敵に見つかった!
三人は、森の中を気配を消しながら、静かに進んでいった。
「しかし、あなたの耳ってすごいわね。魔物の位置が全部わかるんでしょ?」
「大体の位置と数はわかるわ。でも、地形とかはわからないから、潜んでいたり、他の音と紛れていたりするとわからないけどね。魔力で聴力を強化すれば、森の端くらいまではわかるんだけどね」
アロウラは自分の耳に手を当てながら、アンナに説明している。
「十分よ。下手に魔物と戦って、血の匂いを出してしまうと魔物がどんどん集まってしまうからね。多少時間がかかっても、魔物を避けながら進んだ方がいいわ。それでも、何回かは遭遇するでしょうから、その時はクロウドに倒してもらうわよ。いいわね?」
「うん、まかせてよ。なるべく血を出さないように倒すから」
身体の小さなクロウドは、力では押し負けてしまうので、なるべく無駄な動きを無くして、相手の動きを見極めてから、確実に急所を攻撃するようにアンナから教わっていた。
クロウドはアロウラが見つけられなかった猪の魔物を峰打ちで気絶させていく。
「すごいじゃない、クロウド」
「アンナと毎日訓練してるからね。戦う時の身体の動かし方とかを教えてくれるんだよ」
(毎日だなんて、うらやましいわ。今度私も一緒にやらせてもらおうっと。ああ、楽しみだわ)
しばらく進むと、急に魔物の叫び声が聞こえてきた。
「……この先で誰かが魔物を狩っているわ。二人いる。結構強そうね。どうする?」
「相手にすることは無いわ。迂回して進みましょう」
「マズい、気づかれた! まっすぐこっちへ向かってくるわ!」
三人の先にはオークと化した元人間の戦士二人がいた。
魔物化が進行した彼等は人間の匂いを感知して三人を見つけたのだ。
「人間の匂いを追って正解だな。女とガキとメスガキかあ。まあまあ楽しめそうだな。おい、ジェイク。女とメスガキはこないだの女みたいに身体の原型が無くなるまで痛めつけるなよ。楽しめなくなるからなあ」
「ああ、そいつらはお前にやるよ、ゴルドン。俺はガキの方をやるからいいぜ」
「お前はそっちの方が好みだものな、ははっ。それじゃあ、ちゃっちゃとボコって楽しみますか。女の方はすぐには壊れないだろうからしばらく楽しめそうだ」
二人はいやらしい笑みを浮かべながら走り出した。
「音も気配も消していたのに、どうして?」
アロウラは首をかしげている。
「多分、匂いでこっちを見つけたのよ。彼等、鼻が効くようね」
三人の目の前に二人のオークが現れた。
オーク達はほぼ全身が魔物化していて、身体が元人間とは思えないほど巨大化している。
「やあやあ君たち、俺たちと一緒に遊ぼうぜ」
オーク達はニヤニヤしながら三人に近づいてきた。
「ずいぶんふざけた挨拶ね。会話が出来るってことは、あんたたち、元人間でしょ? 頭の中まで魔物化しているじゃないの?」
「つれない返事だなあ。まあいい。どうせ最後は身体が壊れるんだから、それまでは楽しませてくれよ」
オーク達は持っていた斧を振りかぶると、激しく振り下ろしてきた。
素早く後ろに下がって斬撃をかわす三人。
「僕がやるよ。二人は下がっていて」
クロウドが前に出て剣を構えた。