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棚からぼた餅じゃなくて矢が降ってくることもあると思います

特大のやらかしをしました。修正済みです。

弱者は強者に蹂躙される運命にあるとはさっき自分で言ったことだ。実際俺は今ランカーと対峙して床ペロをかましてるわけだが、俺は自分が弱者の部類に入るとは思っていなかったし実際それなりの実力を伴っているとも思っていた。だがそれは幕末汚染度100%以下の通常幕末志士に対してだ。ことランカーにおいて、タメを張れるなどと考えることでさえおこがましい。幕末ではランカーは金魚鉢の鮫と評されることがあるほど格が違う。だが、少なくとも俺が幕末志士である限り諦めるという選択肢はない。初期装備だろうがステゴロだろうが動く手足がある限り、それは立派な凶器になり得る。


「息巻いた割にはあっけなく終わっちまったなぁオイ」


狂犬が、吹き飛ばした刀と俺を結ぶ直線上に立つ。まぁもう一度刀を握らせてくれるわけないか...クッソ最初から紅蓮寧土の居場所を聞き出すつもりなら無力化されることは頭に入れておくべきだった...!こりゃあ奥の手を切るしかないか?


フラフラとまだ少し頬に痺れを感じながらも立ち上がり、まだ戦う意思があるのだと示す。確か昔やったクソゲーにボクシング系統のものがあったはずだ...そっから動きをトレース...つってもほとんど覚えていないし、ダメージのせいで体があまり言うことを聞かない。今は隠し玉をぶちかますタイミングを探るほうが優先だ。


「俺は往生際が悪いからな...少なくとも体力がゼロになるまでは抗わせてもらうぞ...!」


「イイねぇ...そういうのはキラいじゃないぜ?」


先手を取られるのは良くない、とりあえずこちらの動きを押し付ける方向でいく。狂犬へと肉薄し、またもや上から振り下ろされるハンマーを今度は視界の端で捉えながら右ジャブ。左右に体を振りながらワンツー。刀がないことで、動きを阻害するものがなくなり多少無茶な動きもできる...のだが、


「オラオラオラァ!そんなジャブじゃあ痛くも痒くもねぇなぁ!」


鎧部分を殴ったところで大した効果はない、下半身を狙おうにもハンマーの脅威に晒される。もはや何をしても有効打になりえないこの状況下でも、致命傷だけは避け続けひたすらに機会をうかがう...が、迫り来る大質量の猛攻は着実に俺の体力を、精神を削っていく。動きを押し付けるとは言ったものの、実際問題消防ホースの水圧に霧吹きで対抗しようとしてるようなものだ。


「もう手が回ってきてねぇようだなぁ!フンッ!!」


まずいッ!押し切られ...


「...ッ!」


気が抜けた一瞬のスキをつかれ、防御姿勢の上からとはいえ前に構えた腕ごとデカい一撃をもらって宙を舞う。


「...ッカ...ハ ァ...!」


肺が圧迫されたような感覚で口から空気が漏れる...再び地面に倒れることとなった。


あぁ...こいつはもうダメかもしれないな...ランカーってのはこうも化け物揃いなんだろうか。ランカーと真剣勝負一対一でやり合うのはほぼ初めてだが、ここまで差があるとは...相性問題以前に目で追えても体がついてこない。最高の状態で挑んでも引き分けるぐらいが妥当なんじゃないか...


「ヨォ...お前は最後まであきらめが悪そうだからなぁ...」


「一思いにやってくれ...だが、次会った時は覚えておけよ」


狂犬が仰向けになった俺をのぞき込むようにして見下ろす...あっけなさすぎる。せめて...せめて隠し玉だけでも使えれば...!それでも最後まで狂犬を睨みつける...それぐらいしかできることがないのは敗者の定めか。


狂犬がその手に持つハンマーを振りかぶる...しかし、それは俺にとどめを刺すために振るわれなかった。


「チィ!タイミングが悪ぃんだよ...ランキング6位『摩天郎(まてんろう)』ォ!」


狂犬の背後から飛んできたのはこの幕末において本来ならば異質な、しかしほとんどの幕末プレイヤーにとってはもはや親の顔よりも見た光景の一部となっている()であった。的確に首を狙って放たれた矢を振り返りながら薙ぎ払い、しかし相手が高所にいたため動くことのできない狂犬。


命拾いしたぞ...!まさかあのタイミングであいつ(くいっ)が助けに入るとは思わなかった…とりあえず狂犬から距離を取るか...隙を見て気炎凝灰(きえんぎょうかい)を回収できれば御の字だ。というかあいつ(くいっ)が立ってんのはさっき職戦記が消えていった矢倉か?ックソ!まだ状況を把握しきれてねぇ...!


