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094_緊急集落会議

「ではこれより、緊急集落会議を始めたいと思います。」


これはラスカリ姉妹のスキルが判明した次の日、3/2橙の日(月曜日)の昼の事。

僕とパフィさんはドクさんのウチに呼び出しを受けた。何だろう?もしかしてエレフさんやラスカリ姉妹の事で派手にやっちゃったからお説教かな。

そんな感じで久しぶりに小市民モードでビクビクしながら予定の5分前に到着したんだけど、


「コンヨウ君、パフィさんいらっしゃい。入ってくれるかな。」


またしてもノックをする前にドクさんから入室の許可が下りる。この久しぶりの遣り取り、なんだかほっとするね。

ドクさんの声に従っておウチにお邪魔したわけだけど、先客がいたようだね。


「よぉ、コンヨウっち。お前が最後だな。」


「こんにちは~、コンヨウ君~、パフィちゃん~。今日は冷蔵庫でお芋アイスを作ってみたんだ〜。」


「エレフさん、それは会議が終わってからにしましょう。二人とも、早く席につきなさい。」


「せやで。俺はこういうの苦手やさかい、さっさと終わらせたいんやから。」


この場にいるメンバーはドクさん、ゼブラさん、エレフさん、ネイチャンさん、バックルさん。

ある意味集落の主要メンバーと言える人達だ。う~んなんで僕が呼ばれたのかな…あっ!パフィさんが防衛部隊長だからか!

という風に考えながら席に座ったんだけど、


「言っとくけど、お前はこの集落の最重要人物だからな。他人事みたいなツラしてんじゃねぇぜ。」


またしてもゼブラさんが僕の心を読んで疑問に答えてくれた。

返答内容はいまいち賛同致しかねるけど、話が進まないのでスルーの方向で。

なんかドクさんが苦笑いをしながら、冒頭の言葉を口にする。


「えっと、会議はいいんですけど、議題は何ですか?」


僕は早速とばかりに疑問を口にする。なんせ僕は何も知らされずにここに来たわけだから。

その質問に答えてくれたのはゼブラさんだ。


「今回、みんなに集まってもらったのは俺っちから、とあるお願いがあるからだ。」


その表情は真剣そのもの。全員がゼブラさんに注目する中、重々しい雰囲気で口を開く。


「先日、ズンダダを捕らえた際に判明した事なんだけど、奴はとある村のリゾート化に関与していて、その時に詐欺的な手法で住民から土地を騙し取った上に、奴隷の様に働かせていたんだ。」


ん、なんかこの話前に聞いたような、


「それってもしかしてプラム村だったりしますか?」


「…そうだ。知ってたのか。」


やっぱり、ラスカリ姉妹が元々住んでた村だ。でもどうしてそんな事をゼブラさんが?

他のみんなの様子から察するに前もって知ってたみたいだけど、有名な話だったりするのかな?

おっと、ゼブラさんが話を続けるぞ。


「今回俺っちがお願いしたいのは、この集落へのプラム村住人の受け入れだ。」


「…一応だが理由を聞いてもいいかな。」


ここで議長のドクさんが努めて平坦な口調で話を促す。


「まずあの村の現状なんだけど、今回ズンダダが捕まった事で借金は帳消しになった上に賠償金も支払われる事になった。

だが今までヒドイ環境で働かされていたせいで心身衰弱しているうえに街の人間に対して強い不信感を抱いている。きっと今すぐ街で生活するのは難しいだろう。だから本人達が希望するなら一時的にでも受け入れてやりたい。」


………


「それにプラム村はアライグマのラバール一家の故郷なんだ。あの一家は残された村の人達の事を心配していた。その不安を少しでも取り除いてやりたい。」


…………ここで暫しの沈黙。

ゼブラさんが話終えたのを確認すると、ドクさんがため息をつきながら厳しい口調で言い放つ。


「ゼブラさん。私の質問に答えてくれるかな。私はあなたの理由の聞いたのだよ。」


その咎めるような口調に場の空気が凍り付く。そこへドクさんが僕の方を向き直ってこう問いかける。


「今のゼブラさんの態度だが私は遺憾に思っている。自分の本音を晒さずにこちらに重大な事を願い出ようとしたからだ。コンヨウ君はどう思うかね。」


ゼブラさんを叱責しながらの僕に話を振るドクさんに思わず…


…ため息が出た。


「はぁ~…ドクさん。そんな本音が云々はこの際どうでもよくありませんか?」


「なぁッ!」


「ちょっと!コンヨウさん!」


まったくこのお人好しはどこまで甘いんだか。僕の一言に今度こそ本当の意味で場の空気が凍る。

パフィさんが咎める中、僕は冷めきった頭でこの場の全員に言葉を投げかける。


「僕らは別にお友達じゃないんです。だからゼブラさんのお友達のお友達の事なんて正直僕には知ったこっちゃないんですよ。」


「!!!」×6


どうやらこの集落に長い事居すぎてしまったみたいだね。みんなの中の仲間意識が友情(・・)なんていうくだらないモノに変わりかけていたみたいだ。


「ゼブラさん。僕を納得させたいなら()ではなくメリット(・・・・)を提示して下さい。」


「……」×5


まったく腹立たしい。僕がこう言う事くらい分かり切っているはずなのに。

おそらくドクさんの計略は敢えてゼブラさんを叱責して本音を言わせる事で僕の情に訴えようとしたんだろう。だからドクさんがゼブラさんを叱責している時のみんなの反応がいまいち鈍かったんだ。

そして僕が拒絶を口にした時は明らかに動揺していた。おそらくパフィさん以外は全員前もって話を聞いていて賛成していたんだろう。パフィさんはあの通りお人好しだから事情を聞けば賛成するだろう。そうなれば後は僕の賛成を取り付ければ満場一致になる。

