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マテウスとミリエラの密談

 マテウスとミリエラが教団施設の隠し部屋で会話している。


「マテウス。私はね、大切なのは結果に至るまでの過程だと思っているの。あなたが信者から人気なのは、あなたが信者に対して真摯に向き合って話を聞いている姿をみんなが見ているからよ。マスターは結果しか見ていない。だから、純粋すぎるあなたと、マスターは合わないの」


「ありがとうミリエラ。でもね、マスターは初めから僕たちのことなんて眼中にないよ。あの人は、僕たちをチェスの駒くらいにしか思っていないのさ」


 二人は今後の対応を話し合っていた。

 かつて、この地域が終わりのない戦乱の中にあった時、片田舎の少女にすぎなかったイバラ姫が立ち上がり、その強い意志で人々を結束させ、現在のローゼンブルグを建国したという。

 そんな実在するかどうかもわからない伝説の英雄を探し出せという無理難題を押し付けられているが、これ以上マスターを怒らせるわけにはいかなかった。


「ミリエラ、僕はマスターが自信満々にイバラ姫を探そうとしているのは、今でも彼女が生存しているという確固たる証拠をつかんでいるからだと思っているんだ。マスターは、今も彼女は眠っていると言っていた。だから、イバラ姫は、どこかの遺跡でコールドスリープをしていると考えて、国内の遺跡をすべて信者に調べさせたんだ──」


「それでも、現在まで手がかりは無しってことでしょう?」


「ああ、その通りだよ。今後は、未知の遺跡を見つけ出して捜索するしかない。そう思って、各地の伝承や文献などをもう一度信者に調べさせようとしていたんだ」


「その最中にマスターに指揮権を取り上げられたってわけね」


 ミリエラはようやく納得したという顔をしてうなづく。マテウスはそんな彼女に頭を下げる。


「それで君に話がいったようだね。すまない。僕が不甲斐ないばっかりに君に迷惑をかけてしまって……」


「謝ることはないわ。あなたはよくやっているもの。私ね、信者の中で、ダウジングのような占いの能力に秀でている能力者を集めて、イバラ姫の居場所を占わせてみたの。ほら、やっぱり、ある程度目星をつけてから探した方が効率がいいからさ。そしたら、この国の北部の地域を指し示す回答が多かったのよ。だから、今後は北部を重点的に捜索することにしたの。この国の北部には鉱山があるでしょう。そこに今まで発見されていない未知の遺跡があるかもしれないし、大体の場所が絞り込めれば、捜索は大分進展するからね」


「相変わらず仕事が早いね君は。マスターが君を選ぶわけだ」


「それより、心配なのはメローネね。彼女、肉体的なダメージは無かったけど、精神的にかなりのダメージを受けているわ。それがわかっているのに、彼女の能力は代えがきかないから、任務に出さざるを得ないの。本当なら療養が必要なのに……」


「メローネはそんなにひどい状態なのか。出来ることなら休ませてあげたいのに……。彼女は僕たちにとって大切な存在だ。僕は信者はみんな僕の家族だと思っているんだ。一人たりとも危険な目に合わせたくはない」


 マテウスは表情を曇らせて、視線を落とす。ミリエラはそんな彼を優しく抱き寄せて慰める。


「優しいのね、マテウス。心配なら、あなたが任務についていくといいわ。あなた、マスターに自分がイバラ姫を探すって言っちゃったんでしょう? ちょうどいいわ。あの子、あなたが大好きだから、あなたが同行するときっと喜んで、精神も安定するはずよ」


「──すまない。僕の代わりに教団を、信者を守ってくれ」


「やるしかないもの。あなたの代わり、やってみるわ。その代わり、私のこと、いっぱい愛してくれる?」


 マテウスは返事の代わりに、ミリエラにキスをすると、そのまま彼女を押し倒した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これまた思わぬイチャイチャシーンが(笑)マテウスの一人一人を大切に思うメンタリティがとても素敵です。気配りの人、という感じがとても良く伝わってきて好感が持てました。この人たちと、アンナたち…
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