「いやぁ急に矢倉がぐらついたから敵襲かと思ったけど、なにやら暴れてるみたいだねぇ...真反対のほうで雑魚狩してたから気づかなかったよ」


「魔天郎さんヨォ...思ったより近くにいやがったなぁ、こりゃ紅蓮寧土よりもまずはお前からかァ⁉︎」


「おっと、流石にあんたには負けないよ?突撃しか脳がないんじゃ俺の矢は対処しきれないでしょ?」


「アァ⁉︎イイぜやってやろうじゃねぇか!その矢倉ごと解体してやるよ!」


なるほどそういうことか...狂犬に吹っ飛ばされた職戦記が突っ込んでったのがたまたまあいつ(くいっ)がいた矢倉だったわけだ。職戦記がぶつかった振動で気づいて助太刀に入ったのか、あっぶねぇぇぇぇ...まじで助かった。


「そこのあんた!まだ戦えるかい⁉こっちが射程的に有利とはいえ、矢倉ごと解体されたら元も子もない!」


「俺か⁉まだいけるぞ!早速屈辱を晴らす時が来たってわけだッ!首洗って待ってな...狂犬!!」


「死に損ないが一人増えたところで意味ねえんだヨォ!」


転がり込んできた好機ッ逃す手はねぇ!とりあえず今は気炎凝灰を回収することが最優先だ。狂犬もそれをさせまいと動くはずだが...果たしてランカーが助太刀にきた恩恵は如何程か。


「魔天郎!今俺刀がねぇんだ!ちょいとばかしやらかしてな...狂犬の足元あたりにあるのが俺のだ!回収する!援護頼めるか⁉︎」


「まかされた!動きはそっちに合わせる!」


「助かる!」


よし、これでうまいこと狂犬の動きを阻害してくれるはずだ。さてと、本来ならば二人に増えたところで刀を回収できる見込みは限りなく薄い...が、その二人目がランカーとあらば話は別だ。それに...さっきは無理だったが、こっちには奥に手がある。紅蓮寧土には感謝だな。


狂犬を挟んで、あいつ(くいっ)と俺が直線で並ぶ。狂犬はあいつ(くいっ)の方へ意識の大部分を割いているのか、ほとんどこちらを警戒していない。窮鼠猫を噛む...いやまぁこの場合は別のムキムキ鼠が俺に助太刀するとかいう訳のわからん状況だが。おいおいなんだまだ全然やれるじゃねぇか...これだから幕末はやめられない。

もともと「死垂夜桜」って名前で主人公に刀を持たせてたんですけど、バリバリ原作のほうでサンラク氏が「枝垂夜桜」として持ってました。いやほんとマジで頭から抜け落ちてました...ってことで詫び設定?みたいな感じで、今の刀「気炎凝灰」の背景ストーリー的なものを載っけときます。


「気炎凝灰」

かつて、野心に燃える者によって振るわれてきた名刀の一つ。それでもいずれは衰退する運命にあり、持ち主とともにその紅き刀身はくすんだ灰色へと変わってしまった。されども過去の栄光を忘れられぬがために、その強欲さは刀へと移る。燃ゆる気炎、しかし盛者必衰、業火はいずれ消え去る運命にある。されど内に秘めたる過去の栄光は、燃え尽き残された灰は、再び固まりて顕現す。

まぁほぼ妖刀の部類。栄光の意味をはき違えてしまった結果、強き者は弱者を蹂躙するものであると解釈してしまった。奇しくも今のスサノオロチとは真逆の意味を持つ。気炎凝灰は自分よりも弱い者に対して(幕末においては今ままでの天誅の数を参照。自身より少ない相手を弱者と判定する)ステータスに補正がかかる。スサノオロチがキルペナを食らってこの武器を持ち出したのは、ある程度天誅しやすくするため。それで撰刀狂に見つかって追いかけまわされる羽目になったわけですが。

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