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Talk to Lozx

USBを差し込んで1分が経過したが、何も起きない。

ただしファンの回転数が一段上がる。

──いや。


それから見慣れたCLIアプリが立ち上がった。

「Talk to Lozx」

タイトルヘッダーには、そう表示されていた。


ーーーーーーーーー「Talk to Lozx」ーーーーーーーーーーーーー


Talk to Lozx

> _


オートランは無効にしていたはずだ。

それなのにアプリは立ち上がった。

USBを差して起動したのは「Talk for Anonymous」。 

CLI匿名チャットアプリだ。


高度な匿名制度から犯罪に多数利用され2年前アプリ停止となったはずだが、

今私の目の前で動いている。


点滅するカーソルをしばらく眺めたあと、

私はキーボードに指を置いた。

まずは様子見だ。


> Who are you


エンターキーを押した後、数秒経って返答が来た。


I am observer.<


観察者。どういった意味があるのだろうか

それか意味もなくこちらを挑発しているのか、


>Why did you leave the USB?


You picked it up.

That was your decision.<


全ては私の決断だと、まるで自分は一切かかわらず偶然の出来事だと言いたいのか


>What are you?


Does it matter?<



... 舐められている。

それだけははっきりした。


その後数分会話を続けたが、有力な情報は得られなかった。

ますますUSBを私に与えた理由を不思議に思う。


それから10分程度が経った時、

急にPCにメールが届いた


When the power goes out in 30 minutes,

proceed to the nearest library.


30分後に停電が起きたら最寄りの図書館に行けと。

送り主はOrca、今回はLozxではない。

USBに書いてあった名前と同じだ。 やはりLozxとOrcaはつながっているのか。

「スマホ壊して交通費払わせた挙句に予言かよ。」と

私は頭の中で呟いた


停電。偶然なら笑える話だ。

ただし、こいつはUSBを差しただけでこのアプリを起動させた。

オートランは無効にしていたのにも関わらず。


単なる愉快犯にしては、手際が良すぎる。

私は椅子にもたれ、天井を見上げる。

もし本当に停電が起きたら?


ブレーカーか。

建物全体か。

それとも、地域一帯か。


考えれば考えるほど、選択肢が現実味を帯びていく。


画面ではカーソルが静かに点滅している。

まるでこちらの思考を待っているように。


あと20分。

それで予告された時間になる。

本当に起こるのだろうか?


いや、不可能だ。

停電など起きるはずがない。地域一帯を落とすには相応の規模がいる。

そしてこの部屋だけを落とすなら物理的干渉が必要だ。


ふと時計を見た。あと15分

それでも視線は無意識に照明へ向かう。

エアコンの駆動音がやけに大きく感じる。


あと6分23秒

秒単位で確認している自分が嫌になる。

私は小さく舌打ちする。

踊らされている。

分かっていても、思考がそこから離れない。


あと0秒

正午過ぎ。

予告通り照明が落ちる。


けれど、部屋は暗くならない。

カーテン越しの陽光が、何事もなかったかのように床を照らしている。


それと同時に、私は大きな何かと関わってしまったと実感した。


私は玄関へ歩いた。

自分の足音がやけに大きく響く。

靴を履こうとする足はわずかに震えていた。


ドアを開ける。

停電のせいか、マンション全体が息を潜めていた。

――図書館へ行く。

それしか選択肢はない。



歩きながら、私は考える。


これは本当に予言だったのか。

それとも、偶然の停電に便乗しただけか。


だが、タイミングが出来すぎている。


アスファルトが陽に照らされ、

靴底からじわりと熱が伝わってくる。



図書館に到着した。

「なにすりゃいいんだよ」


実際、Orcaに最寄りの図書館へ行けと言われたものの、何をするかは言われていない。


図書館も停電していて電気はついていない。

とりあえず手あたり次第に本を見てみる。

何か書いていないか、側面にはなにかないか?


