Rusty Components
本作はフィクションであり、実在の企業・団体、人物とは関係ありません。
20XX年 11月2日
私のスマートフォンに一通の依頼文が届いた。
内容を確認する為にページを開くと、画面は真っ暗になってしまった。
「チッ、めんどくせえな。」
突然の出来事に驚き、ただそう呟いた。
ーーーーーーーーー「Rusty Components」ーーーーーーーーーーーーー
基本クライアントとのやり取りはスマホ。
こうなってしまったらどうしようもない。
できるとしたらゴリ押しでスマホが起動することをバカみたいに願うくらいだ。
ただしそもそも故意であればそんな簡単に起動させる気はないであろう。
面倒くさいが修理を頼むか?高けえんだよな。
そんな事考えながら私の頭には一つの案が浮かんだ。
「特定するかー。」
私はバカである。
特定なんてリスク100、見返り0の好奇心に賭けた暇つぶしである。
実際特定は万が一何かあった場合法と関わる可能性があるし、
そもそも変なのに狙われても嫌である。
そもそも特定なんかに費やす時間はあるか? 残念なことに私は暇人だ。
まあ何かあればその時考えればいいのだ、
やることのない暇人の私には丁度良い暇つぶしだろう。
そんなこんなで事態発生から5分経過。
バカみたいに独り言を言っていたって意味がない。
依頼は私が作成したソフトに送信されている、
埋め込んだりできるほど自由度は高くない。
ぶっちゃけ依頼なんて文字だけでいいだろうから自由度は必要ないけどな。
すぐに思いつく可能性は2通り、元々仕組まれていて確認がトリガーとなっていたか、
それとも外部からの攻撃が偶然ページアクセスと同時に起きたか。
もし故意だとして、私だったら2通りの中の前者を選ぶ。
"なぜならかっこいいからだ。"
ただしこの場合はメール自体を“攻撃元”に見せられるという点がメリットだろう
依頼メールのページを開いてブラックアウトしたのなら、無論疑うのはメールの送り主だ。
実際初めは私も送り主を疑っていた。
今回よくある攻撃被害と決定的に違うのは、アプリの開発者が自分自身であること。
とりあえず私はPCを開き、送り主の登録情報を確認することにした。
登録情報の確認の為のクソロードを待つこと5分、大切な5分を犠牲に得られた情報は以下の通りだ。
ユーザー名 :Lozx_Yb2
登録日付 :9/21
最終アクセス :10/16
アクセス元のIP:不明
取得できる情報が少なすぎる。
ふざけんな。 私の大切な5分を返して頂きたい。
それから小一時間探っていたが入手できる情報は何もない。
唯一独自性のある名前からも何も分からない。
被害発生から1時間半、もう時間は深夜1時となっていた。
「一旦そろそろ引き上げるか、」
わざわざこれ以上やった所でパフォーマンスが落ちるのみだろう。あとすげえ眠い。
11月2日 6時45分。目覚めると私のPCに一通メールが送られて来ていた。
寝ぼけながらPCを起動し、メールにマウスカーソルを合わせる。
メールを開いたがブラックアウトはしない。よくoutlookアンチいるが最高じゃないか。
「35.6702XX° N 139.7026XX° E」
座標?
たしかに座標だ。
Nが経度、Eが緯度、なんかこの間ショートで見た気がする。
PCで解析用のサイト探して座標をコピペした。
解析すると多分原宿の座標であった。
正式には原宿駅周りの座標だろうか?それとこれと何の関係があるのだろうか。
素直に原宿って言えばいいのに座標で送ってくるとか格好つけているのか、
送信元は「Lozx」。 例のアプリの奴と同じだ。
メールアドレスも確認しようとしたが、何故か表示されていない。
ますます謎である。Lozxとは一体誰なのだろうか。そもそも人なのだろうか。
どのみち私は暇である、恰好つけている奴が提示する座標に行くことにした。
家から駅まで徒歩20分、微妙に長げえ。これでただのいたずらだったら許さねえからな。
私は久しく家を出て、Lozxについて考えながら駅へと向かった。
電車に乗っている間、私は同時進行で運営しているプロジェクトの事を考えていた。
「Project Grenja」クラッカー向けの掲示板開発プロジェクトだ。
実際無計画に始めたプロジェクトだ、この先どうなるのかと不思議に思っている。
目的や予算がはっきりしていないのだ。変に潰れないと良いが、、。
そんなこんなで駅に到着した
妙に人の気配がしないがそんなもんだと思いとりあえず駅を出た。
手あたり次第にそこら辺の店を当たって行く。 ただそう簡単には何も見つからない。
そもそも手がかりが少なすぎるのだ、座標のみで探すのは気が遠くなる。
ユーザーネームは「Lozx_Yb2」、何か手掛かりにならないものか?
