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Abduction

私は何も考えず走った。

相手がどこにいるか見えないが声からしてそこまで近くはないはずだ。


心臓を打つ鼓動がどんどんと早くなってゆく。

「ふざけんなよ」


それくらいしか言うことがない。


闇の中、冷たい風が肌を打つ

街灯も消え、周囲の景色はほとんど輪郭しか見えない。


数分走り続けたがまだ光は見えない。

息が上がっている。


後ろから声はしない。

近くにいないことを願いたい。


足音だけがやけに大きく聞こえる。

アスファルトを蹴る音が、静まり返った夜に響いた。


前来た道を辿っていくが光が見える様子はない。


クソっ。


体力がない私には限界だ。

どこか隠れられる場所は、、


走り続けていると、ふとさっきのコンビニが目に入った。

コンビニに足を踏み入れる。

そこには一人の男がタバコを吸っていた。


壁に寄りかかるとその男は口を開いた。

「君か、Grenja君」


256だ。ただどうしてここに居るのだろうか。

ただ都合は良い

「Lozxに見つかった、匿ってくれ」


男は不気味に微笑み、こちらに近づいてきた。

「あくまで俺はBeeを嫌っているんだよ。」


その言葉の意味を理解する前に、私は首を掴まれた。


振り払おうとしたが、指が食い込むほど強い。


「……っ」


声を出そうと口を開いてしまった。

男は何も言わない。


ただ、男は口に何か小さく冷たい物を喉へと押し込んだ。

吐き出そうとした瞬間、喉元を押された。


反射的に息を飲む。


その拍子に、それは喉の奥へ滑り落ちた。

飲み込んでしまった。


男は力を緩める。

反撃しようとするが体が動かない。


目の前がぼやけてくる。


ーーーーーーーーー「Abduction」ーーーーーーーーーーーーー


目を開けるがどこか分からない。

ここはどこだろうか?


頭が重い。

体を動かそうとするが、上手く力が入らない。

明かりがある。SecondOutageは終わったのだろうか。


そもそも256が言うにはOrcaがLozxにキレて停電を起こした。

で、私はOrcaと接触できないまま拉致されている。

拉致をしたのは256だ、ならなぜ私にLozxの裏切りを伝えた?


そして拉致するのならばネカフェついでに私と二人になって薬を飲ませればよかったはずだ。

それなのになぜ彼はコンビニで私を待っていたのだろうか?


「結局こいつに何があるって言うんだ、ロズ」


「こいつならばあいつを消せるかもしれないだろ?」


「馬鹿な真似はよせ、お前には勝ち目がないことは分かっているだろう」


「だから利用すんだよ。」


狭い部屋の外から話し声が聞こえる。

会話しているLoxzと256だろうか、


「そもそもこんな近くで喋っていいのか?」


「あれを飲まされたらあと一時間は寝ているだろ」


、、ということは私は予定よりも早く目覚めたということだ。

今無理に体を動かしバレたらどうなるか分からない。


もういっそのこと寝てしまえば楽ではないか、

呼吸を整え、瞼を閉じる。


いや、、、今寝て万が一何かされてしまったらどうしようか

ふとそんなことが頭によぎる

それならあと一時間、この姿勢のまま寝ずに待った方が良いだろう。


この間に何ができるだろうか


とりあえずこれから何をするか考えよう。

私の考え通りに話が進むのであれば、

これから何かと理由を付けてLozxにOrcaを消すための協力要請をされるだろう


その場合、下手に反抗すれば何があるか分からない。

協力ならLozxの情報を得られる可能性だってある。


そうでなければ脅迫し無理やり手伝わせるという方法もあるが、

私の技術が目的なのに私を脅迫しては何も意味がないだろう。


そもそも私にできてLozxには絶対することのできないこととはなんだろうか

Outageや匿名チャットツール「TFA」の復元に関係したのなら、なかなかのやり手だ。


それともOrcaの内部に潜り込めという話の可能性もある。

Orcaに直接あまり関わっていない私ならばOrcaに接近し消すことができるかもしれない。


Orcaに接近するとなれば二人の情報が得られる、、一石二鳥だ。


そんなことを考えていると時はあっという間に過ぎるものだ。

部屋のドアが開いた。

無表情な黒髪の男と、どうもチャラそうな茶髪の男が入ってくる。


「おい、お前起きろ」

狭い部屋の中で男の声が響く


「ここはどこだ?」

もう一時間か。心の中ではそんなことを思いながら呟いた。

黒髪の男が私を少し睨んでから口を開いた。


「Grenja、お前はBeeをどこまで知っているんだ?」


知っている事なんて何もない。

256から聞いたことはあるがそれが正しいかも分からないのだから。


「何もしらねえよ」

私にはこんなことしか言えない。


「ああそうか。」

男は続けた。

「Beeは我々の組織のオーナーであり敵だ。」

「奴は残虐であり無慈悲、合理性をのみ好む、平和な世間にそんな奴が居ては迷惑なんだ。」


それで?


