093_まさかの異世界洗濯屋
「では改めて、今度はカリーナさんのスキル検証をしていきましょう。」
「この男、切り替えてきやがったですね~。」
「でもそうやってすぐに行動を変えられるコンヨウ君も好きなの。」
「……」
さて、いつまでもリア充裏切者のゼブラさんを祝ってても仕方がない。
なんかカリーナさんの反応が冷たいし、パフィさんはいつも以上のジト目でこっちを見て来るけど気にしない。
むしろ何をやっても好意を向けて来るラクスさんの方がちょっと怖い。
では本題の戻りますか、カリーナさんお願いします。
「えっとですね~。私のスキルは『ランドリー』といって、よく分からない箱が出て来るですね~。」
『ランドリー』つまり洗濯屋かぁ。そう言えばスキルの中には洗浄系っていう清潔を保つものがあるってドクさんが言ってたけど、これもその系統かな。
よく分からない箱ってもしかして…
「カリーナさん。試しにその箱ってやつを出してくれるかな。」
「分かりましたですね~。スキル『ランドリー』発動ですね~。」
カリーナさんのスキル発動と同時に音も無く現れたのは、ご存じドラム式全自動洗濯機。
エレフさんの事といい、最近家電に縁があるみたいだね。僕が思わず絶句する中、他のみんなは困惑中。
「箱…ですね?」
「何に使うか全然分からないなの。」
「うん、コンヨウさんは分かるですかね~?」
「…うん、これは洗濯機だよ。」
「せんたくき?」×3
僕の返答に何のことか分からない3人はますます困惑の表情を深める。
そうだよね。あるわけないよね。この世界って文明レベル中世かそれ以前だもん。
この世界にスキルを授けた聖者ってもしかすると…いや今は洗濯機の説明だ。
ちょうどさっき足湯に浸かった時に使用したタオルがあるし。えっと使い方は、ボタン一つだけ…本当にシンプルだね~。
「じゃあ説明するね。まずはこのタオルを軽く汚します。」
「え?」×3
そう言って、僕はタオルを無造作に地面に落とし、土まみれにする。女の子達は僕の奇行に驚いているみたい。そりゃそうだ~。だってこの世界の洗濯って川での手洗いだけだもん。わざわざ洗濯物を増やすなんて馬鹿のやる事だよね。
でもこのくらい汚さないと説明しづらいし、そこは大目に見て貰おう。
「じゃあ、次に汚れたタオルを洗濯機の放り込み、そしてスイッチON。」
洗濯機の蓋を開け、タオルを放り込み蓋をして、スイッチを入れる。
するとウィーンっと聞き慣れた音を立てながら洗濯機が動き出す。
水と洗剤が注入され、回転しながらタオルを洗濯する謎の箱に女の子達は目を白黒させる。
そして待つ事1分ほど…って早すぎるだろ!洗濯機は停止する。僕はその余りの早さに少々不安になりながらそれでも何食わぬ顔でタオルを取り出す。
「ほら、この通り。洗濯終了。」
取り出したるは、綺麗に土が落ちた上に乾燥まで終了し、香る柔軟剤が使われた様な見事なふんわり仕上げのタオルだ。
これには僕も平静を装いながら、内心とんでもないスキルに心臓がバクバクしていた。
『ランドリー』とはよく言ったもんだ。水も洗剤も労力もただで洗濯し放題、しかも1分程で完了する。
手洗いしかないこの世界で商売にすれば間違いなく流行るだろう。多分このスキルだけで一生食べるのに困らないレベルだろうね。
女の子達もその仕上がりに驚きで目を見開く。
「凄いです。こんなにフカフカでいい匂いがする洗濯物に出会ったの初めてです。」
「えっ!パフィちゃんに褒められたですね~!これってもう結婚したのと同義じゃないですかね~!」
「カリーナちゃんは相変わらずなの。とっても凄いスキルだと思うなの。そしてそれを知っていたコンヨウ君も凄いと思うなの。」
「…ラクスさん。コンヨウさんが調子に乗ると面倒くさいですので、あんまり褒めないで下さい。」
パフィさんの結婚と僕への風評被害が同時に巻き起こる中、僕はちょっと質問してみる。
「カリーナさん。この洗濯機、これより大きなものを出せたりする?それから複数同時に出せたりとか?」
「ちょっとやってみるですね~…出来ましたですね〜。」
出てきたのはコインランドリーに置いてある様なお布団も丸洗いできるような大型のタイプでそれが10台。まさかのウォッシュホース異世界支店誕生の瞬間だ。
1回1分だから洗濯物の出し入れの時間を考えても3分くらい。普段洗濯に2時間くらい使ってると考えると恐ろしいまでの時短だ。そして何より衣服が綺麗なのは、気持ち的に嬉しいし、清潔は健康に直結する。当然ここにいるみんながそれに思い至る。
「カリーナさん。君も凄いスキルの持ち主だったみたいだね。」
「はい、多分ですけど衣服に関しては『洗浄』スキル持ちの人より凄いと思います。」
「それってつまり…パフィちゃんは私をお婿にしたいって事ですかね~!」
「むぅ、カリーナちゃんばっかり褒めてずる~いなの~。コンヨウ君、私のスキルも凄いなの?」
「うん、ラクスさんのスキルはみんなの健康と清潔を守ってくれる立派なスキルだよ。」
「わ~い!コンヨウ君はそんな私をお嫁さんにしたいなの?」
「…この姉妹、やっぱり双子だね。」
「……そうですね。思考回路がそっくりです。」
自分達のスキルの有用性が知れて大喜びのアライグマ_ラスカリ姉妹。
こうして集落の健康と清潔の水準は格段に上昇するのであった。




