ミリエラァーッ!
「さすが姉さんだ。ここまであっさりと侵入出来るとはね」
ヴォルフラムはケイトの手引きで、簡単に教団施設の内部へと侵入することが出来た。彼はケイトから事前に情報を得ていたため、宇魅那が今、寝室で一人で就寝していることを知っていた。
「ま、部屋の入口に護衛はいるよな。騒がれると面倒だからしばらく眠っていてもらうとするか」
ヴォルフラムは部屋の入口に素早く近づくと、護衛が声を上げる前に彼女たちに睡眠魔法をかけて眠らせた。
「さて、姫様とのご対面だ」
寝室の内部に入ったヴォルフラム。
しかし──。
「女性の寝室にズケズケと侵入するなんて、とんでもない変態さんね」
ヴォルフラムの背後からミリエラが声をかける。
「読まれていたか。やるねえお姉さん。君がミリエラで間違いないな」
(オレンジ色の髪の男。どことなくケイトに似ているわ。ケイトの血縁の者か?)
「宇魅那様を狙ったことは万死に値する。生きて帰れるとは思うな!」
正面からは剣を構えたヨナが出てくる。
「まさかケイトが裏切るとは思わなかったわ。残念だけど、ここにお目当ての宇魅那様はいないわよ」
(ミリエラか──。こいつ、姉さんに似ていてかなりかわいいじゃねえか)
「あなたの身体を魔法で拘束させてもらったわ。こう見えても私、魔法は得意なの。もう逃げられないわよ」
ミリエラが魔法で具現化した黒いいばらが、ヴォルフラムの身体中を締め上げる。
「ああ、いいねえ。その落ち着いた感じ。姉さんに似ていて、最高だ」
(組織にこんないい女がいるなんて。知らなかったぜ姉さん)
「なあ、ミリエラさん。運命ってあるだろ? 俺は今、それを感じてるぜ。今ここであんたと出会えたのも、運命ってやつなんだってな」
(運命? 何を言っているんだこいつは?)
「決めた。俺は宇魅那の代わりにあんたをもらう」
(かなり強力な拘束魔法だ。思ったよりもきつく身体を締め付けてきやがる。こいつを解除するのには少し手間取りそうだ。その間にこの黒髪の女を相手にするのは面倒だな。だが──)
「俺はお前をもらうぞ、ミリエラァーーーッ!」
ヴォルフラムの欲望が、体内に寄生していた魔道獣を進化させる。そして、彼の身体は、完全に魔物化して、身体を締め付けていた黒いいばらを弾き飛ばした。
「拘束を解いただと!? こいつ!」
ヨナが前に出てヴォルフラムを剣で切りつけようとする。
「邪魔だァァァァァ――――! どけェェェェ女ァァァァ――――!」
ヴォルフラムは手のひらから黒い閃光魔法を放ってヨナを吹き飛ばすと、ミリエラを強引に取り押さえた。
「ぐあぁっ!」
「ぐぅぅっ! 大丈夫、ヨナ?」
「私はなんとか! でも、ミリエラ、あなたが!」
「私は大丈夫よ! 早く逃げて!」
「ハッハァー! 手に入れたぞォォォォー! お前はもう、俺のもんだァァァァァー!」
ヴォルフラムはミリエラに強引にキスをすると、雄叫びをあげながら背中に翼を生やした。
そして、閃光魔法で天井に穴を開けると、ミリエラを抱えたまま空へと飛び立ってしまった。




