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巨大トカゲと危険なダンジョン

 次の日、レベッカとスクネはギルドの受付の前でサンディとルーシーを待っていた。


 受付にいたエレナがレベッカに話しかける。


「うふふ、レベッカさんの尻尾、最高でしたよお。また一緒に寝ましょうねえ」


 レベッカは何も言わずに微笑みながら手で返答した。


(添い寝するだけみたいに言ってたのに──)


 スクネは心の中で苦笑いした。


 しばらくして、お互いに手を繋ぎながら、サンディとルーシーがやってきた。


「レベッカ様、お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。そしてスクネくん、こないだはどうもありがとうね」


「私からも言うね。スクネくん、ありがとう。そして、レベッカ様、スクネくん、またよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


(ずっと手を繋いでる。本当に仲がいいんだ。この二人は友達以上の関係なのかな?)


◇◇◇


 次に彼らが向かったのは、ローラシア大陸北部のレスピオ火山の麓にある「焔岩鉱山」だった。ここでは、熱気溢れる洞窟の中で炎の魔力を宿した魔鉱石「焔石」を採掘しなければならない。


「このダンジョンはこの火山のマグマの近くまで続いてるから、先に進むほど暑くて危険な場所なんだ。だから、以前私が探索した時に作成した地図を使って、時間をかけずに最短ルートで攻略しよう。いいね?」


「もちろんです。マグマの近くなんて、人が生身で近づいていい場所じゃないですし──」


「私たちも異論は無いわ。無駄な寄り道は避けましょう」


 このダンジョンの内部の温度は高温のため、防御魔法で身体を守らないといけない。三人は暑さに耐えるために、レベッカに防御魔法をかけてもらった。


「とりあえず、先に水分を補給しておこう。このダンジョンでは水は厳禁だからね。なぜかというと、水は空気よりも熱を伝えやすいからなんだ。それに、マグマの近くで水を出すと一気に水蒸気が発生して、火傷をしてしまうよ」


「何それ怖い。絶対に水は出さないようにするね」


「実は、私たちを覆っている空気は熱を通しにくくてね。この空気が熱を遮断してくれているんだ。それで、私たちはなんとか暑さに耐えられるんだよ」


「へえ、空気が熱を通しにくいなんて知らなかったわ」


「だけど、防御魔法を使っても、ここの暑さには長くは耐えられない。それくらいこの場所はヤバいってことなんだ。だから、探索出来る時間は限られているよ。今回は最短ルートで最深部まで突っ走ろうね」


 四人はレベッカが指示したルートを進んでいく。


「うーん。やっぱりこの暑さはこたえるわね。喉が渇いたけど、水が飲めないのがつらいわ」


「ルーシー、もう少しだけ我慢してくれ。なるべく早く帰還出来るようにするからね」


 洞窟内は灼熱の地獄のような環境だったが、レベッカたちは暑さを我慢しながらダンジョンの奥へと進んでいった。


 そして、四人が洞窟の最深部に到達すると、ダンジョンマスターである火を吐く巨大なトカゲのモンスターが襲いかかってきた。


「ウソ!? ここのボスもドラゴンなの?」


「いや、あれは巨大なトカゲだよ。バジリスクとも呼ばれている。翼が無いだろう? 空を飛べない分ドラゴンよりは楽に戦える。それでも強敵には違いないけどね」


(こんなに巨大なトカゲがいるなんて、私知らなかったわ。やっぱり冒険って最高ね)


 サンディは目の前にいる巨大なバジリスクに、興奮を抑えきれないでいる。


「もうあまり時間が無い。こいつは私が引き止めるからその間に三人で焔石を回収してくれ」


 バジリスクは炎を吐きながらレベッカに突進してきた。


(こいつ、前に戦った時よりも凶暴になっている。以前はこちらから仕掛けない限りは攻撃してこないぐらい臆病で慎重な性格だったはずだ。もしかして、このダンジョンで何かが起こっているのか?)


 レベッカはバジリスクの攻撃を避けながら、小型の手榴弾のような魔道具を使って小さな爆発を起こして、敵の気を引いた。

 

「今だ! 先に進んで焔石を回収してくれ!」


「はい!」


 スクネたちが奥へと進むと、燃えるような赤色の魔石が壁中に埋まっていた。


「時間が無いわ。とりあえず、魔法で壁を砕いて破片を回収しましょう」


 ルーシーが慎重に魔法で壁を砕き、無事に必要な量を手に入れた。


 三人がバジリスクがいた場所まで戻ると、レベッカが冷気を纏ったナイフを投げて巨大トカゲの足を攻撃していた。


(氷魔法で冷気を纏わせたナイフで足にダメージを与えて動きを鈍らせようとしているのか。さすがレベッカさんだ)


「レベッカさん、焔石を手に入れましたよ!」


 その時、突然ダンジョン内が激しく揺れた。


「きゃああ!」


「大丈夫ですか?」


 スクネはしゃがみ込んだサンディたちに声をかける。


「ええ、なんとかね、ありがとう」


「みんな聞いてくれ。何かものすごく嫌な予感がするんだ。とりあえず、今すぐここを離れよう。出口まで全速力で走るよ!」


「はい!」


 四人が走ろうとした時、ルーシーが倒れてしまう。


「ルーシー!」


「大丈夫ですか? 僕が背負っていきますよ」


「スクネくん、やめて!」


 スクネが背負っていこうとするが、サンディが止める。


「ごめんなさい。彼女は男の人に触られるのが嫌なの。だから、私が背負っていくわ」


 ルーシーは過去のトラウマから、男性に触られるのを嫌がっていた。


「サンディ、君ももう限界だろう? 大丈夫だ。彼女は私が背負っていこう。スクネくんは先行して邪魔なモンスターを倒しておいてくれ」


「わかりました。僕がモンスターを倒していきますね」


「私も手伝うわ。さあスクネくん、行くわよ」


 スクネとサンディは先行してモンスターを倒しながら進んでいく。その後ろをルーシーを背負ったレベッカが追いかけていった。


 そんな四人の後ろ姿を謎の人物が見つめていた。


「今回は君の活躍を楽しむ時間があまり無かったなあ。まあ、ここでは仕方がないか。それじゃ、次の冒険を楽しみにしているよ、レベッカ」


 そう呟くと、謎の人物はダンジョンから脱出した。


 こうして、四人はなんとかダンジョンから脱出して、焔石を手に入れることが出来た。


 そして、四人が脱出してから数時間後に、焔岩鉱山のあるレスピオ火山が三百年ぶりに噴火した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自然現象だったのですね。謎の人物の粘着質が変わらず素敵でした。バジリスクを引き付けて目当てのものをかすめとる戦法もとても良かったかと思います。尻尾をすらも楽しむ、そしてなんだかんだ応じてし…
[良い点] 無事に脱出して良かったですね。遅れていたらどうなったのか気になります。 ストーカーの動向も気になりますし。 [一言] 次の話も楽しみにしています!
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