動き出した黒幕
バリアントたちのボスのヴォルフラムはとある人物と会っていた。
「やあ、姉さん。そろそろ姫様に挨拶しに行こうと思ってね」
「ふふ、もう仕掛けるのかい? ヴォルフラム。まったく、あんたは我慢が苦手な子だよ」
「こういうのは早い方がいいんだ。あんまり遅いと対策する時間を与えてしまうからね」
「そうかい。それじゃ、こっちで手引きするから、しっかりとやりなよ」
「ああ、任せてくれ姉さん」
「宇魅那は奴らと手を組んだ。私たちをめちゃくちゃにしたあいつらとね。きつくお仕置きしてやらないと、私の気がすまないよ。もちろん、奴らは全員バリアントたちに捕獲させて、私たちの手で始末しないとね」
「ああ、宇魅那はきっちり脅してくるよ姉さん。奴らと手を組んだことを後悔させてやる」
「組織にいるミリエラって女には気をつけな。あいつはかなり頭が切れる。手強いからね」
「姉さんがそういうってことは相当だな。わかった。気をつけておくよ」
ヴォルフラムは組織のケイトと繋がっていた。
ヴォルフラム・ガードナー。
オレンジ色の髪の狼型の戦士で、元奴隷。
現在ミリエラの秘書をしているケイト・ガードナーとは実の姉弟だった。
二人は、組織のスポンサーたちが所有していた元奴隷だった。
ヴォルフラムたちの目的は自分たちを奴隷にした人間と、奴隷を使用している人間たちへの復讐。彼らの復讐の対象者をバリアントたちに拉致させて、始末するのが本当の計画だった。
そのため、組織のスポンサーたちも彼らのターゲットとなっていた。
ヴォルフラムは宇魅那を襲撃して、復讐対象の組織のスポンサーの情報を直接聞き出そうと考えていた。
「ヴォルフラムのやつ、欲望の世界を作るなんてのは建前で、本心はやはり復讐だったか。まったく、そんなことのために私の魔道獣を好き勝手に使うとはな──」
マグナスは特殊な魔道具を使い、二人の会話を盗み聞きしていた。
「──すでに三体も潰されたからな。相手を選別せずに、大したことのない人間に寄生させるからだ。もう、私が大事に育てた魔道獣たちを無駄死にさせるようなことは避けなければならない。私も勝手に動かさせてもらうぞ、ヴォルフラム」




