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095_大人達のため息

「すまねぇ、みんな。今回の件は俺っちに任せてくれって言ったばかりに。」


「…いや、ゼブラさんばかりを責められないね。私もフォローの方向を見誤ったみたいだし。」


「そうね。しかし容赦なかったわね。まさかあんなに手厳しくやられるとは思わなかったわ。」


「コンヨウ君は~こういう事に関しては~自分にも他人にも厳しいからね~。」


「俺もフォロー出来ればよかったんやけど。どうやらコンヨウのにいちゃんの事を甘く見ていたみたいや。」


会議の後、大人達は意気消沈していた。

今回の出来事で彼等はコンヨウからの信用を一段落とす結果になったからだ。

彼等は全員ゼブラの事情を知っている。彼はプラム村の事件がきっかけで権力への不信感から元いた衛兵の職を辞している。今回の彼の動機はプラム村の住人へのささやかな罪滅ぼしだったと言って差し支えない。

だがコンヨウから言わせれば、彼は私情で集落に危険を呼び込む可能性があったのだ。

その事をゼブラも分かっていたので、最初にコンヨウに相談出来なかったわけだが、今回はそれが完全に裏目に出た。あからさまに落ち込むゼブラに、


「ゼブラはん。そう気を落とさんと。別にコンヨウのにいちゃんはあんさんに愛想尽かしたわけじゃないんやから。」


「まぁ、無理もないわね。ゼブラは2回目だからね。もっともあの子はどっちも大して気にしてないでしょうけど。」


「でも他人事じゃないよ~。あれでコンヨウ君って凄い根に持つタイプだから~。」


「そうだね。あの子は恩も仇も10倍くらいにして返してくるからね。」


「みんな、俺っちを慰めたいの?それとも追い打ちを掛けたいの?」


4人の言い草にさらに落ち込むゼブラ。そんな彼の様子にドクが慌てて話を切り替える。


「コンヨウ君に関しては今後の行動で信用を取り戻すしかないって事で、今はプラム村のみんなの受け入れについて考えよう。」


「そうね。ゼブラ。いい加減へこんでないで状況を話しなさい。」


ドクとネイチャンに促されたゼブラが、気持ちを切り替え状況を語りだす。


「分かってるよ。まず村人の内、移住希望者は10人。全員極度の疲労と栄養失調の傾向有りだ。

こっちには歩いて来るのは困難だろうから、俺っちが轢く荷馬車に乗せて連れて来る予定だ。」


「馬とかは使わないの~?」


「俺っち御者はやった事が無いんだ。だって馬より俺っちの方が早いから。」


「確か荷馬車の重量も100分の1に出来るんやったか。」


「あぁ。集落についたら暫く休んでもらって回復具合を見ながら、適正にあった仕事についてもらうつもりだ。」


「家の準備をしないといけないね。」


「健康診断もね。移動当日は私もそちらに行っていいかしら。」


「あぁ、助かるぜ、ネイチャンさん。」


「こっちの準備が整うまでは別の場所で療養してもらう必要がありそうやな。」


「取り敢えず今月中は有休って事で部屋から追い出される事はないらしいけど、出来れば早く移動させてやりたい。あの人達にとってあそこはもう辛いだけの場所になっちまったからな。」


「分かったよ~。僕の方でも差し入れとか作るから~食べさせてあげてくれるかな~。」


「おっ!ありがたい!経費は俺っちが持つぜ。」


「半分でいいよ~。その代わり試作品だから味の感想よろしくね~。」


「あとは……」


「……そこは……」


こうして着々と新しい村人の受け入れ計画の内容が決まっていく中、


「ねぇ、ゼブラ。あんたにちょっと聞きたかったんだけど、なんであの時プラム村の人達のスキルについて言及しなかったの。」


「せやな。その人達の中に有用スキルの使い手がいれば売り込み出来たやろうし、あの子最近役に立たないと思うてたスキルの開発とかやってはるし。」


「むしろ、あの子はよく分からないスキル持ちの方に興味を持つと思うよ。」


皆は最近のコンヨウの行動を鑑みて、新しい人間を入れる事の有用性を説くことを持ち出したのだが、これにゼブラは少し考える素振りをしながら応じる。


「…これは多分、俺っちのエゴなんだろうけど、スキルで差別するみたいになって欲しくなかったから、かな。」


「つまり、スキルの有用性やレアリティで待遇に差をつけたくないと。」


「あぁ、俺っちがスキルの恩恵を受けまくってるからだろうけど、案外優遇させる方もそうじゃない方もしんどいんだ。」


そう語るゼブラの表情が愁いを帯びる。


「せやな。ここではみんなやるべき事をしっかりやってるんやから、その分恩恵を貰う権利はあるって事やな。」


「能力による報酬の差はあってもいいけど、それが人間関係の序列になって欲しくねぇんだ。」


ゼブラはそのスキルのおかげで輸送部隊の一員として多大な成果を上げ、そのまま宮仕えを続けていれば立身出世が約束された男だった。

当然スキルだけではなく、本人の努力もあったのだが、その事に関して見てくれる人間などごく一部。大抵の人間は嫉妬から、スキルに恵まれただけで出世した鼻持ちならない奴、という風にゼブラを扱う。

ゼブラは新しく入ってくる住人に対して、スキルの色眼鏡を掛けて欲しくなかったのだ。


「でも今になって思えば、これは悪手だったな。ここは普通の街じゃねぇ。モンスターがうようよいる人外魔境なんだ。

こんなところで生きていこうと思ったら、全員が自分の力を十全に活用しないといけねぇんだ。

つまらない拘りで能力をひた隠しにするなんて、コンヨウっちが看過するわけがない。」


「そうだね。それにコンヨウ君なら例え本当にスキルが役に立たなかったとしても見捨てたりはしないだろうね。」


「ドクさんの言う通りだな。結局俺っちが一番みんなをスキルで差別してたのかもな。」


「それじゃ、やる事は決まってるわね。」


「あぁ、ひとっ走りプラム村に行って、物資を運ぶついでにみんなのスキルを確認してくるわ。」


そう言い残してゼブラはその場を後にする。

その背中を見送る年長者達の顔が思わず緩む。


「いやぁ~、若者の成長はいつ見てもいいモノだね。」


「ドクさん、オッサン臭いわよ。」


「私は老いぼれではないけど、自分が若者だと見栄を張ってもいないからね。」


「しかし年長者はたいへんやなぁ。正解が分かってても敢えて答えんようにせなあかんのやから。」


「ゼブラさんが相談に来た時~正直ため息をつきたくなったよ~。コンヨウ君に直接言えば済む話なのにね~。」


今の年長者達の話からも分かると思うが、今回の会議の大きな目的の一つはゼブラが抱えているスキルに対する考え方を見つめ直させる事にあった。何とか目的を達成できた事にホッと一息する4人。


「ゼブラはあれでまだまだガキンチョだから。きっとこの相談をコンヨウ君に持ちだしたら、彼のスキルをあてにしているみたいで嫌だったんでしょう。

住民が増えるって事はあの子の役割がますます大きくなるってことだから。」


「そうだね~、最近のコンヨウ君はお芋以外のレシピも教えてくる様になったし~。

多分集落における自分の役割を減らしたいんだと思うよ~。」


「あの子にも分かって欲しいものだね。スキルなど関係なく私達はコンヨウ君が必要だという事に。」


「はぁ~~~~。」×4


もう一人の少年についてはまだまだ手が掛かりそうだ。

悩める若者達の成長を眺めつつ、まだまだ自分達の苦労は絶えない事に思わずため息を吐く年長者一同であった。

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