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奮闘するクラウディア

 宇魅那たちは森の中を逃げまとっていた。

 ロイヤルガードたちはいなくなり、残っているのはクラウディアと宇魅那の二人だけになってしまった。


 後ろから大型の白いオオカミの魔物の大群が押し寄せている。


「クラウディア、もういいです。もう、私のために、命を、どうか、あなたの命を無駄にしないでください。私をおいて、あなただけでも……」


「宇魅那様、あなたがいなくなるとこの国はもうおしまいです。あなたはこの国の希望なんです。どうか、諦めないでください」


 クラウディアは自分の頬を叩き、気持ちを奮い立たせて、追ってきた魔物たちと応戦した。


「全身が痛い。もう腕の感覚が無い。目も霞んできた。それでも、動け。動け。動くんだ私。私がいなければ、誰が宇魅那様を、誰がこの国を守るんだ! 守らなければ。もう私しかいないんだ!」


(そう。ロイヤルガードはもう私しかいない。だからこそ、みんなの意思を無駄にするものか。今ここで、私が!)


「うおおおおお! 私が、私が宇魅那様を守るんだあああああ!」


 クラウディアは天を見上げながら咆哮をあげると、最後の力を振り絞って、魔物たちに切りかかる。宇魅那も魔法でクラウディアを支援している。


 しかし、残り数匹になるまで切りつけたところで、全身をオオカミの魔物に噛みつかれて、倒れ込んでしまう。


「ぐあああああ、ま、まだだ……ま」


「ああ、クラウディア! そんな……」


 クラウディアが倒れ、意識が飛びそうになる中、ある男の声が聞こえてきた。


「よくがんばったね。あとは……」


 クラウディアの意識はそこで途切れた。


◇◇◇


 次にクラウディアが目を覚ましたとき、彼女は簡易テントの中にいた。

 そして目の前には、優しく微笑んでいる中年男性の顔があった。


「気がついたかい?」


「ここは?」


「僕の張ったテントの中だよ。まだ街からは遠いからね。僕はレオニードだ。よろしくね。おっと、まだ動かない方がいい。僕は回復魔法が苦手だから、最低限しか君の受けた傷を治せていないからね」


「宇魅那様は? 宇魅那様はどこにいる!?」


 クラウディアは大声をあげながら周りを見渡す。


「ああ、彼女なら僕が助けたよ。そして今は僕の所属している組織で保護している」


「そうか。私は宇魅那様を守ることができなかったのだな……クソッ! 何をやっているんだ私は!」


 クラウディアは手を握りしめながら、不甲斐ない自分を悔やんでいる。


「そう自分を責めるなよ。君は最後まで宇魅那様を守ろうとしていたじゃないか」


「だが、守れなかったことは事実だ。私のために命を張って宇魅那様を守ろうとしてくれた仲間たちに、なんと説明したらいいのだ。私は、私は……」


「──聞いてくれ。僕は組織から命令されてずっと君たちを監視していた。そして、君が倒れるまで手を出すなと言われていたんだ。すまないね」


「謝らないでくれ。全て私が悪いんだ。私がもっとしっかりとしていれば、仲間を失うこともなかった。私には、隊長の資格なんて、なかったんだよ……」


 クラウディアは、自分の無力さを嘆き、自暴自棄になっていた。レオニードは、そんな彼女の手を取って、まっすぐに目を見つめながら話しかける。


「一つ提案させてくれないか。僕は上から君を見殺しにするようにいわれていた。だから、悪いが組織には君が死んだと報告させてもらったよ。でも、どうしても僕は君を助けずにはいられなかったんだ。だから、今日から君はクラウディアではなく、別人として生まれ変わってくれないか?」


「何がいいたいのかよくわからないな。私にはもう、生きる価値などないのに──」


「そんなことはない! ──実をいうと、初めて見た時から、君のことが気になって仕方がなかったんだ。君の新しい名前も、仕事も、必要なものは全部僕が用意する。そして、今度は僕が君を守ってあげるよ。一生ね。だから、僕のパートナーとして、一緒に働いてくれ」


「あなたの好きにするといいわ。私はもう、死んだようなものだから──」


 生きる気力を失いかけているクラウディアは、うつむいたまま答えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一見、素敵な救出劇ですが果たして。宇魅奈様もどうなったのか、この段階ではわかりませんし。レオニード氏とクラウディアさんの関係性が今後どのように推移していくのか、とても気になります。良い意味…
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