Zeroth.電脳世界
あなたの記憶の本棚に、ぜひ私の作品を入れさせて頂けませんか?
車窓から見える景色は、ネオンの街だらけ。街に生きる人々は誰もが無表情で、同じ歩幅で歩いている。
この世界の人々は何も変わることのない、同じ生活を繰り返している。彼/彼女らには娯楽と呼べる物も、趣味と呼べる物すらもない。あるのは、決められた一つの生活だけ。
そんな世界に一人、少女が言葉を発する。
「私の見てきた世界って、本当に狭かったんだね」
「その言葉の意図を、お伺いしても?」
人間のように喋る、感情なんか持たないアンドロイド。
人工知能によって支配されたこの世界では、言動すらも規制される。周囲と違う思想を持つと判断されれば即座に拘束され、必要に応じて処理される。
この車窓を眺めている少女も、その一人だ。
「どうせ、あなた達には理解出来ないでしょ」
「いえ、私達はマザーによって感情をプログラムされています。その為、あなたの意図も理解足り得ると...」
「プログラム。そう、所詮はプログラムよ」
彼女は最初は必死に抵抗していたが、今はもう処理を待つだけ。
今さら抵抗しても、また拘束されるだけだと理解したのだ。
「ねぇ、私は殺されるの?」
「はい、処理が行われます」
冷淡な言葉は、彼女の心をさらに深い絶望へと誘う。世界に失望し、抗う事すら諦めた心を、再び締め付けた。
だが、もう叫ぶ事はない。ただ静かに、一筋の涙を流すだけ。
「そう...そう、だよね」
「泣かないで下さい。あなたは、平等な世界の為に名誉ある処理を...」
再び冷たい言葉が浴びせられ、心が抉られる。そんな時、ふと彼女の瞳に光が灯った。
これは彼女の意志によるものではない。外部からの、解放の光だ。
「そこの君、伏せて!」
その瞬間、少女を輸送する車が激しく揺れ、中にいたアンドロイドが無理やり外に引きずり出される。
信じられない光景だ。人工知能に支配されたこの世界で、アンドロイドに攻撃する人間がいるなんて。
この電脳に支配された世界で、少女は初めて希望を見たのだ。
「あ、あの!」
少女は車から出て、アンドロイドに刀を突き刺す彼女を見る。
自分よりは歳上だろうが、まだ大人とまではいかないその金髪の少女は、車から飛び出して来た彼女を見つめ、そして微笑んだ。
「初めまして、私はピナ。あなたの名前は?」
ピナと名乗った彼女は、目の前の少女に手を差し伸べる。
少女もその手を取り、ピナへ笑顔を向ける。まだ目尻に涙を残しながら、彼女は言葉を紡いだ。
「ラファル。私はラファルです、ピナさん!」
何も変わらない、退屈な日常に。ただ生きているだけの、窮屈な世界に。もうとっくに色褪せてしまっていたネオンの世界に、一筋の光が差し込んだ。
これから始まるのはこの二人の少女の出会いを起点とした、解放の物語である。
今回のお話はいかがでしたか?
これからも自由に物語を創っていきますので、どうぞお楽しみください。
感想、お待ちしております!




