096_これでも未成年なんだから
「どうしよう…もしかしてみんな怒ってるかな?」
「コンヨウさん。あんなこと言った後に情けないです。」
ドクさんの家で行われた会議の後の事、僕は若干へこんでいた。別に発言そのものには後悔はない。
でもあんな茶番に付き合わされた上にみんなとしなくてもいい喧嘩して、そのまま別れちゃったんだよ。
あぁ~みんな怒ってないといいけどなぁ。僕の小市民のハートが全力でビビってる。
そんなヘタレな僕にパフィさんが呆れた様子で話を振ってくる。
「そもそもコンヨウさんはなんであんな事を言ったんですか?」
「いや、ちゃんと外からの人間に対する自衛とかって必要だよね。今回の話だとどうもゼブラさんの知り合いっぽかったから私情とか色々ありそうだと思って。」
「流石にドクさんもいるのに下手な人は入れないでしょう。」
「いや、ドクさんも、というかこの集落の人達って全体的にお人好しだから情とかに流されそうだと思ったんだよね。」
「コンヨウさんが疑り深過ぎるだけだと思いますけどね…」
オカシイなぁ。僕は自分の身は自分で守るっていう基本的な事を説いているつもりなのに。
パフィさんの目が器の小さい人間を蔑むような感じになっている。まぁ、実際のところドクさんのおメガネに適う人ならだいたい問題ないとは思うんだけどね。
ゼブラさんが最初からその辺を説明しておけば僕だってごねなかったんだけど。
「それになんか隠し事されているみたいで、若干イライラしたっていうか…
大人達が僕に内緒で裏であれこれやってるのが透けて見えたから、ちょっとぶち壊しにしてやりたい気分になったっていうのはあると思う。」
「……」
流れる沈黙。呆けた表情のパフィさん。待つ事約10秒。
「ハハァ…」
「……」
えっと、なんかいきなり笑い出すパフィさん。そして今度は僕が間抜けヅラで黙り込む。
「ハハハハハァァアア~~!!オッカシイ~~~!ハハハハハァアア~~~~!!」
「ちょっ、何なのさ。いきなり笑い出して!!」
「いや!だってあのコンヨウさんが子供みたいに拗ねるだなんて!ハハァ~~!!」
「いや、そんな腹を抱えて全力で笑う事無いんじゃない。僕だってまだ成人前の子供だよ。」
「ごめんなさい…でも…ハハァ…はぁはぁ…お腹いたい…ハハァ。」
謝りつつ全く反省していないパフィさんにかなりイラっとした僕は、
「パフィさん、今日の晩御飯の焼き芋抜きね。」
その一言にパフィさんはこの世の終わりの様な表情をする。
「エッ!そんな~!コンヨウさん!横暴です!!」
「うるさい!焼き芋は僕のスキルなんだから僕の機嫌一つでどうにでもなるんだよ!」
「コンヨウさんの鬼〜!悪魔〜!童貞〜!」
「ちょっと!童貞は関係ないでしょう!ゼブラさんと一緒にしないでくれる!」
「悪かったな!童貞でよぉ~!」
あっ!そう言えばここってドクさんの家のすぐ近くだ。そりゃ今まで中にいたゼブラさんと遭遇しちゃうよね。なんか青筋立てながら怒っているけど、これは図星を指されて逆上しているね。全くこれだから童貞さんは~。
「すみません。20過ぎても童貞のゼブラさん。僕は未成年だからまだセーフですけど、ゼブラさんの場合アウトでしたよね。」
「ちょっ!コンヨウさん!」
「うるせぇ!この極悪人顔さえなければ俺っちだって!!」
「ちっ!強面の王子様がなに悲劇のヒロイン気取ってんだよ!クソが!」
「あぁ!テメェこそなにわけの分からねぇ事言ってキレてんだよ!分からせてやろうか!アァッ!!!」
「わぁ~~!暴力反対~~~!!」
「……さっきまでの遣り取りは一体。」
最近このシマウマ、口で勝てないと思うや、アイアンクローかましてくる様になってきた。大して痛くないけどやられるとイラっとする。
あの会議での険悪な雰囲気がまるでなかったかのように、いつも通りな僕らに呆れるパフィさん。
まぁ、僕自身も除け者にされた事以外はそんなに気にしてなかったし、向こうが気にしていないんだったらそれでいいんだけど。
僕とゼブラさんが一通りじゃれ合った後、ゼブラさんがバツが悪そうな感じで口ごもりながら話を切り出す。
「その~、さっきは色々と悪かったな。最初からお前にも相談しておけばよかった。」
「…どうしたんですか?悪いモノでも食べましたか?」
