ドラゴンを倒す方法
「こいつは僕が引き受けます。みんなは下がって!」
スクネは素早く古代竜に近づき足を斬りつけるが、硬い鱗に弾かれてしまった。
「攻撃が効かない!? なんて硬さなんだ!」
古代竜はスクネの攻撃に怒り狂って咆哮し、灼熱の炎を吐き出す。
「くっ!」
「気をつけて! 一人で突っ込むのは危険よ!」
サンディとルーシーが後方から防御魔法を唱え、スクネの前に竜の炎を防ぐシールドを張った。
「ありがとう、サンディさん、ルーシーさん」
「なんて威力なの? 二人でシールドを張ってるのに破られる寸前なんだけど!」
「ごめん、今ので魔力を使いすぎたわ。正直次の攻撃を防ぐのは無理かも──」
「スクネくん、攻撃は後回しだ。まずは彼女たちを守りながら広い場所へ脱出しよう! この狭い空間ではあいつの攻撃を回避出来ない。このままでは消耗していずれあいつの攻撃にやられてしまうよ!」
(このまま戦うとすれば一度屋外まで出るのがベターだけど、この遺跡の外は砂嵐が吹き荒れているからな。なんとか全員で逃げ出すか、逃げられないとしたらこの遺跡の中でなんとかするしかない)
「とりあえずここから離れるぞ! みんな走れ!」
レベッカは最奥部の空間の出入口を指差して三人に逃げるように促す。スクネたちは古代竜を警戒しながら全力で走り、四人は最奥部から脱出した。
「さすがにあのサイズではすぐにはここから出られないだろうね。さあ、今のうちにこの遺跡を出よう」
しかし、古代竜は咆哮をあげると、周囲の壁をその衝撃波で吹き飛ばして、四人を追いかけてきた。
「そんなのあり!?」
四人はとりあえず、先ほどの場所よりも戦いやすい広いホールのような空間まで逃走した。
古代竜は広い空間に来たことで、初めて炎以外の攻撃を繰り出してきた。特に鋭い爪を使った攻撃は強力で、スクネとレベッカは他の二人を庇いながら戦っていたので防戦一方になってしまった。
古代竜は容赦なく二人を攻撃し続け、上空から自身の身体を彼らに叩きつけるような強力な攻撃も繰り出した。
「うぅ、こんな化物、どうやって倒せばいいの? このままじゃ、私たち、全員殺されちゃうわ。殺される前に、何とか逃げるしか──」
「──もう逃げられないよ。怖くて身体が思うように動かないもの。私、まだ死にたくないのに」
サンディとルーシーは恐怖で身体が震えている。
「二人とも、心配するな。私が必ず君たちを守る。赤い流れ星の名は伊達じゃない」
レベッカは優しい声で二人に語りかけると、スクネの近くへと駆け寄った。
「戦いながら聞いてくれ。確かに、古代竜はまともに戦えばまず勝てない相手だ。でも、ギルドが討伐ランクを設定しているということは、逆に言えば実際に倒した人物がいるし、確実に倒す方法があるってことなんだ」
「言われてみれば。何か方法があるんですね?」
「ああ。基本的にドラゴンは前面にいる敵には強いけど、背面にいる敵には弱いんだ。背後への攻撃手段が、首を後ろに回して攻撃するか、尻尾を振り回すくらいしか無いからね。そして、そのどちらも出来なくなる首の付け根付近が、ドラゴンへの攻撃者にとっての安全地帯となっている。ドラゴンはそこに取りつかれると嫌がって、激しく振り落とそうとしてくるんだ」
「ドラゴンに、そんな弱点があったんですね」
「今から私があいつの首元に取り付いて隙を作るから、君がドラゴンを攻撃してくれ。でも、古代竜の鱗はとにかく硬いから、普通に斬りつけてはダメだよ。古代竜の鱗と鱗の隙間に剣を突き刺して、致命傷を与えるんだ」
「わかりました。お願いします」
「よし、みんな、目をつぶれ!」
レベッカは閃光の魔道具を使って古代竜の視界を奪うと、ドラゴンの背後に素早く回り込んで、竜の首の付け根に取り付いた。
そしてそのまま暴れる古代竜の鱗の隙間にナイフを突き立てた。
「グアァァッ!」
「今だ! スクネくん、トドメを刺してくれッ!」
「はい!」
スクネは高ぶる感情を抑え込んで、落ち着きを保ったまま、怯んだ古代竜の鱗と鱗の隙間に正確に剣を突き刺して致命傷を与えた。
「ガアアァァァァァッ!」
おぞましい叫び声を上げながら、古代竜は倒れ込んだ。
「スクネくん、よくやった! このまま入口まで一気に向かうよ」
四人は遺跡の入口へと走っていった。
◇◇◇
古代竜を召喚した人物は、レベッカたちの戦いの様子を気配を消しながら眺めていた。
「いいよ。いいねえ。その覚悟を決めた顔。その身のこなし。そして、仲間への的確な指示。ふふ、見てるだけでゾクゾクするよ。そうだよ。それでいいんだ。キミはそうやって最高の冒険者として活動していればいいんだ。それでこそ、ボクのレベッカなんだからね」
この人物は、四人がドラゴンを倒したのを見届けると、静かにダンジョンから立ち去った。




