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雨音  作者: 平社員
3/6

花火


湊が仕事から帰ると、台所から炒め物の香ばしい匂いが鼻腔をついた。


「おかえりなさい。ご飯勝手に作ってしまって、すみません」


湊は小さくため息をつくと、タバコに火を付け口に咥えた。


「帰る気、ないだろ」

「私、帰るお金ないです」


けろりと言う楓は、慣れた手付きで野菜炒めを小皿に盛り付ける。

コンロの上に乗っている鍋からは出汁の香りが漂い、湊の食欲を刺激した。


「金なら出すから。帰ってくれ」

「もうご飯作っちゃったので、食べてください」


食卓の上にはいつの間にか味噌汁と、白米まで用意されていた。

湊は諦めたのか、タバコの火を消して野菜炒めを口に運ぶ。


「うまいな」

「得意なんです。これ」


余程口に合ったのか、湊は瞬く間に夕飯を完食した。

再びタバコを口に咥え、彼はベランダの窓を開く。


「花火か」


突如、鮮やかな音が鳴ると同時に、夜空に紅い閃光が舞い散った。

湊と楓は言葉を失い、ただ目の前の景色に魅入っていた。


「そういえば、今日は祭りだったな」

「祭り、行かないんですか?」

「人の多いところは嫌いだ」

「そう、ですか」


それから二人は何も喋らず、ただ目の前の花火を眺めていた。

夏は終わり、涼しい風が短い秋の訪れを知らせている。

鈴虫の声と花火の音が、静かな夜を彩るように響いていた。


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