この会議は僕の賛成を取り付ける為の会議だったわけだ。さて、そんなふざけた目論見をぶち壊してやりますかね。


「ではゼブラさん。最初に確認ですけど、その人達はこの集落にとって何か有益なものをもたらしてくれるのですか?」


「……少なくとも労働力は増える。」


「弱いですね。それに劣悪な労働条件で酷使させられた人間をまた働かせるんですか?僕にはそんな酷い事は出来ません。」


「くっ!」


「次に、その人達がこの集落の秘密を守れるんですか?」


「それは…しっかり口止めする。」


「それを当人達を見た事もない僕に信用しろと?」


「責任は…俺っちが持つ。」


「今しがたこちらの信用を失うような事をしたあなたに?」


「ちょっと!コンヨウさん!あんまりです!」


「パフィさんは黙っててくれるかな。今はゼブラさんと話している最中なんだ。」


今が正念場なんだ。僕らが真の意味で信頼し合えるビジネスパートナーになるか、友情と言う名の綺麗事にもたれ掛り合うだけのお友達になるか。

この集落は訳ありの人間が多すぎる。そんな中に外からの人間を迎えるという事は秘密が外に漏れる危険を孕むという事。それはいずれ僕ら全員の首を絞める事になりかねない。もしここで友情を取るなら僕の役目はそれまでという事だ。


…………長い沈黙が部屋を支配する。


ここまでか。僕が席を立とうとした瞬間、


「メリットなら…あります…」


僕の左隣から震える様なパフィさんの声が届く。意外なところからの意見に僕が呆気に取られているとパフィさんが青い顔をしながら必死に言葉を紡ぐ。


「まず、この場の全員に貸しを作れます。」


「えっ?」


「だってそうでしょう。みんな、ぼくとコンヨウさんを除け者にして勝手に話を進めようとしたんですから。」


「……」×5


パフィさんの責める様な口調に大人5人が思わず黙り込む。


「次に、彼女が出来ます。」


「えっ?誰?」


「ラクスさんです。彼女は元々コンヨウさんに好意を持ってますし、ここで村人を受け入れて器の大きさを見せれば、いくら本当は器の小さいコンヨウさんでも惚れてくれると思います。」


「いや、パフィさん、酷くない?」


「酷くありません!それでも不服ならぼくも彼女になってあげます。」


「パフィさん、そういう事はもっと考えて発言しようね。」


「なんですか!可愛い彼女が二人も出来るのに不服なんですか!」


「パフィさん…言ってる事滅茶苦茶だよ…じゃあ新しい人達が秘密を漏らす危険性については?」


「それは多分大丈夫です。カリーナさんが『私達って村ではアイドルでしたから、ちょっと上目遣いでお願いすれば、大抵の事は聞いてくれるんですね~。』って言ってました。」


「あの腹黒妹、碌な事してないな。」


「ラクスさんは天然系アイドルでカリーナさんは養殖系アイドルだそうです。」


「でしょうね!!」


「でも彼女が信用しているのなら信用してもいいんじゃないでしょうか。」


「まぁ、今のゼブラさん達よりかは信用出来るね。」


「……」×5


今度は僕の責める様な口調に大人達5人が黙り込む。


「それじゃ最後に、受け入れた村人自身がもたらしてくれるメリットは?」


「そんなの知りません。」


「はぁ!」


僕はパフィさんの一言に口をあんぐりと開けて思わず声を漏らす。


「だってそうじゃないですか。その人が役に立つかなんて本人が役に立とうとするかどうかで決まります。本人にその気がないならその時にさよならすればいいだけです。」


「…ごもっともだね。デメリットが小さいならメリットになる可能性を考慮してもいいって事かな。」


「難しい事はよく分かりませんが、ゼブラさん達に貸しを作れて、ラスカリお姉さん達が喜んで、新しい人達が役に立ってくれるかも知れないならお試ししても悪くないと思う、ってだけです。」


「酷い論法だね。でもあの大人共のプレゼンよりかはよっぽど魅力的だ。」


「それじゃ!」


「僕も賛成に票を入れるよ。」


まぁ、この辺が落とし所かな。パフィさん、よく頑張ったね。みんなもホッとした表情になってるし、これ以上ごねても何もいい事はなさそうだ。でも一つ分からないことがある。


「ドクさん。一つ聞いてもいいですか?」


「何かな?」


「どうしてわざわざ僕に了承を取ろうとしたんですか?」


そう、これが分からない。僕が了承するしないは大した問題じゃない様に思うんだけど。

僕の問いにドクさんが特大級のため息を吐く。


「はぁ~~…もし了承無しで外からの人間を引き入れようとしたら、君はどうするつもりだったのかい?」


「……こちらに害がありそうな相手なら僕が()()()()してたでしょうね。」


………僕の返答に場は重い沈黙に包まれる。

流石に害のある相手だった場合、『排除するつもりでした。』とは言えないからね。


「取り敢えず、今回の件でドクさんにナプールで作った借りはチャラという事で。それから皆さん、パフィさんに借り一つずつですからね。」


「…分かったよ。」


「それでは僕は失礼します。エレフさん、アイスは後でおウチに取りに行きますので。」


「うん~、分かったよ~。」


「あっ!コンヨウさん。待って下さい!ぼくも行きます!!」


こうして僕とみんなの間にひと悶着あったけど、今回に関しては後悔はない。

だってみんなちょっと自衛の意識が低すぎるから。こんな事じゃ僕が()()()()()()時にやっていけるか不安になっちゃうよ。

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