「君には彼の削除。永久的なOrcaアカウントの削除を協力してもらいたい」

「協力すると言うならここから出してやる。そうでないなら君の身の安全は保障できない。」

「協力するか、そうでないか。 それだけを答えろ」


実に想定通りだ。

ここまで一致とは思ってもいなかった。


「分かった。協力する」


私がそう返事をすると、

彼は「そうか」と一言呟き、茶髪を残して部屋を出た。


これだけか、心配する必要は何もなかったじゃないか。

そんなことを思いながら目の前の茶髪と目を合わせる。


「昨日は悪かったね。」

彼は呟いた。

昨日、、私は昨日彼には会っていないはずだ。


「悪気は無いんだ、あんなに強引に薬を飲ませなくとも良かったとは思うが」


彼が256なのだろうか?

昨日は黒いフードで顔が良く見えず、顔を見ていなかった。


「君の目的はなんだ?」

彼は私にそう尋ねた。


今まで目的と言う目的は無かった。

あるとすればLozxの特定だが、今更もう必要はないのではないか

となれば、集団であるOrcaの特定、、。


「考える時間が必要か?」


いや。否定しようとするも彼は続ける


「俺はそんな物を目的だとは思わないがな、そもそも目的がないならなぜここにいる_」


私はただ送られた命令に従っているだけだ。

目的なんて聞かれたって答えられるはずがない。



ノック音が響き渡る。

ドアが開き、先ほどの無表情がまたしてもこちらを睨んだ。

「ついてこい。」


私は黙って立ち上がった。

足元がわずかに揺れる。薬のせいか、それとも緊張のせいか。


廊下は薄暗く、天井の蛍光灯が一本だけ頼りなく灯っていた。

壁には何もない。窓もない。

ここが何階なのか、建物の規模すら分からない。


男は振り返らない。

私も話しかけない。


角を曲がり、また廊下。

扉が等間隔に並んでいる。

どれも同じ扉だ。


歩いていると一ヶ所、遠くに階段が見えた。

もしかしたらそこから外に出られるかもしれない、最悪そこに行こう。


男は一つの扉の前で足を止めた。

ドアノブに手をかけ、こちらに振り向く。

言葉はなかった。


部屋に入り、男がラジオを付ける。

そこはベット、テーブル、椅子、PCなどの最低限が揃った部屋だった。

引きこもって独り暮らしするには丁度良いくらいだろうか?


男は話し始めた。

「まずはOrcaDBにアカウントを作れ、アカウントの作り方は流石にしっているか?」

相変わらず無表情で口だけが動いている。どうにも不気味である。


私が首を横に振ると、彼は続けた。

「画面に表示されている検索エンジンで、そこに書いてあるIDを入力しろ。

 一度でも実行すれば同じIDは使用できない、覚えておけ。」

 

PCの横には紙が一枚「4265653a28」

私は無言で検索欄にIDを入力する。


打ち込み終わりEnterキーを押し数秒、サイトが真っ白になる。

画面右上で何かがダウンロードされていた。


ダウンロードされたフォルダーにマウスカーソルを合わせ、解凍する。

アプリを起動するとそこには「Welcome to Orca」 そう表示されている。


後ろで「カチャッ」とドアが閉まる音が聞こえた。

鍵がかかる音もした、妥当だが隙をついて抜け出すという手段が経たれてしまった

ラジオが流れている。


「昨夜はとんでもない停電がありましたねー、東京全土での大停電が2時間も続くなんて。SNSでは『外部からの攻撃では?』や『なにか災害の前兆かも』などと話題になっています」

「復旧後も各所でシステム障害が確認されており、鉄道や信号機への影響が——」


昨夜、ということは拉致されたのは昨日なのか。

ということは今は朝なのか、それともまだ夜の可能性もある。

薬で落とされた時間が分からない以上、今が何時なのか全く見当がつかない。


腕時計を見ようと腕を確認したが時計はない。

意図的に時間を隠しているのだろうか?