「お前なぁ~、こっちは真剣に話してるってのに!」
「こっちだって真剣ですよ!ゼブラさんが素直に謝るだなんて。童貞拗らせて気でも触れたんですか?」
「テメェ!さっきからやたらそのネタブッこんでくるけど、童貞に何か恨みでもあんのか!」
「るっせぇよ!この裏切者!もうすぐ童貞卒業するくせによくもぬけぬけと!」
「あぁ!そんな予定ねぇよ!さっきから何に対してキレてんだよ!」
「あくまでもしらばっくれるつもりですね。じゃあ教えてあげますよ。スフ「おっと、コンヨウさん。それ以上言ったらガスぶち込みますよ。」」
「ハイ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
(ガクブルガクブル…)
僕とゼブラさんの不毛な争いにパフィさんがとうとう激おこぷんぷん丸になったようだね。
笑顔で穏やかな口調のはずなのに超怖いです。僕は震える声で服従を示すしかないし、ゼブラさんもガクブルしてるし。
なんと言うか、男は女性に勝てないって事を心底思い知らされた瞬間だったね。
さて、くだらない事はこの辺にして、パフィさんに怒られない様な話をしないと。
「ゼブラさん。これからプラム村に向かうんですよね。」
「あぁ、今回の事で色々と甘かったって分かったしよ。ちょっと届け物がてら村の人達ともっとしっかり話をしようと思ってな。」
「そうですか、それじゃ景気づけにこれ食べてから行ってください。」
そう言って僕がゼブラさんに手渡したのは『紅乙姫(スキル強化付与)』だ。
それを受け取ったゼブラさんはちょっと訝しげな様子でそれを完食する。
「ゼブラさん。ちょっと自分のスキルの状況を確認して貰ってもいいですか?」
「ん?いいけど……コンヨウっち!テメェ!何しやがった!」
「その様子だと成功みたいですね。どう変化しましたか?」
「コンヨウさん…またやったんですね。」
どうやらスキル変化は成功したみたいだけど、ゼブラさんはキレ出すし、パフィさんは呆れて遠い目をするし。まったく、良い事したはずなのに、なんて理不尽な扱いなんだ。世の無情を感じるねぇ~。僕がレ・ミゼラブルな気分になってる所にゼブラさんの返答が届く。
「まず、『マジックバック100倍100分の1』が『1000倍1000分の1』に、『高速移動』が『高速移動(亜音速)』に、最近覚えた『スタミナ』が『永久機関』になってるぜ。」
「コンヨウさん、これって…」
「うん…かなりヤバいね。」
ゼブラさんもパフィさんも名前だけでヤバい事が分かったみたいだ。一応状況確認しないと…
「あのゼブラさん、元々の『高速移動』では時速何キロくらいで走れましたか?」
「ちょっと分からねぇけど、こことナプールを片道10分以内で行き来できるぜ。」
集落からナプールまで大体10キロだから最低でも平均時速60キロ以上、多分最高時速は100キロくらいだろう。
『マジックバック』の効果が10倍になってる事を鑑みるとおそらく『高速移動』も効果は10倍。つまり時速1000キロ、まさに亜音速だね。
そして『永久機関』でスタミナ切れ知らず。マジでヤバいね。
これってゼブラ運輸のゼブラトラックがゼブラ空輸(飛ばないけど)にレベルアップしたって事だよね。
我が集落はこの中世の文明レベルの世界において大量高速輸送を手に入れてしまった。バレたら国とかに狙われて面倒くさくなる奴だね。
まったくエレフさんといいゼブラさんといい、もうちょっと加減と言うものを…
「言っとくけどお前のせいだからな。」
「ゼブラさん。心を読まないで下さい。」
「コンヨウさんがくだらない事を考えている事くらい、ぼくにでも分かりますよ。」
読心術使い二人による無情なツッコミが僕のハートに突き刺さる。なおダメージは無い模様。
さて、現状を正しく認識するために二人に僕の分析を説明しますかね…
「…と言うわけです。」
「ただでさえデタラメだったゼブラさんの輸送能力が100倍ですか。」
「……」
「これは絶対に秘密ですね。」
「だね。」
「…コンヨウっち。お前の『スキル強化芋』についてもだ。『芋文』抜いてぶっちぎりでヤバいわ、それ。」
新たに手に入れた力に当人達が一番ビビるのであった。よし、今他人事の様な顔をしているパフィさんも、その内こっち側に巻き込もう。




