ウサギお姉さんのアロウラ
アロウラは、氷魔法の使い手。
彼女は、氷を使って自分と同じ大きさの人形を作り出した。
「流石に二対一では分が悪いからね。氷人形を作らせてもらったよ。さあ、私たちが捕まえてあげるわ」
彼女の作った氷人形は非常に魅力的な体形をしている。
胸が大きくグラマラスな彼女とほぼ同じシルエットと言ってもいい。
「クロウド、あんたは下がってなさい。こいつは私がやるわ」
「わかったよアンナ。気をつけて」
アンナはクロウドの前に出ると、手のひらに魔力を集中させて魔法を使う準備をする。
「一人で相手をする気なの? ま、いいけど、私の氷人形を舐めない方がいいわよ」
氷人形は素早くアンナの後ろに回り込むと、彼女を捕えるが、アンナは魔力を集中させておいた手のひらから氷人形に魔力を流し込んで、逆にコントロールを奪ってしまう。
(派手に魔法を使って皆を起こしてしまうと面倒だからね。少し地味なやり方だけど、これで自滅させてやるわ)
「え、なんで私の命令を聞かないの。ちょっと、アンナ、あなたが氷人形のコントロールを奪ったの!? こんなことできるなんて、私聞いてないわよ。ずるいわ! こんなのズルよ!」
想定外の状況にアロウラは焦っている。
「寝ぼけたこといってるわね。戦いにズルなんてないわ。ぼーっとしているあなたが悪いのよ」
そういうと、アンナは氷人形に更に魔力を注ぎ込んで強化する。
強化された氷人形にアロウラはなすすべがなく、後ろから身体を羽交締めにされた。
「離して! 離してよ!」
アロウラは手足を激しく動かして身体を引き離そうとしたが、強化された氷人形からは逃れることが出来ない。
(アロウラはとてもすごい魔法使いだって聞いていたのに、こんなに簡単に捕まえるなんて。やっぱりアンナはすごいな。僕も、アンナを一人で守れるくらい強くならなきゃ……)
アンナは羽交締めにされた彼女に近づくと、彼女の顔から仮面を外す。
仮面の下からは、ウサギのようなかわいらしい顔が出てきた。
彼女は魔素の影響で、ウサギの半獣人になりかけていたのだ。
「ああっ! 仮面を外すなんてひどいよ! 私の顔、見ないで!」
彼女は顔を背けながら叫んだ。
(仮面の下は初めてみたけど、魔素に耐性が無いと、ここまで魔物化してしまうんだ。知らなかった)
この里の住人は、魔素の影響で魔物化しているものが多く、その姿を晒すことを嫌って、常に仮面をつけて顔を隠して生活をしている。
だから、クロウドはアンナ以外の住人の顔を知らない。
「私たちを捕まえようとした罰よ。しばらくそのままの姿で反省しなさいな」