ミリエラを取り戻せ!
ヴィランたちのアジトで、ケイトはミリエラと対面していた。
ミリエラの両手両足には枷がつけられている。
「弟がまさかあなたを好きになるとはねえ。ずいぶんとお楽しみだったようだけど、どうだった?」
「…………」
「何も答えないの? まあいいわ。私たちはこれからあなたたちのスポンサーを襲撃するの。あなた、私たちがあいつらに何をされたのか知ってたでしょう? なんで、あいつらと手を組んだのよ! 許せない! 許せないんだよ! 何故組んだ! 答えろミリエラ!」
「──この国を守るためには、そうするしかなかったのよ」
「私はね、あなたを尊敬しているの。だからこそ、たまらなくあなたが憎いんだよ! わかるか、ミリエラァーッ!」
「──取り乱してしまったわね。スポンサーの情報はもう手に入れたから、これからヴィランたちに彼らを襲撃させて、全員ここまで連行させるの。だって、あいつらは私の手で葬り去ってやらないと気が済まないんですもの。あなたはせいぜい、私の弟の機嫌を損ねないように気をつけることね」
◇◇◇
ヴィランたちのアジトはローゼンブルグの西の荒野にある。
マグナスからミリエラの居場所を聞き出した三人は、ミリエラの救出に向かっていた。
「ヨナの話だと、ミリエラを連れ去った男は完全に魔物化していたらしいわ。翼が生えてきて、空を飛んだらしいの。空を飛ばれると厄介ね」
「私たちは飛べないからね。上空の敵に攻撃を当てるのは難しいし、逆にこちらは上空から攻撃されると防ぐのが難しいわ。一方的に攻撃されてしまうかもしれない」
「ねえ、風の魔法を使うのはどう? さすがに暴風の中ではうまく飛べないと思うよ」
「さすがねクロウド。いいアイデアよ」
「まあ、試してみないとわからないけどね。やってみる価値はあるわね」
◇◇◇
アジトの入口に到着すると、中からヴォルフラムが出てくる。
「お前たち、ミリエラを取り返しにきたのか? 残念だな。お前たちじゃ今の俺には勝てねえよ」
「ずいぶんと自信があるのね」
「全身から力がみなぎってくるんだ。これが愛の力ってやつかなァ。とにかく、俺は今、最高に気分がいいからなァ! 邪魔する奴はみんな壊してやるよォォォ!」
「みんな気をつけて。こいつ、魔物化してハイになってるみたい」
アンナたちは戦闘態勢を取る。
「ウオオオオオオオッ!」
ヴォルフラムが雄叫びをあげると、周りの空気が震え出した。彼の全身からは禍々しいオーラが放出されている。
「ものすごい殺気と威圧感だわ! なんて奴なの!」
「こいつヤバい! 今まで戦ったどの敵よりも強いわ! だけど、こっちも負けられないのよ!」
「僕たちだって強くなってるんだ。お前なんかに負けてたまるか!」
「お前たち、魔法を吸収出来る武器を持っているんだってなァ。なら、これはどうだァァァッ!」
ヴォルフラムは自身の纏っているオーラをコントロールして、無数の矢の形に変化させ、三人の方向へと飛ばす。
「生体エネルギーをそのまま矢に変化した! みんな、これは魔法じゃないわよ! 気をつけて!」
「大丈夫、私に任せて!」
アロウラは風の魔法を使って飛んできた矢のオーラを一気に吹き飛ばした。
「なるほど。少しは出来るようだなァ。だが、これならどうだァァァ!」
ヴォルフラムは上空へと飛び上がると、空から三人に襲いかかってきた。
三人が素早く後ろへ下がると、ヴォルフラムはそのまま拳を地面に叩きつける。叩きつけられた地面から衝撃波が発生して、三人は遠くまで飛ばされてしまった。