数十冊見終わった頃には力尽きていた。 

こんなんして何になるのだろうか、


1つ、たった1つだけの手がかりでも良いから欲しい。


「今日何か変なことはありませんでしたか?」

私はカウンターの職員にそう聞いた。


職員の方はすこし戸惑いつつも、何も無いと答えた。


次に私は本の検索用PCを探ろうと思った。

履歴やデータから何か情報が得られるかもしれない。


機械は3つある。

1つ目は何も無かったが、2つ目の履歴には気掛かりなことが書いてあった。

「 Meet lozx at 23. 」


23という数字にはどのような意味が込められているのだろうか?

23 bc、いや違うな。 特定の番号もしくはコードの可能性が高いだろう。

図書館、番号、、なんのことだろう?


分類番号?


思いつくと同時に私はカウンターへ向かった。

「すみません、分類番号023の本ってどのあたりにありますか?」

「023ですか?、それならこの辺りにありますよ」


案内された場所の中には、1冊少し古びた本があった。

「023、これか」

私は本を手に取り開いた。

本のタイトルは「情報管理と観察者効果」


本を読んでいると、あるところに赤線が引いてあった。

「The observer is never neutral」


観察者は決して中立でない。

Lozxは観察者であり、私は観察対象でしかないと。

そういうことだろうか?


図書館に来させてまで挑発か。 

私は少し気分が落ちた。

ただし履歴に「 Meet lozx at 23. 」というのが存在しているということは、

Lozxが近日もしくは今日この図書館を訪れたということだ。

図書館には多数の監視カメラが配置されている。見ることができればなにか手がかりになるかもしれない


私はカウンターで「少し確認したいことがあって……防犯カメラの映像って閲覧できますか?」と尋ねた。

そうすると「申し訳ありませんが、個人の方にお見せすることはできません。」と断られた。

まあ当然だ。急に知らん人に監視カメラ見せろと言ったって見せることはない。


"ハッキング" これが一番楽で合理的な方法だろう。

犯罪であることは承知だが、好奇心に勝つことはできなかった。

私はとりあえずWi-Fiを記録し、帰宅した。



帰宅後、私はPCを起動し、図書館のネットワークの接続を試みた。

ダメ元だ。 こんなんで接続できたらセキュリティどころの話ではない。

「ん?」

何回か試した後、PCから接続が確認された。

私はこの機を逃すまいとネットワーク内を探った。


パケットの流れがやけに多いアドレスがひとつ。

NVRだ。


数分後、モニターに白黒の映像が映し出された。

「セキュリティ甘すぎんだろw」

咄嗟に呟いた。


ただし、それは図書館内の映像ではなかった。

今私がPCを操作している所、私の部屋が映し出されていた。


私は焦ってカメラがあるであろう方に振り向いた。

ー時計だ。


パニックになり時計を壊してしまった。

PCの画面には「Access rejected.」と表示されている。


その時私はようやく観察者の意味を理解した。

それと同時に、いつから自分を観察していたのかがとても恐ろしく感じた。



3時40分

その時一件のメールが届いた

「There is no turning back.」


「チッ、ふざけんなよ。」


はめられた。

少なくとも、Lozxは私を“対等な相手”とは見ていない。

観察対象。実験体。そんな位置だ。

監視カメラに侵入した以上、警察には行けない。



数分後、次はTalk for Anonymousに通知が入る。


「Orcas never hunt alone.」

…群れか。


Orcaは単独ではない。

あるいは、Lozxが前に出ているだけか。

USBにはOrcaの名。

だがやり取りはLozx。


なぜ送信元を分ける?

同一人物なら、こんな手間はかけない。

まるで、役割が分かれているようだ。


もし仮にそれが正しいのなら、

私は一人を相手にしているわけじゃない。


Lozxを追うべきか。

それともOrcaの正体を探るべきか。

どちらに動いても、気づかれる。


そして気づかれた時、

向こうは静かに手を打ってくる。

後書き:


023って出版らしいです。

図書館行かな過ぎて気づきませんでした。

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