表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨音  作者: 平社員
6/6

終章

その日は、静かな雪が降る日であった。

空は一面灰色に覆われ、寂れた港町に一足早い冬が訪れた。


「初雪か」


楓は、膨らんだお腹を摩りながら呟いた。

この町に住み始めてから数年が経ち、心身共に大分馴染み始めたとは思っていたが、それでも冬の訪れは未だに新鮮味を感じた。


「……湊」


昨年のちょうど今頃、湊は楓の前から姿をくらませた。

行方は今でも分からない。

ただ、彼が自分を置いて逃げるような人間ではないと楓は確信していた。


何食わぬ顔で、「ただいま」と家に戻ってきて、

キッチンに立ちコーヒーを淹れて、窓を見ながらタバコを吹かす。


そんな彼の姿を想像して、楓は家に残っていたタバコの箱を開けて、口角を上げて言った。


「駄目駄目。この子が産まれてからにしないと」


楓は窓を開けて、ベランダに出ると灰色の空を仰いで一息をついた。

太陽の光は、僅かであるが差している。


「名前は何がいいかな。冬に産まれるから、柊かな」


柊と口にした瞬間、お腹がビクッと鳴った気がした。

肯定なのか、否定なのか。それともただの振動なのか。


雪は静かに、しんしんと降り続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