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エリシャとローラ

 三姉妹との戦いが終わってから、アンナたちは天才魔道具職人のエルフの痕跡(こんせき)をたどっていた。


 アンナがダウジングの対象をエルフ本人ではなく、このエルフに関係のある場所に変更したことで、いくつかの手かがりが見つかった。

 そして、彼女を知る何人かの人物を探し出すことが出来た。


 エルフの名前はエリシャという。

 彼女を知る人物は皆、エリシャは本物の天才だという。

 

 かつて、この世界の異なる種族間では言語の違いからコミュニケーションが難しかった。そこでエリシャは、頭部に装着して脳波を解析することで、言葉がわからなくても簡単なコミュニケーションが取れる魔道具を作成した。


 これによって、異種族の間でも簡単にコミュニケーションが取れるようになって、ローゼンブルグでは異種族間の交流が盛んになった。


 そして、彼女は魔道炉で生成された魔力を送信する魔道具の開発にも関わっていた。

 しかし、国王のバラキは彼女が作った魔力を送信する魔道具を、催眠効果のある魔力を送信して人々を洗脳出来るように悪用していた。


 それに嫌気がさした彼女は、この国を離れたのだ。


 アンナたちは組織に内通者がいるかもしれないという懸念があるので、組織には最低限の情報だけ報告することにした。


「おそらく、敵は私たちの行動を常に監視しているだろうけどね」


「気をつけて行動した方がいいわね。私も警戒を怠らないようにするわ」


◇◇◇


 かつてレオニードの師匠だった冒険者のローラと、エリシャは顔見知りだった。


「まったく、王妃が亡くなってから、国王のバラキはすっかり変わってしまったよ」


「王妃にそっくりな自分の娘に手を出しているという噂もあるじゃない。本当なのかしら?」


「さあね。だけど、私の作った魔道具をこんなことに利用されるとは思わなかったよ。私さ、この国のこと、結構気に入っていたんだ。だけど、今は心底嫌いになっちまったよ」


「エリシャがいっていた魔道炉から魔力を送信する魔道具だね?あれを悪用されたんだって?」


「ああ、せっかく世界定常波に魔力を乗せるようにしたのに、バラキのやつは送信される魔力に催眠効果を付与して、国民を強制的に洗脳してコントロールしようとしているんだ。そんなことをするようでは、この国はもう終わりだよ」


 この世界には彼女が世界定常波と呼んでいる魔力の波が存在した。これは、常にこの世界に存在している安定した魔力の波である。

 それに気づいた彼女は、この世界定常波に魔道炉で生成した魔力を乗せることで、国中に魔力を送信することを可能にしたのだ。


「ローラはこの国にいる女神に指定された魔物の討伐が終わって、次の国にいくつもりなんだろ? ちょうどいい機会だから、私もあんたと一緒にこの国を出ようと思ってね」


 ローラとエリシャは、まもなくこのローゼンブルグから出ていくつもりだ。


「まったく、こんなことになるなら、あんたにあげた魔道具と同じものをこの国の連中に渡さなきゃよかったよ。ところで、あんたの身体は大丈夫なの?」


「気づいてたの? まったく、あなたには敵わないわね。正直言ってよくないよ。もう長くはないだろうね」


「──治療の見込みはなさそうなの?」


「まあ、無理だろうね。自分の身体は自分が一番わかるから。だから私、女神様のミッションをクリアしたら、もっといい身体に転生してもらおうと思っているんだ。昔絵本でみた、ドロシーっていうかわいい女の子の姿にね」


「そうか。何か私に手伝うことがあったらいってくれ。いつでも手を貸すよ」


「ありがとう。エリシャはやさしいね」


 ローラはいつも自分を心配してくれるエリシャに感謝していた。


「そういや、あんたが拾ったレオニードってガキはどうするんだい? 一緒に連れていくの?」


「ああ、あいつは私とずっと一緒にいるとダメになるタイプからね。かわいそうだけど、置いていこうと思ってるよ。そろそろあいつを独り立ちさせたいと思っていたしね。後で、お別れの挨拶(キス)をしてくるよ」


「そうか。まあ、ローラがそう決めたのなら、そうしたらいい。そうだ。こいつをレオニードに渡しておいてくれ。私からのプレゼントだ。いつかあいつの役に立つ日がくるだろう」


 エリシャはとある魔道具をローラに手渡した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ローラとエリシャさんの気のおけないやり取りが、間柄が垣間見えて、安心して読み進めることが出来ました。国王のせいで、国が大変になった経緯もまた明らかになり、陰謀が壮大で読みがいがありました。…
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