試験結果
魔法学校内にある湖畔の東屋。
学長と試験官二人が向かい合っていた。
「報告を求める。今日の合格者は?」
学長が重々しい口調で尋ねる。
「ノン一名です。セノについては、不合格と判断しました」
試験官の一人がそう告げた瞬間、学長が眉をひそめた。
「理由を聞こうか」
「威力はあっても制御ができていないからです」
「紙に属性魔法を当てたのなら、合格ではないのかね?」
「学長! あの威力は危険すぎるんです!」
試験官は必死に食い下がった。
沈黙が流れる。
不合格を突きつけたい試験官と、合格させたい学長の睨み合いが続いた――
「では、こうしよう。セノは仮合格とし、威力の制御ができるまで定期的に再試験を課す」
強引な幕引きに、試験官たちは顔を引きつらせて黙り込むしかなかった。
◇◇◇
無理やり中等科へと進学させられたセノだったが、早々に壁にぶつかっていた。
教室の空気に、どうしても馴染めないのだ。
隣にはノンが座っている。今回、中等科に進学したのは二人だけ。
進学順に席が割り当てられるので、同時に進学すると自然に席が近くなる。
でも、ノンはセノの相手をしてくれない。自分のことで精いっぱいだから。
周囲の浮ついた会話に乗ることなく、集中して授業を聞いている。
この教室でノンが一番年下だが、一番年上のような雰囲気を醸し出す。
今までナツメや学長といった大人たちと接してきたセノにとって、同級生たちの会話はあまりに幼く、退屈だった。
(あー、ナツメのところに行きたい……魔術の勉強がしたい……)
授業が終わるやいなや、セノは席を立ち、魔術教室へ――
そこにはセノより明らかに年上の男子生徒に何かを教えるナツメの姿があった。
その男子生徒の広い背中が、まるで「邪魔をするな」と拒絶しているように見える。
セノは喉まで出かかったナツメの名を、飲み込んだ。
そして、何か居たたまれなくなり、気づかれないよう、音を殺してその場を去った。
廊下に響く自分の足音が、やけに虚しく、独りぼっちのように感じられた。




