表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

初等科卒業試験

セノは今、初等科の卒業試験に臨んでいる。


ナツメは見えるわけではないのに、時折、セノが居る方向に視線を送った。

試験は魔法学校内にある湖の中の小島で行われ、合格すると鐘が1回だけ鳴る。

その音を聞き漏らすまいとナツメは極力音を立てずに待っていた。



◇◇◇



(思っていたのと違う!!)


気難しそうな二人の試験官を前に、セノは内心、焦っていた。

準備していたのは、手のひらの上で火、風、水、光を個別に展開するだけの単純な魔術。

対して試験の内容は――「少し離れた場所にある紙に火、風、水、光を当てる」というもの。


(魔法を飛ばすなんて聞いてない!)


紙を燃やすなら炎を飛ばし、濡らすなら水を飛ばす。手のひらに出すだけでは届かない。

魔法を遠くへ飛ばす操作をしたことがない。


「どうかしましたか?」


片方の試験官が怪訝そうに話しかけてくる。

セノが手のひらを前に向ける独特なポーズを訝しんでいるのだ。


(できるかどうかわからないけど……)

(魔術で火を出して……魔法で威力を上乗せして……魔法で紙の方向に飛ばす……)


まずは火。

両手の手のひらの上に慎重に火を灯す。そして、魔法で火力を上げようとするがうまくいかない。

紙に届くまでに消えてしまうかもしれないが、一回飛ばしてみた。

ゆらゆらと飛んでいった火の玉は、紙に届く前に風に流されてしまった。

二回目。風の向きを読み、あえて斜め上へと火を放つ。 狙い通りに風に乗った火の玉は、吸い込まれるように紙を燃やした。


次は水。

まずは両手の手のひらの上に水を少しだけ出し続ける。

火と同様で魔法で威力の上乗せができない。

手のひらの角度を調整しても、威力が弱くて紙まで届かない――

その時だった。一瞬だけ水の威力が強まった。

そのチャンスを逃さないように手のひらの角度を慎重に調整する。

なんとか一回目で紙を濡らすことができた。


最後は風だ。

同じように魔法での威力上乗せをしたが、風だけ様子が違った。

すぐに一瞬だけ威力が強まったのだ。


「ぇ、ぁ、ちょ――」


セノを中心に全方位、一瞬の爆風。

不意を突かれた試験官二人はあっけにとられたまま、ふわっと宙に舞い、湖へと転落した。

さらに、合格時に鳴らすはずだった鐘まで空の彼方へ吹き飛んでいった。


『加減を知らんのかー!!!』

湖から上がってきた試験官たちの激昂する声が、学校内に響き渡る。

セノは小さく呟いた。

「ごめんなちゃい……」



◇◇◇



試験終了後、魔術教室にやってきたセノ。

すごく嬉しそうだ。しかし、鐘の音が聞こえなかったのが気になる――


しかし、ナツメはセノの合格を疑わなかった。

セノは合格を装うことなんてする子じゃないから。


「今日は特別に1つだけ魔術を教えてあげるよ」

「じゃあ、空の飛び方を教えて」

「それは絶対ダメ。失敗したら、地面に叩きつけられて死ぬよ」


優しく微笑むナツメの膝の上で、不貞腐れた顔をして戯れるセノ。

「じゃあ、何だったら教えてくれるのー」と言わんばかりに、顔を見上げていた。




セノの次はノンが同じ試験を受けた。

びしょ濡れで機嫌の悪い試験官に慄くノンだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