怒りのソニア
彼女たちは、長女ベッキー、次女イザベラ、三女ソニアのキャンベル三姉妹。
三人とも、性的な興奮が高まることで、体内の魔道獣が活性化して、魔力の絶対量が跳ね上がる性質を持っていた。
「うふふ、魔法っていうのはこうやるのよ」
ソニアがお返しとばかりに禍々しい黒いオーラを纏った閃光魔法を放つ。
閃光魔法は、三つに分裂して、攻撃を回避するアンナたちをどこまでも追尾していく。
「ふふ、逃げ惑う姿もかわいいわねえ。回避してもどこまでも追い続けるからいずれ当たるんだけど、どうする? 今すぐごめんなさいするなら許してあげてもいいわよ?」
アンナたちは攻撃を何度か回避したあと、手に持っていた武器を前にかざした。
すると、ソニアの閃光魔法が、三人の武器に吸い取られるようにかき消された。
「えっ!?」
「ちょっと! 何が起きたの? 魔法が、消えた?」
三人が持っていたのは、アロウラが錬成した武器である。アンナのナイフ、スクネの剣、そしてアロウラの槍。これら全てに魔力を吸収する魔道具が素材として使われており、ソニアの魔法を吸収したのだ。
「どうやら、魔法が効かないのはあなたたちだけじゃなかったようね。あなたたちこそ、どうする? ま、私たちは逃がすつもりはないけど」
「何よそれ! そんなチートアイテム持ってるなんて反則じゃないの!」
「あなたたちだって、身体の中に魔物がいるんですもの、これでおあいこでしょ? それとも、魔法が使えないと私たちに勝てないのかしら?」
「ふざけるんじゃないわよ。魔法が効かないくらいで、あんたみたいなガキに負けるわけないでしょうが!」
(明らかに余裕がなくなっているわ。体術にはあまり自信がないようね)
「なら、試してみる?」
アンナが前に出て、ソニアを挑発する。
「落ち着きなさい、ソニア。私たちの方が体格がいいもの。魔法を使わなくったってそんなお子様に負けるわけがないわ」
「そうよソニア。私たちでお子様を軽く捻り潰してから、ウサギさんを倒せばいいの。三人で攻撃すれば、ウサギのお姉さんだって楽勝よ」
ベッキーとイザベラが熱くなったソニアをなだめる。
「ほら、きなさいよ。なんなら、魔法でバフをかけて、身体能力を強化してもいいわよ」
アンナはさらにソニアを挑発する。
「うっさいわね。あんたなんか、バフをかけるまでもないわ。私の爪で引き裂いてやるんだから!」
ソニアの瞳が赤く輝き、彼女の爪がかぎ爪のように鋭く伸びた。
(このガキの眼、あの嫌な客の眼を思い出す。上から人を見下すような冷たい眼。私はこういう眼をする人間が嫌いなんだ。絶対に許さないわ!)
「クソガキがぁ! 腹わたが見えるまで引き裂いてやるよおおお!」
ソニアは両腕を振り上げながら、漆黒の凶器となった自身の鋭い爪でアンナを切り裂こうと襲いかかる。
しかし、アンナは素早く横に移動して彼女の攻撃をかわすと、右足で彼女の足を後ろから素早くなぎはらった。
「えっ!?」
一瞬の出来事にソニアは対応することができず、体勢を崩して倒れこんだ。
アンナはすぐにソニアの上に移動すると、彼女の下腹にナイフを突き刺した。
「ぎゃあああああ!」
悲鳴をあげるソニアを気にもせず、アンナはそのまま腹を裂いて、魔道獣と呼ばれる魔物を引きずり出すと、炎の魔法で焼き尽くした。
「これで一人倒したわ。さあ、次はどっち? さっさとかかってきなさいよ」




