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099_修羅場の予感

「ほな、コンヨウのにいちゃん。ルクの事よろしゅう頼むさかい。」


「ルクちゃん、パフィちゃんの言う事、よう聞いてなぁ。」


スキル検証を終え、日の出と共にやって来たのはカウズ一家の家の前。

今日は3/4緑の日(水曜日)、ナプールに焼き芋販売に行く日だ。

そして昨日バン君に頼まれて、働き詰めのルクちゃんをナプールに連れて行って息抜きして貰おうという事になったのだけど、


「もう!ウチは大丈夫やさかい。」


「そうですよ。少なくともミルさんよりはいい子にしてますから。」


「コンヨウはん、それはちょっと…」


「せや、オカンと比べたら5歳児だっていい子やさかい。」


「ルクちゃん!ヒドイ!」


「ミル、そんなに落ち込まんでも、お前は俺の可愛いお嫁さんやさかい。」


「オト~~~ン!!あんただけや~~!」


「…さぁ、行きましょうか。」


こうしてダメダメオカンとそれを甘やかすダメダメオトンに見送られながら、しっかりモノの娘と共にナプールへと出発する。

出発の合図をするパフィさんの目がどこか遠くを見ていたけど、その気持ちよく分かるよ。


それから歩くこと2時間、やはり盗賊イベントやモンスター襲撃イベントは起こる事無くナプールへ到着。


「よぉ、今日はお前らだけか?それに新しい子もいるんだな。」


出迎えてくれたのはお馴染み黒豹の門番ナツメさんだ。


「お久しぶりです。この子はバックルさんの所の娘さんでルクちゃんって言います。」


「初めまして、ルクです。」


「そうか。お前らの連れなら大丈夫だろうけど、一応仕事だ。ルクちゃん。2、3質問に答えてくれるか?」


「はい、分かりました。」


ここでちょっと緊張するルクちゃんを余所に、ナツメさんはいつもの調子で質問と手荷物検査を行う。

僕らはそれに答えながら、最初は他愛もない話をしていたんだけど、だんだん込み入った事に話が移っていく。


「ところでこちらに出ても大丈夫なんですか?ズンダダの件で色々お忙しいと聞きましてけど。」


「その件での俺らの仕事はもう終わったよ。事務手続きはお前らのところのドクさんとマイト商業ギルドマスターが片づけてくれたし、ズンダダの根性無しはちょっと脅したらぺらぺら余罪を吐きやがった。

後は裁判所の仕事だが、間違いなく極刑だろうな。」


「それを聞いて一安心しました。プラム村の人達はもう大丈夫なんですか?」


「あぁ、借金の救済措置も大体完了した。その気になればいつでもあの村を離れられるだろう。」


「それって、賠償金についてもですよね。現在村にいないけど被害に遭った人はどういう扱いですか?」


「それについては少し時間が掛かるな。まずは村に在住の被害を受けた人達のケアをしてそれから賠償金を順次支払っていく予定だ。

正直額が凄まじい事になるだろうから、ズンダダの私財を没収しただけで追いつくかどうか。今は賠償金の配分について検討中だ。」


なるほど、色々大変そうだな。まぁあの禿デブの罪はプラム村だけじゃないだろうから。

多方面に賠償をしていたら、色々追いつかなくなるだろう。

おっと、いけない。パフィさんとルクちゃんを置いてけぼりにしてしまった。


「分かりました。ありがとうございます。それでは僕らはこれで。」


「あぁ、長々と引き留めてすまなかった。それじゃ、ルクちゃんも気を付けてな。」


「おおきに、門番のおじちゃん。」


「おじ…あぁ、お嬢ちゃん。」


「ぷふぅ…」


「コンヨウさん、笑っちゃダメですよ。」


身の程知らずにもルクちゃんにおじちゃん扱いされてへこむナツメさんを見て思わず吹き出してしまう僕。

まったく、いつまでもお兄ちゃん気分でいるとか…ごめんなさい、パフィさん。謝るからその路傍の石を眺める様な感情の無い目をするのやめて下さい。正直怒られるよりくるモノがあります。

