その時だった。


「さあ、入ってごらん」


突然、背後から声をかけられ、肩に置かれた手。

ノンは悲鳴をあげる暇もなく、そのまま教室の中へ押し込まれた。

振り返ると、そこには不敵な笑みを浮かべた学長が立っていた。


「学長……何を考えているんですか」


部屋の奥から、困惑した声が響く。

何もないはずの空間が揺らぎ、セノを小脇に抱えたナツメの姿が現れた。


「これも何かの縁かもしれんと思ってな」

「縁、ですか。……この後どうするんですか?」

「それは、これから考える」

「……」


ナツメは目を閉じて、一度だけ深呼吸をした。

姿を見られた以上、後戻りはできない。

ナツメは引き出しから一枚の紙を取り出すと、震えるノンの前に突きつけた。


「ここに指を置いて……」

「え……あ、あの……」


ナツメはあわあわしているノンの手を強引に取って、その指先で紙をなぞらせた。

これで、誓約の魔術の準備が整った。


そのまますぐに、ナツメはその紙に刻まれた魔法陣を展開し、魔力を充填する。

誓約の魔術が発動し、紙が青い炎に包まれ一瞬で消えた。


あまりの手際の良さに、ノンは言葉を発することもなく、ナツメの行動を目で追う。


「……さて。学長、この娘の『始末』、どうしましょうか?」


ナツメが口にしたのは、あくまで「この事態をどう収拾するか」という意味だった。

しかし、死の恐怖に怯えるノンは、そうとは受け取っていない。


(し、始末……!? やっぱり、消されるんだ!)


ナツメの冷淡な言葉に、ノンは全身の血の気が引くのを感じた。


そんな彼女の横では、セノと見つめ合う学長。

お互いに隙をうかがっていたが、学長がセノを目掛けて走り出す。

すでに学長を警戒していたセノは、そう簡単には捕まらない。

セノは必死な顔で、ナツメの背後に隠れたりして逃げる。

ナツメはノンの扱いに頭を抱えており、二人に構う余裕はない。


ナツメはノンの周りを歩きながら、独り言のように呟く。


「フェルディノン家のお嬢様……。成績優秀、もうすぐ初等科を卒業……」

「魔術が必要な理由が、君には全くない……」

「うーーーん……」


ナツメが鋭い視線で問いかけても、学長は相変わらずセノとの追いかけっこに夢中。



ナツメは冷たい視線をノンに向けた。


「しばらく、ここに居てもらう」


ノンの脳裏に、冷たい石造りの地下牢、心配する家族がよぎった。

絶望に染まるノン――魔術教室でのおつとめが始まりそうだ。


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