エピローグ
ここは、もう一人のアンナが創世の力を使って作り直した世界。
アンナは身体が成長しない呪いにかけられていた。その呪いを解くために、彼女はとあるエルフの元を訪れている。
「悪いが、あんたにかけられた呪いは強力でね。私でも解除は難しいよ」
「長い年月を生きてきたアイシャさんでも無理ですか……。この子を産んだ時に掛けられた呪いなんですが……」
アンナの腕の中には、まだ小さな子供が抱かれている。
「ちょっと待ちな。無理とは言ってない。時間はかかるかもしれないが、私が必ずあんたの呪いを解いてやる」
「本当ですか?」
「ああ、でも、その間、時間を無駄にしたくないだろう? あんたの体内にはね、通常の人間よりも遥かに多い魔力がある。だから、呪いが解けるまでに、私があんたを一流の魔法使いにしてやる」
「うれしいです。アイシャさん、ぜひお願いします」
アイシャと呼ばれたエルフは以前の世界のエリシャによく似ている。世界が作り直されたことで、以前の世界のエリシャとは、よく似ているが別人となっていた。
アイシャはローラシア大陸のちょうど中央に位置する森の中に小屋を作って、アンナとその子供と暮らしながら、彼女に魔法を教えていった。そうしているうちに、アンナの幼馴染のアローラが小屋を訪ねてきた。
「アンナは私の親友なんです。色々とありがとうございます。聞けば、アイシャさんは錬金術をされているとか。お礼に、私に素材を集めさせてください」
「そうかい? それじゃあお言葉に甘えて、お願いをしようかな」
アローラはアイシャの小屋に出入りして、彼女のために素材集めをするようになった。
そして、アンナの子供のクロードが母親と同じ身長まで成長すると、魔法使いとして一人前となったアンナは息子のクロードと親友のアローラと三人で冒険に出ることにした。
「未だに呪いを解く約束を果たせてなくてすまないね」
「大丈夫です。私、何かとても大切なことを忘れている気がするから、それを知りたいんです。だから、その答えが見つかったら、また先生に会いにきます」
「ああ、その時までに、私は必ずあんたの呪いを解く方法を見つけておくよ」
「お願いします。それじゃあ、先生、お元気で」
アンナたちを見送ったアイシャは覚悟を決めた。
「私も、アンナの呪いを解くために腹を括るとするか」
アイシャは呪いを解くために、賢者の石を作成することに決めた。そのためには、森を出て、素材を集めなくてはならない。
「行ってしまうんですね、アイシャさん」
森に住みアイシャと交流しているレイという青年とその家族がアイシャを見送りにやってきた。
「ああ。悪いが、私がいない間、この森と私の小屋を守ってくれるかい? なんだかんだいってここにも愛着が湧いてしまってね。それに、アンナたちが戻ってくるかもしれないからね」
「もちろんです。俺たちが、しっかりと森と小屋を守ります」
「ありがとう。一応小屋の周りには結界を張っておいたから、魔物は近寄ってこないと思う。任せたよ」
こうして、アイシャもこの森を旅立っていった。
数年後、この森に一人の少女がやってくる。やがて少女は、アイシャの意志を引き継ぎ、錬金術師となるのだが、これはアンナの物語。そのお話は次の物語で話すとしましょう。では、また。




