ナツメの相談
翌朝、ナツメはセノのことを相談するため、学長のもとを訪ねた。
学長は珍しくメガネをかけ、机に腰掛け、書類を読んでいた。
「学長。セノの成長が止まりません」
「止まっておるぞ」
「止まりません」
「止まっておる」
「止まってません」
「体の内、外を問わず、成長することはいいことと思うが……」
書類を読むことに集中しており、何の問題もないと話を終わらせようとする学長。
しかし、ナツメは気にせずに続ける。
「魔術の部分だけ成長が著しいのが問題です」
「このままだと普通の魔法使いになれません」
学長はようやく問題であることを認識する。
「それはマズい……」
「魔術教室を出禁にするか?」
ナツメは少しだけ迷いながらも答えた。
「陰で色々とやられるよりは、このまま目が届く中で自由にさせておくほうがいいかと……」
「あと、セノは我慢できない子供ですから、出禁にしたら何をするかわかりません」
学長は書類に目線を下げ、つぶやいた。
「魔法使いになれないのも問題だが、体が成長しないのも……」
しばらく沈黙が続いた後、ナツメが本当は言いたくなかったかのように言った。
「セノの体が小さいままなのは、おそらく長距離転移の魔術を多用している代償でしょう。ただ、あくまで推測です」
学長は唸った後、のんびりと尋ねる。
「うーーん……魔法紙を自由に使わせておるのか?」
ナツメは少しだけ表情を引き締めて答えた。
「自由には使わせていません」
「しかし、厳重に管理しても意味がありません」
「あの子は、紙の切れ端でも小さな魔法陣を正確に描けます」
このあと、二人が出した結論は、残酷なほどシンプルだった。
セノを無理やり中等科へ進学させ、カリキュラムに縛り付ける。
そうして、魔術に触れる時間を少しでも削る作戦だった――