ラジオのパーソナリティが明るい声で喋り続けている。

外の世界はもう日常に戻ろうとしているのか。


私はPCの画面に目を戻した。

サインアップの進捗バーがゆっくりと埋まっていく。


特にすることもないので部屋を改めて見渡す。

逃げ道を探す気にもなれないくらい何もない部屋だ。


ふとラジオから別の声が聞こえた。

「——専門家によると今回の停電規模は、単純な設備障害では説明がつかないとのことで——」


そうだろうな。

説明なんかつくはずがない。


画面に視線を戻すと、ちょうどバーが100%になった。

「Hi, 127」


この127というものが自分のOrcaIDなのだろう。


アイコンやニックネームを設定、、思ったより自由だな。

人を監視したり停電を意図的に起こすような奴らが利用しているソーシャルメディアだとは思えない。


アイコン設定のついでにPCの画像ファイルにマウスカーソルを合わせた。


クリックするも多数の画像があるわけではない。


文字が黒く塗りつぶされたスクリーンショット数枚と何かのロゴ?が一枚。

Lozxが使っているPCなら何かあるかと思ったが流石にそれを拉致相手に使わせる気はないよな。


緊迫した状況であることは分かっている。

ただ私はサイトからシロフクロウの画像を検索しダウンロードした。

昔から何となく好きなのだ、理由なんてない。こういう時ほど妙なことが気になる。


アカウントアイコンにしようと先程のアプリに戻ると一件のメッセージが届いていた。

「Hello Orca127」


送り主はOrca.B。

相手から気づいてもらえるのは楽だ、わざわざ連絡する必要がない。


>「Hi, Who are you」


送信すると数秒後、返信が来る。


「I am Orca, Do you need a guide?」<


既視感のある会話だ。

そういえば昨日の昼もこんな会話をした。


>「Please. Thank you!」


「Ok. First, please enter 'OMT_01' in Discovery.」<


Discovery、、どこだろう

画面をスクロールしていくと「Discovery」というボタンを見つけた。

ボタンをクリックすると「Enter Table ID」と表示されるので、言われた通りOMT_01と入力する。


静かな部屋の中、キーボードを叩く音だけが響き渡る。


Enterキーを押すと、画面に「MainTable」という項目が追加される。

またそこをクリックするとircが開く。


それと同時にOrcaから一件のメッセージが送信される。


「Enjoying your new accommodations?」<


新しい居場所に満足したか?と。

バレバレだったと。関心と恐怖交じりに私は小さく溜息をついた。


Orca.Bとの会話を続ける。

>「When exactly did you know?」


「Since Lozx started planning.」<


>「And what plan would that be?」


「It's time we met.」<


相変わらず無機質な会話だ。Orcaは皆そうなのだろうか

数秒後、新たにOrcaからメッセージが来る。


「Wouldn't you like to leave?」<

「I can get you out of there.」<


出て話をしようと。私ならお前を外に出せると。

拉致されて小一時間で出てしまって良いのだろうか、

ただし早くここから出たいし、ここに居たところでやることはない。


>「Yes.」


そう送ると、数秒画面が止まり、こう送信された。

「Ask Lozx for the third room.」<


三番目の部屋、、?

「If things go wrong, just say Orca512.」<


私はアプリを閉じ、PCの電源を止めた。

画面が暗くなると同時に、部屋が一段と静かになった気がした。


Lozxを呼ぶにはどうすれば良いだろうか?

私は椅子から降りる。ドアの前に行き、ノックを数回。


何も起こらない。


ドアに耳を当てると、小さく足音が聞こえる。


椅子に戻り、数秒するとドアが開いた。

「どうした?トイレか?」


茶髪が聞いてくる。透かさず私は「Lozxに用がある」と話した。

「分かった。」と返事が返ってきた。


ドアが再び閉じた。


足音が遠ざかっていく。私はしばらくその場から動けなかった。

事が順調に進みすぎている。


Beeと接触できた、脱出の糸口も見えてきた。

それはいい。だがこれはBeeの手のひらの上ではないのか。


どうも都合が良すぎる。


ただ今の私に選択肢はない。

都合が良いなら乗っかるしかないのだ。

私はベッドの端に腰を下ろし、天井を見上げた。Orca512。その番号が頭から離れない。


どんな人間なのか、そもそも本当に動いてくれるのか。何も分からない。

それから数分が経っただろうか。


廊下から足音が近づいてくる。


ドアが開くと、黒髪の男が無表情のまま入ってきた。

「要件はなんだ。」


低く短い言葉だった。私は一瞬だけ間を置いてから口を開いた。

「3番目の部屋に移りたい。」


すると、無表情だった男の顔が暗くなり、溜息をつく。

そして私の顔を強く睨みつけ、小さな声で呟いた。


「関係者か。」




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