頼れる同行者
スクネはエリシャからもらったリストを眺めていた。
「さて、どの素材から探そうかな──」
スクネはどの素材から探しに行くか決めかねていた。
「リストに地名が書いてあるんだけど、それがどこなのかいまいちよくわからないんだよなあ。とりあえずこの周辺の地図を手に入れないと──」
「どうやらお困りのようだね? 私が手伝ってあげようか?」
「あなたは!」
意外な人物が話しかけてきたのでスクネは驚いた。
「そんなに驚かなくてもいいよ。もう知ってるだろうけど、私はレベッカだ。あの後君たちが気になってね、様子を見にきたんだ」
(まあ、それが半分、もう半分は君たちの監視をしに来たんだけどね)
宿屋で別れた後も、レベッカとジェシカはマグナスの命令で三人を監視していた。
スクネがエリシャたちから離れたので、レベッカがスクネを、ジェシカがエリシャたちを監視していたのだ。
◇◇◇
「なるほどね。エリシャから素材集めを頼まれたのか。それでこれがそのリストってわけね」
レベッカは冒険者で、マグナスの使う素材を定期的に集めていた。そのため、彼女はリストの中に書いてある素材の入手方法を知っていた。
「見せてくれてありがとう。でもこれ、集めるのは結構大変だよ。入手するのに高等魔法が必須のものもあるし。君は魔法はどれくらい出来るの?」
スクネは、自分が魔法をまったく使えないことをレベッカに説明する。
「そうか、魔法が使えないのか。おそらく、それが君の能力の制約となっているんだろうね。強力な能力ほど、何かしらの制約がつくらしいからな」
(能力の制約か……それで母さんが歳を取らなかったり、魔法を使うとお腹が大きくなってしまうのか)
「残念だが、君に見せてもらったリストの中には魔法が使えないと手に入らない素材がある。エリシャが、君が魔法を使えないことを知らなかったんだろう。そこで提案なんだが、しばらく私と一緒に素材集めをしないか? 私もちょうどマグナス様が使う素材を集めたいと思っていたところなんだ」
「お願いしますレベッカさん。魔法が必須だと、僕一人じゃ集められませんから」
「よし、では私が魔法で君をサポートしよう。スクネくん、よろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
二人はがっちりと握手した。
「それじゃあとりあえず、このまま道なりに進んでベルグムンドという街に行こうか。そこの南にある砂漠に風の遺跡というダンジョンがあるんだ。そこの地下に潜ると君のリストに載っている風の魔鉱石という素材が入手出来るよ。でも、その前に君を冒険者ギルドに登録しないとね」
「冒険者ギルドにですか?」
「ああ、冒険者ギルドが管理しているダンジョンは、基本的にギルドに登録している冒険者しか中に入れないんだ」
風の遺跡には強力なモンスターが生息しているため、遺跡へ向かう道の途中に検問所が作られており、冒険者ギルドに登録している冒険者以外は立ち入ることが出来なかった。
「なるほど。ということは、その風の遺跡というダンジョンもギルドで管理しているってことですね」
「その通り。だからギルドに冒険者登録が必要なんだ。まあ、登録だけならすぐに終わるから心配しなくていいよ。私がいればね」
スクネとレベッカは、ベルグムンドに到着すると、すぐに冒険者ギルドへ立ち寄って、スクネの冒険者登録の申請をしてから、風の遺跡への通行許可をもらうことにした。
冒険者ギルドの受付に向かうと、受付スタッフの女性が声をかけてきた。
「わあ、レベッカさんだ。お久しぶりですねえ」
「ああ、久しぶりだねエレナ。元気そうで何よりだよ」
レベッカとギルドの受付スタッフのエレナは顔見知りだった。
「私、ずっとあなたに会いたかったんですよ。でもなんで、子供と一緒なんですか? ていうかレベッカさん、子持ちのママさんだったんですか?」
エレナはスクネを見て驚いた表情をしている。
「この子は私の子供じゃないよ。これから一緒に冒険しようと思ってね。推薦状を持ってきたんだ」
「えー、私だってレベッカさんと一緒に冒険してあんなことやこんなこと、いっぱいしたいのに。ずるいです。私ぷんぷんですよ、もう」
「そういうなよエレナ。冒険から帰ったら一緒に寝てあげるからさ」
「本当ですか!? ありがとうレベッカさん。私、今からめちゃくちゃ楽しみです。あんなことやこんなこともしちゃいますからね」
「ああ、わかってるよ」
すっかりと上機嫌になってふんふんと鼻歌を歌いだすエレナ。
そして、レベッカはスクネの冒険者登録の申請をした。
冒険者登録には、ギルドが定期的に開催する認定試験を受けて合格するか、高ランクの冒険者からの推薦が必要である。
今回は高ランク冒険者のレベッカが推薦状を書いてくれたので、スクネはすんなりと登録することが出来た。
「レベッカさんが推薦状を書くなんて珍しいですね。スクネくん、あなた、本当に幸せ者よ。レベッカさんは私たちのギルドでは伝説級にすごい冒険者なんだからね。本当だったらあなたなんて相手にされてないんだから。私だって一緒に冒険したことないのに。えーん、羨ましすぎるよー」
エレナは羨ましそうにスクネを見つめている。
「レベッカさんって本当はすごい冒険者だったんですね」
「そんなことはないよ。彼女が私を買い被っているだけさ」




