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冷たい狼を倒す方法

 氷晶の谷は無数の氷晶と呼ばれる氷の塊で満ちており、そこには精霊の涙と呼ばれている貴重な魔石が眠っているという。


 氷晶の谷に到着したスクネたちは、谷全体が雪に覆われていて、氷属性のモンスターが跋扈する危険な場所であることを知った。


「火山の洞窟は暑かったけど、ここは寒すぎるわね」


 寒さに慣れていないサンディがブルブルと震えている。


「基本的にギルドが高難度に指定しているダンジョンは、厳しい環境のところが多いんだ。だから、防御魔法が必須になるんだよ」


 そういうと、レベッカは全員に冷気に耐える防御魔法をかけた。


「ありがとうございます。大分寒さが和らぎました」


「氷属性のモンスターの弱点は火だから、火の魔法を使えば比較的楽に倒せるけど、魔力を温存するために、なるべく気配を消して、必要の無い戦闘は避けていこう」


「わかりました。慎重にいきましょう」


 四人は氷晶の谷の奥深くへと進んでいった。


◇◇◇


 谷の最奥には洞窟があり、その前で巨大な狼のモンスターが四人を待ち構えていた。


「ちょっと、なんで入口にあんな大きな狼がいるの!?」


「こいつはフェンリルだ。もちろんこんなところにいていいモンスターじゃない。古代竜の時と同じで、誰かさんが召喚したようだな」


「フェンリルって、またSランクのモンスターじゃない!」


 フェンリルは全身から冷たい冷気を放ちながら、レベッカたちをじっと見据えている。


「みんな、出来るだけあいつから距離をとってくれ。冷気の塊みたいなモンスターだから、身体に触れるだけで凍りついてしまうよ」


「わかったわ」


「私が何とかしてこいつを引きつけるから、君たちは遠くから援護してくれ」


 レベッカが動こうとした瞬間、フェンリルは凍りつくような息を吐いて四人を攻撃してきた。


「私たちに任せて!」


 サンディとルーシーが全力でシールド魔法を展開する。二人の展開したシールドはなんとかフェンリルの息に耐えることができた。


「やっぱりブレスの攻撃は強力ね。次は防ぎきれないかも──」


「二人ともありがとう。あとは私が何とかする! スクネくんは二人を守ってくれ!」


 レベッカはカバンから筒状の魔道具を取り出すと、素早く導火線に火をつけて、フェンリルの顔を目掛けて投げつける。

 魔道具はフェンリルの顔の近くで爆発して、激しい炎を上げた。


「この魔道具の中には燃料がたっぷり入っているからな。一度火がつけば激しく燃え上がるのさ」


 フェンリルは顔を地面に擦り付けて火を消した。顔を燃やされたフェンリルは怒り狂って、レベッカに襲いかかってきた。


 フェンリルが振りかぶった前足が、レベッカを襲う。この攻撃を何とか受け止めたレベッカだったが、真後ろに吹き飛ばされてしまった。


「ぐぅっ!」


 フェンリルはレベッカを追いかけると、口を大きく開けて、彼女に噛みつこうとする。


 ──しかし、その瞬間をレベッカは狙っていた。

 

 レベッカはフェンリルの口の中に焔石のかけらを投げ入れた。彼女が上手くフェンリルの口の中に焔石を投入したことで、フェンリルは苦しみながらもがきだした。


「今だ、スクネくん! フェンリルを攻撃してくれ!」


「はい!」


 スクネは攻撃時に自身が冷気を受けないように、剣に蓄えられていた魔力を解放して斬撃を飛ばす。剣から飛んでいった魔力の斬撃がフェンリルに直撃すると、敵はもう動かなくなった。


「レベッカ様、フェンリルに何をしたんですか?」


「焔石のかけらを食わせてやったのさ。氷属性のフェンリルにとって、焔石は猛毒のようなものなんだ。だからあいつは突然苦しみ出したんだよ。さあ、先を急ごうか」


◇◇◇


「ふふ、さすがレベッカだ。フェンリルの攻撃を炎の魔法で相殺するとはね」


 フェンリルを召喚した人物は、魔法で完全に気配と姿を消して、レベッカたちの戦いを観察していた。

 そして、レベッカがフェンリルに攻撃される寸前に一瞬だけ炎の魔法を使い、接触部分の冷気を相殺していたのを見逃さなかった。


「やはり君は天才だ。あの攻撃で身体が凍ってしまったら、すぐに焔石を投げられなかっただろうからね。ふふ、それでこそ、ボクの推しだよ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今日も謎の人物さん、推し活ご苦労さまです。今回もとても面白かったです。フェンリルの弱点をえげつなく衝いていくレベッカさんもとても素敵でした。スクネくんたちとともに、とても連携が安定してきま…
[良い点] フェンリル撃破!お見事です! [一言] ストーカーの動向も気になりますが、果たしてどうなるか……
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