最初の依頼
登場人物紹介
蒲元
西暦191年2月15日生まれ(現在18才 水瓶座)身長172㎝ 血液型A型
黄承彦
西暦152年5月30日生まれ(現在57才 双子座)身長175㎝ 血液型O型
安玄
西暦161年7月4日生まれ(現在48才 蟹座)身長165㎝ 血液型B型
漢の建安十三年(西暦208年)
益州蜀郡郫県のとある工房にて
黄承彦「阿元、朗報だぞ!」
蒲元「何ですか急に?」
黄承彦「我が婿の"伏龍"がついに出廬した」
蒲元「え?婿って…月英さんに貰い手が居たのですか?あんな変な人に…」
黄承彦「師匠の娘を…しかも姉弟子に向かって…」
蒲元「我々に遠慮なんていいじゃないですか、儒にはもうウンザリなんで。で、旦那が"伏龍"って…諸葛亮孔明ですよね?噂でしか聞いたことないけど」
黄承彦「ウム!あいつは最高の伴侶を得た!」
蒲元「それが僕に何か関係が?"朗報"って言われても」
黄承彦「フ、フ、フ、かの諸葛孔明は"絡繰狂"だという世に知られていない顔があるのじゃ」
蒲元「え!?ってことは…」
黄承彦「そう!我が娘、黄月英と馬が合う漢が見つかったのじゃ!」
蒲元「義姉貴は官渡大戦で劉曄さんに惚れ込んで嫁入りしようとしたけど、あまりにあからさまに技術を吸収してしまうから破談になったんですよね?世間ではブサイク過ぎて劉曄さんが目を潰したって言われてるけど、僕は旦那より頭のいい女を認めたくないからだと思いますけどね」
黄承彦「しかし諸葛孔明は違う!あの漢は『私以上の才を持つ伴侶に巡り会えた事、天の思し召しにございます。絡繰について沢山 談義しましょう』と言ったらしいのじゃ!」
蒲元「それは大した器ですね。"伏龍"の二つ名は伊達じゃないかも」
黄承彦「そこでな、お前に頼みたい事があって城を焼き払う規模の油を用意してほしいのじゃ」
蒲元「それはまた物騒な、何に使うのです?」
黄承彦「聞くな」
蒲元「………いいでしょう」
十日後、蒲元工房に安息(パルティア)出身の商人にして優婆塞(在家信者) 安玄が訪れた
安玄「蒲元さん、お久しぶりです。何でも安息式の製油法を教えて頂きたいとの事ですが?」
蒲元「よく来て下さいました。師匠からの依頼で、何に使うかは教えてくれませんでしたが…安玄さんは製油法の事、教えてくれます?」
安玄「報酬は浮屠(ブッダ)の教えを地元の名士 二十人に教える事でしたよね。我が祖国で採れる石油を生成した製油法は羅馬や貴霜にも伝わり、良い事では灯りや調理の為の火として、悪い事では火刑や火計の為に使われています。わが祖国では貴重な収入源です。しかし今の乱世の只中の漢ではやはり………」
蒲元「ええ、ほぼ後者でしょうね」
安玄「それでも、浮屠の尊い教えを広める為には仕方無い事だと思っています」
蒲元「よく決断されました。では、その製油法とは…?」
安玄「まずは地下から石油を取り出します。その為にこの『猿田彦之杖(ダウジングロッド)』を使って油脈を探します」
蒲元「確か噂ではそれって合肥の劉馥が生活用水を探す為に使われたって聞いたけど、どこで手に入れたのですか?………いえ、それは聞かないほうがいいですね」
安玄「乱世ですから」
それから二人は益州でも石油がよく出ると言われる益州漢安県に移動し
ダウジングで石油の位置を特定して地下150mに眠っていた石油を掘り出した
それから一ヶ月後………
蒲元「師匠、ご依頼の油が出来ました!五百斗(約1000リットル)ほどあれば足りますか?」
黄承彦「うむ!充分じゃ!」
黄承彦は近くにあった藁に安息式石油をかけて火打ち石で火を点けた
ゴォー
黄承彦「わっ!流石 安息の石油よ、よう燃えるわ!これを荷駄隊に乗せて遥か新野まで運ぶぞ」
こうして新野に安息式石油が運ばれ新野城の戦いで曹仁、許褚が率いる曹操軍を焼き払ったのは
史実の通りであった
余談だがその後、蒲元工房に残っていた安息式石油が引火して蒲元工房は一度目の焼失と相成った ゴォー
これが蒲元の最初の功績である
続く予定です