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呪いを解く方法

 アロウラとスクネはエリシャの準備したお茶とお菓子を食べていた。


「美味しいお菓子ですね」


「そうだろう? このお菓子は前にここにやってきたドロシーっていう子の好物だったんだ。だから今もこうして作っているんだ」


「さて、そろそろ本題に入ろうか。アンナの呪いを解くには、子移(こうつし)という方法しかないと思うんだ」


「コウツシ──ですか?」


「そうだよ。正確には解除ではなくて、呪いを別の対象に移動させるんだ。だが、これはあまりよい方法ではない。むしろ禁忌に近いやり方だ。なにせ、自分の腹に宿した胎児に、自身の受けた呪いを押し付けるんだからね」


「そんな──自分の子供に呪いの身代わりをさせるなんて」


「もちろん、そんなことをするわけにはいかないから、依代(よりしろ)と呼ばれる身代わりを作って、それに呪いを移すんだよ。私がその依代となる魔道具を用意するから、それに呪いを移動させるんだ」


「確かに、あまりいい方法とは思えません。本当にその方法しかないのですか?」


「アンナの受けた呪いは強すぎる。呪い自体を解くのはおそらく無理だ。残念だが、何かに押し付けるしかないよ。魔道具の代わりにあのクソ野郎の大好きな魔道獣を依代にする場合もあるんだが、それだと強力な呪いを受けた魔道獣が凶暴化して手に負えなくなるし、なにより彼女への負担が大きすぎるからね」


「私、そんなのは絶対に嫌です」


「ふふ、私も魔道獣は大嫌いだからそんなことは絶対にしないしさせないよ。ま、マグナスの奴があえて私を紹介したのは、あいつもそれを知っていたからだろう。ああ見えて、あいつはそういうところに気を使う奴なんだ。──魔道獣に手を出さなければ、いい親友だったんだがね」


 そう言うと、エリシャは棚から小さな魔道具を取り出した。


「私の作った超小型の人形型魔道具だ。これを依代にしよう。見てごらん、中に空洞の部分があるだろう?ここにアンナの髪の毛と爪を入れるんだ。依代の効果をあげるためにね」


「アンナの──いや、なんでもないです。私も手伝います」


 アロウラは何故か顔を真っ赤にしながら答えた。


「そうかい? それじゃ、お願いするよ。普通は、呪いが依代に移るのに1ヶ月はかかる。呪いが強力ならそれ以上だ。だから今回、どれくらい時間がかかるかはわからないよ」


「どれだけかかっても、私たちは待つわ。ねえアンナ、私たちが必ずあなたを元に戻すんだからね」


 アロウラはアンナの手を握りしめた。


「呪いの対象者から呪いを移された依代は徐々に大きくなって、完全に呪いが移行すると外に出てくるんだ。そうすればアンナから呪いは消えているはずだよ」


 エリシャは話し終えると、スクネの肩を叩いた。


「──スクネ君にはあまり聞きたくない話だったよね。聞かせてしまってすまないね。ああそうだ。待っている間、君には魔道具の素材を集めてきてもらおうかな。ちょうど、欲しい素材がいくつかあるんだ」


「わかりました。他に僕に手伝えることはなさそうですので、やらせてください」


「それじゃ、よろしく頼むよ。後で私の欲しい素材のリストを渡すからね。そこに入手出来る場所と入手方法も書いておく。入手難度が高いものもあるけど、ま、焦らずゆっくりと集めてくれればそれでいいよ」


「アロウラ、あなたには私の知識を教えてやるよ。魔道具のことや魔法のことで、私の知っていることを全部教えてやる」


「お願いします。エリシャさん」


 アロウラはエリシャに頭を下げると、スクネの顔を真っ直ぐと見つめた。


「スクネ、一人で大変だろうけど、がんばってね。でも無理はしないで。何かあったら、すぐに戻ってきなさい」


「うん、ありがとう、アロウラ。母さんのこと、よろしくね」


 返事の代わりに、アロウラはスクネのことを優しく抱きしめた。

 

 こうして、スクネ一人での素材集めの冒険が始まった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ケイトの呪いはすさまじかったのですね。人の心というのは、そういう得体の知れない強さを持っているものなのかもしれませんね。解呪出来ないというのが、とてもリアルで興味深かったです。アロウラさん…
[良い点] スクネが一人で立ち向かいますが、どうなるのか楽しみにしています!
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