巨人の体内に侵入したアンナ
突然巨大なイバラ姫が出現したことで、ミリエラは驚愕していた。
「嘘でしょ。マスターが巨人になったなんて。あんなのとどうやって戦えばいいの?」
組織の人間が呆然と見つめる中、マスターは不敵な笑みを浮かべていた。
「ふふ、この大きさなら魔法の威力も桁違いだからな。一気にこの国を破壊してやるよ」
マスターは手から閃光魔法を繰り出した。
閃光魔法の通った先は、空気が震えて、全てが消え去っていた。
「なんて威力なの。こんなの、防ぎようが無いじゃない。私たちにはもう打つ手が残ってないの? 私たちはこのまま国が破壊されるのを見ているしかないの?」
ミリエラは絶望していた。
「ふふ、素晴らしい威力だ。このまま、私の魔法で全て消し去ってやるよ。例え避難したとしても、インフラが無くなれば生活は出来ないだろう? 死ぬのが少しだけ遅くなるだけだ」
巨人となったマスターは、この国の主要な都市が存在する方向へと閃光魔法を飛ばしていく。
閃光魔法は地平線の彼方まで飛んでいき、通過した場所にあった全てのものが消滅していた。
「これで主要な都市は大体破壊できたな。では、細かいところを破壊していくか。終末まで、ゆっくりと時間をかけて絶望を味あわせてやるよ」
「ずいぶん楽しそうね」
「なにっ!」
マスターは、聞こえるはずのない声が機械人形の体内から聞こえてきたので、驚きを隠せなかった。
「──お前、どうやってここに来た?」
「どうって、普通に下腹部に入口があったから、そこから入ったのよ」
アンナは隙をみて機械人形の下腹部から、内部に乗り込んでいた。
そして、内部から機械人形を破壊しようと考えていた。
「ふん、魔法で気配を消しているな。しかし、いくら気配を消そうが、触手が自動で侵入者を感知して排除するはずだ。私以外の者にあの触手の攻撃を対処できるわけがない。どうやってここまで入ってきた?」
「私もあなたと同じで、細胞が活性化しているの。超再生能力があるから無理矢理突破させてもらったわ」
アンナは内部にいるマスターの前に姿を現した。マスターの身体は無数の触手で覆われている。
「ならば、もう一度試させてもらおうか」
マスターはアンナの周囲に触手を出現させて彼女を攻撃する。しかし、アンナは即座に肉体を再生させると、逆に魔法で触手を全て弾き飛ばしてしまった。
「なるほど。確かに今の私と同じ能力を持っているようだ。まったく、思い通りにはいかないものだな──」
マスターはアンナを睨みつけた。
「私にはこの身体があるから戦って死ぬことはほぼないけど、外から巨人を相手にするのは面倒だからね。内側から破壊させてもらうよ」
そう話しながら、アンナは魔法で高速で回転する光の球を作り出し、素早くマスターの方へ投げつける。
投げつけられた光の球は急速に拡大して、機械人形の体内を押し広げていく。
「残念ね。これで終わりよ!」
(急速に膨張する魔法か! こいつ、やりやがった! 早く身体を分離しないと。この巨体のままでは再生が追いつかなくなりそうだ!)
アンナが巨人から脱出すると、すぐにマスターも触手を引きちぎって中から飛び出してきた。
そして、巨大な機械人形は内側から膨張し続けるアンナの魔法に耐え切れず、破裂するように弾け飛んだ。




