女神様にお願いしよう
レベッカたちはアンナたちの待つエリシャの元へと戻り、女神ドロシーと大天使シンシアの件を報告した。
「そうか、あの子が女神になっていたとはねえ」
「知っているんですか、エリシャさん?」
「ああ、ローラは私の友人だったんだ。そして、ドロシーという女の子に転生してからも、私に会いに来たんだ。それで、少しの間だったけど、一緒に生活をしていたんだ。でも、その時は一人だったよ。おそらく、私と別れたあとに、シンシアって子と出会ったんだと思う」
「エリシャさん、私は一度シンシアに会っているの」
アンナがエリシャに答えた。
「以前、マスターと呼ばれていた女性が、ローゼンブルグを滅ぼそうとしたことがあるの。私たちはマスターと戦ったんだけど、どうすることも出来なかった。最後は天使のシンシアが来て、マスターを倒してくれたんだけど、そのあと、私は彼女に話しかけられたの」
「そんなことがあったんだね」
「ええ、その時に何故か私のことを知っていたのが気になっていたの。そして、私が前世でもローゼンブルグを守ろうとしていたと言っていたの」
「とりあえず、ドロシーとシンシアに会えるといいんだが、どこにいるのか見当もつかないからな。私たちからしたらもう、天の上の存在だからなあ」
「なんとかして彼女たちとコンタクトを取る方法をみつけるしかないわね」
「スクネ、里を出る時に話した、私たちの冒険の目的を覚えているかしら?」
アンナはスクネの方へ向きを変えると、優しく彼に話しかけた。
「確か、魔素を無毒化出来る触媒を見つけて、ローゼンブルグの人々を助けることだよね?」
「そうよ。エリシャさんのおかげで、触媒のことはわかったんだけど、それを作って全ての人々を助けるには、長い年月がかかることがわかったの」
「それに、人間だけじゃなくて、ローゼンブルグの地表の除染作業をしないと、汚染された大地で生活している魔物がどんどん凶暴化してしまうのよ」
アロウラがアンナの話に付け足して話した。
「そこでね、女神のドロシーに直接お願いして、魔道炉の事故を最初から無かったことにしてもらおうと思うの。大天使のシンシアが自分に都合の良いように世界を作り替えたのなら、それぐらいの変更は女神にとっては簡単なことなはずよ」
「ドロシーは納得するだろうが、問題はシンシアだね。彼女は現在の自分の理想の世界を変えることに反対するかもしれない。そのことで彼女に不都合な事態が起こらないとは限らないからね」
「とりあえず、話し合ってみるしかないわね。場合によっては、対立することになるかもしれないけど」
「女神様と敵対するとか、考えただけでも恐ろしいことだわ。けど、ローゼンブルグの人々は今この瞬間も苦しんでいるのだから、やるしかないわね」
話を聞いていたジェシカがつぶやいた。
「ジェシカ、あなた、ブラウハントの人なのに、ローゼンブルグのことを心配してくれるのね」
「どこの国かなんて関係無いわ。困っている人を助けなくちゃいけないのは当たり前のことじゃないの」
「・・・ありがと、ジェシカ」
「ふふ、こんな当たり前のことで感謝しないで、アロウラ」
アロウラとジェシカはいつの間にか仲良くなっていた。
彼女たちは気が合うらしく、二人は見つめ合いながら笑っていた。
「そうだ、レベッカ。あなたにはお礼をしないとね。スクネの素材集めにずっと同行して手助けしてくれたのよね。本当にありがとう。感謝しているわ」
「僕からもお礼を言わせてください。レベッカさんがいなかったら、僕は素材を集められなかった。本当にありがとうございました」
アンナとスクネはレベッカに頭を下げた。
「スクネくんには何度も命を助けられましたから。感謝するのは私の方ですよ」
レベッカも二人に頭を下げた。
「それで、レベッカたちはこれからマグナスのところに戻るんでしょう? 私たちも同行してもいいかしら? マグナスにも直接お礼がしたいし、彼に相談したいことがあるの。女神たちに会うためには、多分、マグナスの空間転移の能力が必要になると思うからね」
アンナたちは、レベッカたちと一緒に、マグナスに会いに行くことにした。




