猛毒の幻獣VSチート能力者
「オドロイタ……ココマデワタシトタタカエルトハ……ワタシガシラナイウチニ……ニンゲンドモモシンカシテイタヨウダナ……」
吹き飛ばされていたキマイラが元の場所まで戻って来た。
「ダガ……コレナラドウカナ?」
突然キマイラの周囲の木々が枯れ始める。その光景にいち早く気づいたアロウラがみんなに警告する。
「みんな、あいつから離れて!」
「ワタシノタイナイデ……モウドクガセイセイサレテイルノハ……シッテイルダロウ? イクラツヨクナッタトコロデ……ショセンニンゲンハドクニハ……ムリョクダカラナ」
キマイラは自身の体内から自身が放出できる最大量の毒を放出していた。
「オマエタチヲ……イッシュンデコロセルノウドダ……アキラメロ」
キマイラは鋭い眼光でアンナたちを睨みつける。
「マズいわ。森の木々が一瞬で枯れるほどの毒を出せるなんて。どうしたらいいの?」
「大丈夫だ。私が君たちを安全な所まで送ろう。あとは私に任せてくれ」
マグナスがキマイラに対応するために前に進み出る。
「でも、それではマグナス様が……」
「私は問題無いよ、ジェシカ。彼女たちを頼んだよ」
そう話すと、マグナスは空間転移の能力でジェシカたちを他の場所へと移動させた。
(急いでいたからな。毒の影響を受けない場所まで飛ばしたが、そこが安全かどうかは確認出来なかった。まあ、7彼女たちなら大丈夫だろう)
そして、マグナスは不敵に笑いながら、キマイラに近づいていく。
「ナゼダ……ナゼオマエハ……ワタシノドクニヘイキデイラレル?」
「解せないという顔をしているね? 実は、私の体内にいる魔道獣がたくさんの毒を精製しているんだ。そのおかげで、私には毒の耐性が出来ていてね。私に毒は効かないんだ」
マグナスの瞳があやしく光る。その直後、キマイラは動けなくなった。
「コレハ……ワタシノカラダガウゴカナイ……バカナ……コノワタシガ……マヒサセラレタ……ダト?コイツハイッタイ?」
マグナスはそのままキマイラのそばまで近づき、キマイラの身体に手をかざす。
「キマイラ、お前は珍しい個体だからな。私のコレクションに加えてやるよ」
マグナスは空間転移の能力を使って、キマイラとともに自身の研究所へと移動した。
◇◇◇
「レベッカ、聞こえる? キマイラはマグナス様が捕獲して研究所へと連れて行ったそうよ」
ジェシカがスマートボードを使ってレベッカに報告している。
「そうか、私たちもすぐにそちらに行くよ」
スマートボートの通話を切ったレベッカはルーシーの方を向き、結果を伝える。
「ルーシー、エリックだった魔物は私のボスが捕らえてくれたそうだ。もう、君を追う者はいなくなったよ」
彼女はまだショックを受けているようで、返事をすることが出来なかった。
「レベッカ様、本当にありがとうございます。ルーシーは私が責任を持って支えていきます」
サンディが泣きながらレベッカに頭を下げる。
「ショックから立ち直るには時間が必要だ。だけど、君がそばにいれば必ずルーシーは立ち直れるはずだよ」
レベッカはサンディとルーシーの手を優しく握りしめた。
◇◇◇
レベッカたちがアンナたちの元へ戻ってきた。その後、スクネがアンナたちに話しかけている。
「母さん、アロウラ。エリシャさんに頼まれた最後の素材がまだなんだ。それを集めにいってもいいかな?」
「スクネが決めたことだもの。反対する理由なんてないわ」
「ありがとう。レベッカさん、最後の素材集めの冒険に付き合ってもらえますか?」
「もちろんだよ。今までで最高の冒険にしよう」
レベッカはスクネに微笑んだ。
(ボクも同行させてもらうよ。いいね?)
姿を消しているステラがレベッカに囁いた。
レベッカはさりげなく手でOKのジェスチャーを作りステラに返答した。
こうしてスクネは、最後の素材集めをレベッカと行うことにした。




