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よく分かんない作品集

ばーちゃんが名古屋弁を使うのが恥ずかしい名古屋人の僕

作者: 七宝

「名古屋駅にマシュマロを買いに行って、うちの不死鳥の炎で焼いて食べよう」


 今日の旅はばーちゃんのこの言葉から始まった。一宮市に住んでいる僕たちが、マシュマロのためにわざわざ名古屋まで行くことになるなんて。JRだと一宮駅から名古屋駅まで最短11分で行けるんだけど、一宮駅まではバスで行かなければならない。そこが大変なんだ。


「おみゃー今日学校はええんか」


 ばーちゃんは基本的に方言で喋る。僕はこの方言があまり好きではない。名古屋弁はかっこ悪いのだ。


「うん、今日は刃物を持った不審者が来る日だから行かなくて大丈夫」


 学校はいいんだけど、僕マシュマロ嫌いなんだよね。だからなんの楽しみもないよ、今日は。だいたいなんで焼くのよ。焼くと美味しくなるのだろうか。マシュマロが嫌いな人でも食べられるようになるのだろうか。


「おみゃー飴欲しいか」


 確かに電車旅だとあまり喋れないので、口が寂しく感じる。飴を舐めるのもいいかもしれないな。


「グレープかピーチの飴がいいな」


 だいたいみんな好きだよね。オレンジやレモンもいい。コーラ味もいいな、中にシュワシュワの粉が入ってたらなおよし。そういうガムもあったっけなぁ、懐かしい。


「あらすかそんなもん、ほれ、黒飴ねぶっとれ」


 なんでばーちゃんはいつも黒飴とかハッカ飴とかカンロ飴しか持っていないのだろうか。カンロ飴はまだ好きだからいいけど。


 ちなみに『あらすか』というのはアラスカ州のことではなく、『無い』という意味である。そして、『ねぶる』とは舐めるという意味である。この『ねぶる』という言葉が僕は嫌いだ。名古屋弁の中で最も嫌いと言ってもいいだろう。まず、響きが汚いのだ。『なめる』だと、ペロッ、という感じがするが、『ねぶる』だと、ベロチョスベッチョベッチョ! ペローーーーン! という感じがする。なのでこの単語を人前で言いたくないのだ。


 うん⋯⋯黒飴ってわりと美味しいんだね。でもわざわざ買って食べるものでもないかも。あずきバーも同じような扱いな気がする。ばーちゃんの家にあって、食べてみると美味しいけどわざわざ買わない。


「最近のわきゃ〜もんはまったく、ちょうすいとるなぁ」


 そう言うばーちゃんの目線の先では、金髪の高校生が座席に寝転がっていた。『ちょうすいとる』とは『調子に乗っている』ということである。


「不死鳥が寝てまうまでにきゃーらんとな」


 ばーちゃんってなんでペットのこと名前で呼ばないんだろうか。 うちだけ? ピーちゃんって名前があるんですけど。ピーちゃんは眠ると炎が消えるので、起きるまでマシュマロが焼けなくなってしまうのだ。なので寝てしまうまでに帰らないといけない。


『まもなく、名古屋〜名古屋〜、お出口は左側です』


 快速なので1駅なのだ。いきなり名古屋に着く。


「よし行こみゃあ」


 みゃあ系も嫌いだ。THE・田舎! って感じだからだ。選手の金メダルを噛んだことで騒がれていた河村さんだが、僕にとってはエセ名古屋弁のほうが問題だ。マジでやめてくれ。


「見やぁ小僧、どえりゃあきいない服着てりゃあすわ」


 小僧というのは僕の名前です。こぞうと読みます。ええと、通訳しますね、『とても黄色い服着てるね』と言っています。確かにそこにめっちゃ黄色い服着てるお姉さんいるけど。ばーちゃんは自分の声の音量が分かっていないのか、わりと大きめの声で人の話をする。


「ここで買おみゃあ」


 改札内のコンビニに入るばーちゃん。なんで名古屋来た? 僕もなんでわざわざ着いてきたんだ? 電車代無駄じゃん!


「あったあった。きゃーるか!」


 ええーっ! もう帰るの!?


「このまま行けばタダや」


 そう言うとばーちゃんは反対側のホームに行った。僕たちはそのまま一宮駅に戻った。


 さぁ帰ろう、とICカードをタッチする。


 ビーーーーーッ!


 あれ、あ! そうじゃん!


 駅員がこちらに向かってきている。やばい、怒られる。


「運賃ちょーらかすつもりやったんか!」


 ICカードの情報を見た駅員は怒った。入場時刻から、間違えて入ったわけではないのが分かったからだ。『ちょーらかす』とは『ごまかす』である。


 結局名古屋までの分と、帰りの分を支払った。焼きマシュマロは美味しかった。

 

 これ小説じゃなくて私の愚痴なのでは?

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