偽女神の復讐
「お前は、あの時の偽女神か。私の攻撃で跡形ともなく消し去ったはずだが、なんらかの方法でアンに吸収されていたようだな。まあいい。お前は私を本気で怒らせた。跡形もなく消滅させてやる!」
「お怒りですねえ、怖い怖い。でも、この姿を見ても、同じことが言えますねえ?」
闇のアンナは、自身の身体をシンシアと全く同じに変化させた。
そして、シンシアの声で、ドロシーに話しかける。
「ねえ、知ってた? 私、あなたのことがずっと好きだったんだよ?」
「なんだと……」
ドロシーはシンシアの姿になったアンナに戸惑いを隠せない。
「ねえ、ドロシー。私、彼女の中で生きてるの。だから、攻撃しないで……お願い」
(声までシンシアとまったく同じに出来るとは……だが……)
ドロシーは迷いを振り切りシンシアの姿のアンナを攻撃する。
「やめてよドロシー。痛い。痛いよう」
ドロシーはアンナの口を鷲掴みにして喋れなくした。
そして、そのままアンナの腹を手で貫いた。
「かはっ、さすがに惑わなかったか、だけどね……」
その瞬間、闇アンナがシンシアに姿を変えた時点まで時間が巻き戻った。
「お前、今、時間を巻き戻したな……」
「さすが女神様。よくお気づきになられましたね」
「お前、まさか……」
「ふふ、そのまさかですよ。私は自分が食べた人間の能力を受け継ぐことが出来るんです」
シンシアを吸収したことで、彼女の時を操作する能力を受け継いだ闇アンナ。
「ふふ、この能力があれば、私は女神のあなたにも負けませんよ。今の私は、時を自由に操れる。まさに神をも超えた能力です。そして、あなたの時間だけ、遅らせることもできる」
そう話すと、闇アンナはドロシーの身体に素早く触れた。
「ふふ、今、私がお前の時間を遅らせた。これからお前は私に何をされたか、ずっとずっと先の未来まで、感じることもできない」
闇アンナは全身か漆黒の闇を放出して、ドロシーの身体を包み込んだ。
「それではいただくとするか」
そして、ドロシーは闇ごと闇アンナに取り込まれた。
ドロシーを吸収したことで、闇のアンナは女神の力を手に入れた。
「ふふ、力が溢れ出してくる。これが女神の力というわけね」
ドロシーから手に入れた神聖エネルギーが、闇のアンナから放出されるオーラを光輝くものへと変化した。
「さて、アンナ。まずは私たちの仲間を復活させましょうか」
闇アンナは、シンシアに消滅させられた仲間たちを復活させた。
「あ、あれ、私たち、石化させられたはずじゃ……」
「あなたは誰ですか? アンナに似てる?」
「ふふ、後で教えてあげるから、まだ待っていてね」
闇アンナは復活したスクネたちに手を振ると、背を向けた。
「さすが創世の力ね。完全に消滅した人間をこうも簡単に復活させられるとは。そして、アンナ。次はあなたの願いを叶えてあげるわ」
闇アンナは、シンシアに殺された仲間たちを復活させた上で、ローゼンブルグを魔道炉の事故が起きなかった世界へと作り変えた。
「ふふ、これでいい。これであなたの望みどおり、ローゼンブルグは元の世界へと戻ったよ」
世界が再構築されたことを確認した闇アンナは、嬉しそうに微笑んだ。
「それじゃあ、この身体はアンナに返してあげる。私はもう、あいつらを倒して、復讐できたからね。いつかまた、昔みたいに二人で遊ぼうね。アンナ」




