幻獣キマイラ
「母さん!? それにみんなも! 来てくれたんですね!」
「私が作った魔道具でレベッカの様子を確認したら、君があの魔物と戦っているのが見えてね。大変なことになりそうだから、エリシャのところにも立ち寄って、みんなを連れてきたんだ」
マグナスは、彼が作成した遠方の様子を見ることの出来る特別な魔道具で、レベッカたちを確認していた。
そして、彼女たちが苦戦していることを確認したので、アンナたちを連れて助けに来たのだ。
「でも、どうやってここまで来たんですか?」
「私はね、空間転移の能力を使うことが出来るんだ。それでみんなを連れてきたのさ」
マグナスは、体内に複数の魔道獣を寄生させている。
そして、その中の一つの魔道獣が、空間転移の能力を使うことが出来た。
マグナスはその能力を使って、まずは自身をエリシャたちの元へと転送して、彼女に事情を説明した。
そして、アンナたちを、スクネたちがいる幻影の森まで転送したのだ。
「あなたたち、身体は大丈夫? すぐに麻痺を解除するからね」
アロウラとジェシカが身体が麻痺しているレベッカたちに近づき、状態異常を回復する魔法をかけて、麻痺を取り除いた。
「ありがとう、アロウラさん。ジェシカも来てくれたんだね。うれしいよ。そしてマグナス様、またご迷惑をおかけしてしまいました。申し訳ございません」
麻痺が解けたレベッカはマグナスに頭を下げた。
「気にするなレベッカ。君が無事ならそれでいいんだ」
そういうと、マグナスはレベッカに微笑んだ。
「ふん。このボクがあいつに助けられることになるとはね」
マグナスに麻痺を解除してもらったステラも駆けつけてきた。
マグナスはスクネの元へ駆け寄ると、彼の状態を確認した。
「スクネくん、私が君の毒を解毒しよう。見たところ、結構強力な毒のようだから、少し時間がかかりそうだ。アンナちゃん、その間、彼の相手をお願いするよ」
マグナスの体内にいる魔道獣には、毒を精製し、また解毒が出来る能力を持っているものがいるため、彼は解毒も行うことが出来た。
マグナスがスクネの解毒を始めた時に、アンナの閃光魔法で遠方まで吹き飛ばされていたエリックが戻ってきた。
「クソッ! こいつらの仲間が増えやがった! どうなってやがる? 俺は最高に幸運なはずなのに!」
「あなた、自分が強くなったと勘違いしてるようだけど、いくら魔物化しても、元の人間が小物では、そこまで強くはなれないようね」
アンナは、エリックを嘲笑うような声で挑発した。
「黙れ! 今の俺は最強、最強なんだ! お前らがいくら束になろうが俺の勝利は揺るがねえんだよ!」
エリックの怒りが頂点に達したその時、エリックの身体を漆黒のオーラが包み込んだ。
そして、エリックの身体は、人型から獣型へと変化していく。やがてエリックは人としての面影を無くして、古代種本来の姿へと変化した。
「幻獣キマイラ。これがこの魔物の本来の姿ってわけだ。あの男、本当に厄介な魔物を寄生させてやがった」
古代種の知識があるステラが苦々しくつぶやいた。




