巨人になったイバラ姫
ローゼンブルグの南部には、古代に上空から降ってきた巨大な機械人形が封印されている。
イバラ姫の身体と一体化したマスターは、新世界を作るために、この巨大な機械人形を使ってこの国を一度リセットさせようとしていた。
「さて、そろそろこいつを起動させるか」
新型の機械人形たちが災害を発生させていた頃、マスターは巨大な機械人形の封印を解き、その力でローゼンブルグの国中を全て破壊しようとしていた。
この機械人形は現在、繭のようなもので覆われて眠っているような状態で、その見た目から「コクーン」と呼ばれている。
その周囲には、沢山の触手が自己防衛システムとして働いていて、近づいたものを無差別に攻撃していた。そのため、今までこの封印が解かれることはなかった。
マスターでさえ、イバラ姫の不老不死の身体を手に入れるまでは、近づくことさえできなかったのだ。
「試しに再生能力を持つ機械人形たちを取りつかせてみたが、すぐに魔力が切れて、壊されてしまった。やはり、ボクが自ら実行するしかないようだな。ふふ、この不老不死の身体を試す良いチャンスだ」
マスターがコクーンに近づくと、無数の触手が彼女に襲いかかった。
しかしマスターは、超再生能力を使って強引に触手を突破して、コクーンの開口部まで到達した。
「服を全て破かれてしまったか。イバラ姫の超再生能力が無ければ即死だったかもしれない。やはり母さんの能力はすごいな」
傷が全て再生した自身の身体を確認したマスターは、そのまま巨大機械人形のコクピットのような部分に入り込んだ。
しかし、すぐにコクピットの内部にも無数の触手が現れる。
「内部にまで触手を出してくるとはね。だが──」
無数の触手はマスターの身体に絡みつき、そのまま触手はマスターの身体と馴染みながら少しずつ身体の中へと侵食していった。
「ふふ、機械人形め、ボクの身体を奪おうとしているようだが、そうはさせないよ。逆にボクがお前を乗っ取ってやる」
そして、繭の中で、少しずつ時間をかけながら、巨大な機械人形とマスターの身体は一体化していった。
「ふふ、徐々にお前をコントロールできるようになってきた。もう少しだ。もう少しで私は神に等しい力を手に入れる。そして、この国を全てを破壊してやるんだ」
マスターと一体化した巨大な機械人形は徐々に外見を変化させていき、最後は完全にイバラ姫と同じ見た目に変化した。
今は、巨人のように大きなイバラ姫の身体の全身に漆黒のいばらのツルが巻き付いた姿をしている。
「この国の住民は、自分たちの都合で私を生み出しておきながら、不良品とみなして捨てたクズどもの子孫だ。全て消し去ってやらないと私の気が済まないからな。かつてこの国を救ったイバラ姫が、この国を破壊するんだ。こんなに面白いショーは他にないだろう?」