さて、ナツメおじちゃんと別れた僕らはその足で孤児院へ向かう。


「おはようございます。クズミ様、ついでにスフィーダさんとその他大勢。」


「おはようございます。パフィちゃんと…新しい子かな。お名前は?」


「ウチ、ルクいいます。」


「そう、いい子ね。じゃあみんなも自己紹介しましょうか。」


「は~い。」


「僕、シカトされてるんだけど。」


「ドンマイじゃ、コンヨウ殿。」


「クズミさん、これはコンヨウさんの自業自得です。」


クソ!なんか僕に対する扱いが一段と雑じゃないかな。

僕を無視して話をドンドン進めるし。クズミ様、あなただけですよ。礼儀と言うものを知っているのは。


「まず俺だな。リーダーのバーナード、見ての通り犬獣人だ。」


「バーニー、知らない子に嘘吹き込むんじゃないわよ。私がリーダーで猫獣人のミーアよ。よろしくね、ルクちゃん。」


「初めまして、僕は馬獣人のホセと申します。麗しのお嬢さん、どうぞよろしく。」


「ったく、鼻の下のばしちゃって。これだから男の子って嫌なのよ。私は羊獣人のメリー。馬鹿はほっといて私と遊びましょう。」


「あの…僕、熊獣人のグレイって言います。仲良くしましょうね。(よし、この子と仲良くなってパフィお姉さんに良い所見せるんだ。)」


「ルクです。皆さん、よろしゅうお願いしますわ。」


おぉおおおおおおおおおぉぉおおおおお~~~~~!!!

ルクちゃんの天使の笑顔にガキども全員が色めき立つ。なんと言えばいいか…例えるなら推しのアイドルに会ったパンピーみたいな反応って言ったらいいのかな?

その様子に僕が首を傾げていると、


「無理もないですね。ルクちゃんってミルさん譲りの美人さんですから。」


「へぇ~、そうなんだ~。」


「…はぁ~、この人は。」


「コンヨウ君にこの手の話はまだ早いんでしょうか?」


「僕、記憶が欠けてるから獣人さんの美人云々がよく分からないんですよ。」


「う~む。前にも聞いたがそれは難儀じゃのぅ。」


「………」×2


どこまでも優しいクズミ様のお言葉とともに受けるどこまでも冷たいパフィさんとスフィーダさんの視線が痛い。多分、なまじ優しさを知ると世間の冷たさが余計に感じるっていうアレだね。

さてバカやってないで焼き芋販売に出かけますかね。


「じゃあ、僕らは商売に出かけますのでルクちゃんの事お願いします。」


「コンヨウ兄ちゃん、パフィお姉ちゃん。気ぃ付けてな~。」


「子供達の事はきちんと見ておくから、気を付けていくんじゃぞ。」


「いってらっしゃ~~い。」×5


今回、僕らが焼き芋販売している間、ルクちゃんは孤児院でお留守番。理由は近い年の子供と遊ぶ機会を設ける為。まぁ、遅くても15時には戻ってくるつもりだから観光はそれからという事で。

その時、ルクちゃんを見てもらうお礼として、遊び道具としてお手製トランプとすごろく(サイコロはスミスのジジイに木で作ってもらった)と、お昼用の『冷めない甘納芋』と食材を置いていく。

なんかスフィーダさんとパフィさんが物欲しそうにお芋を見てたけど無視。まったく、この食いしん坊女子どもは!

僕は後ろ髪引かれる大食い女子の尻を蹴飛ばし(本当に蹴ってないからね)ながら市場へと急ぐ。するとそこには、


「まだかな~。あの焼き芋が食えるって言うから来たのに~。」


「ねぇ!あの黒髪の人族の子。もしかしてこの間の店員さんじゃない?」


「じゃあ、もうすぐか!」


「クッソ~!早くしてくれよ~!俺この日の為に朝飯抜いて来たんだから。」


既に噂を聞きつけて行列が出来上がってるね。

ヤベェ~、僕の元販売員レーダーがまたしても非常事態警報をガンガンに鳴り響かせてるよ。

今回の戦力は3人…乗り切れるだろうか。


「パフィさん、スフィーダさん。覚悟は良いね。」


「わたくし、出来ればこのまま帰りたいんですけど…ダメですよね。」


「ダメです。ぼく達と一緒に地獄に付き合って貰います。」


「さぁ~、行くよ!バイト代、弾むからキリキリ働いて下さい!」


「…はぁ~、休憩時間は焼き芋20個お願いしますね!!」


こうして僕らはまたしても修羅場へと足を踏み入れるのであった。

そう言えば、リンガの人は甘いモノ好きだったね。スイーツが高いからこっちに来るわけだ。

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