機械少女と魔法少女の激闘
「アンナから離れて。下がるわよ、クロウド」
「わかってる。僕たちがいると戦いの邪魔だからね」
アロウラとクロウドはアンナのそばを離れて、ホールの端まで移動した。
二人が自分のそばから離れたことで、アンナは魔法のシールドで攻撃を拡散することに集中することができた。
(少しだけ余裕ができた。二人とも、理解が早くて助かるわ)
アンナは攻撃を拡散する方向を少しずつ調整しながら、相手の魔法を分析していた。
(どうやら魔力を極限まで圧縮して威力を高めているようね。でも、それなら私にもできる。それ以外に威力を高めている何かがあるはずだけど、それが何かがわからない──)
「まあいいわ。そのうち魔力が切れるだろうから、それまで攻撃をかわし続けてあげる。当たらなければどうということはないって言うしね」
アンナはシールドを解除して、自身の身体能力を魔力で強化する。そして、ガーネットの魔力が無くなるまで、彼女の攻撃を避け続ける作戦に変更した。
しかし、ガーネットの魔力が切れることはなかった。
魔道研究所の内部には、小型の魔道炉が存在していて、ここで作られた魔力は魔道研究所内にたえず送信されている。その魔力を受け取ることで、ガーネットはほぼ無制限に魔法を扱うことができるのだ。
「こいつ、どこかから魔力を受け取っているようね。これではキリがないわ。かわいそうだけど、私の魔法で破壊させてもらうよ」
アンナは自身の周囲に無数の光球を作り出す。光球の光がアンナの顔を青白く照らしている。アンナはそれらの光球を操作して、ガーネットにめがけて一斉に送り込んだ。
(全ての方向から攻撃するから、まず回避することは出来ない。そして、一箇所に攻撃を集中して、一気に破壊させてもらう)
光球はガーネットを取り囲むと、一斉に彼女に襲いかかった。
しかし、攻撃がガーネットにヒットしそうになった瞬間、ガーネットの身体から虹色のオーラが展開されて、光球を全て消滅させてしまった。
「全身にシールドを展開したの!?」
だが、このシールドを展開するのに魔力を多く消費したのか、ガーネットの動きは明らかに鈍くなっている。
(今ので魔力の量がだいぶ減ったようね。どうやら周囲から吸収している魔力の量よりも魔法での魔力消費量の方が上回ったみたい。まあ、こっちも大分お腹に魔素が溜まって動きにくくなってしまったけど──)
先ほどの攻撃魔法を唱えた影響で、アンナも子宮に魔素が溜まりお腹が膨らんで動きにくくなっていた。
(今が絶好のチャンス! ──だけど、私ももう動きにくいし、お腹が限界に近いからあまり強い魔法は撃てないわ。どうしたらいいの?)
その時、お腹がパンパンに膨れて動けないアンナをみかねたアロウラがガーネットに近づいてきた。
「ごめんアンナ。約束破るけど、許してね」
アロウラはこの好機を見逃さなかった。
彼女は氷の魔法でガーネットの周囲に氷の壁を作って、ガーネットを閉じ込めた。
分厚い氷の壁がガーネットの周囲を全て覆いつくし、この壁は研究所内から送信されていた魔力を遮断する。
しばらくすると、魔力を失ったガーネットは活動を停止した。
「さすがね、アロウラ」
「しゃべらないでアンナ。すぐにスクネを呼ぶから。そんなにお腹膨らんでたら苦しくて動けないでしょう?今すぐ魔素を解毒してお腹をへこませないと──」
アロウラはクロウドを呼び寄せ、お腹がパンパンに膨れたアンナを助けるために、緊急で魔素を解毒することにした。
「クロウド、私とアンナと手を繋いだら、目をつぶって反対側を向いていてくれる? 大人にはね、子供には見られたくないことがあるの。わかってくれるわよね?」
「うん、わかってるよ」
「ありがとうクロウド。今度ハグする時に、いっぱいお礼してあげるからね」
アロウラはアンナに聞こえないようにクロウドの耳元でささやいた。