Lozx、Yb2。わざわざアンダーバーで分けるのなら意味があるのだろうか。
そもそも故意かだってはっきりしていないんだ。PCの不具合かもしれない。
まず整理しよう。私は昨日の夜Lozx_Yb2というユーザーに送られたメールによりスマホが死んだ。
次に今日の朝同じくLozxから座標が送られた為座標に向かっている。
もしもLozxが何かしようとしているのなら完全に相手の思うつぼではないか。
ただ、それならなぜわざわざ原宿に向かわせるのだろうか?
端末乗っ取ってそこからDos~とかなら私も分かるが人の足を運ばせることは無意味だ。
誘拐されないといいなーくらいしかないだろう。
店に入って、何もせずに店を出る。
その繰り返し、ただの迷惑行為ではないか。 何らかの法に触れるような気がする。
歩く、何もなければ引き返す。 こんなの何になるのだろうか?
ふと時計を見ると10時だ。なぜこんなに時が流れるのが早いのだろうか
帰るついでに、駅の近くに大きな公園があると聞いた為そこに寄ってみるか。
モニュメントの近くのベンチに座って休憩をしている。
周りからは子供が楽しそうに遊ぶ声や小鳥のさえずりが聞こえてくる。
「こんなアホが探っている間も世界はこんなにも綺麗なんだな」
私は頭の中でそう呟いた。
ただそれと同時にとてつもない違和感が襲ってくる。
なぜだろう?何かが変だ。
この位置だ。この位置に何か意味がある。
私のどうしようもない直感が働いてしょうがない。
「監視カメラだ。」
思わずふと呟いてしまった。
"この場所は監視カメラの死角となっている”
そんな事を考えると同時に、目の前を通りかかった人が何かを落とした。
しかも自然でなく、わざとらしく。
私はすぐそれを拾い「すみません、何か落としましたよ」とその人に渡そうとした。
ただその人は何も言わず歩いてゆく。ただ遠く、その背中が小さくなってゆく。
今自分が握っているものがUSBメモリだと気づいたのは、その人をもう見失ってからだ。
USBにはOrcaと書いてある。Lozxと関係はあるのだろうか?
どっちにしろ追って顔だけでも見ておきたいが、もう見失ってしまっている。
それから30分程度、歩き回ったが何も見つからない。
駅に向かう中、私はふと考えた。
「もしもUSBがわざとならば、私の行動すべては予測されていたのか、
それとも監視されていたのだろうか?」
考えれば考えるほどに不安が出てきてしまう。
「まあどうせ大したものは入っていないだろう。」そう呟いて、無理やり納得した。
駅から駅までの電車は、いつもより長い時間を感じた。
「なぜスマホがブラックアウトしたのか」
「座標の意味はなんだったのか」
「USBには何が入っているのか」
「そもそもLozxは誰なのか」
「OrcaとLozxの関係は?」
考えることが多く頭が混乱する。
まるで出口の無い迷路を彷徨っているようだ。
ただ家に付きUSBを差せばまず1つはどうにかなるのだ。
駅から家までの道のりは短かった。
USBを机の上に置いてから、しばらく触れなかった。
私は何か良くない物に手を出している感覚がして。
もしマルウェアだったとしたらメインのPCでは実行してはいけない、とりあえずサブのPCを用意し、
躊躇ながらもUSBをPCに差し込んだ。
USBを差し込むとき私の手は少し震えていた。
USBを差し込んで1分が経過したが、何も起きない。
ただしファンの回転数が一段上がる。
──いや。
それから見慣れたCLIアプリが立ち上がった。
「Talk to Lozx」
タイトルヘッダーには、そう表示されていた。




